第2話

「ティアラ様、今日は放課後ご一緒にお茶をいかがですか?」


授業が終わると同時に、例の取り巻きたちが私を囲むように声をかけてきた。


「お茶……ですか?まあ、構いませんけれど」


少し迷ったが、彼女たちも私の学園での交友相手だ。

丁重に誘われれば断る理由はない。


「では、中庭にあるティールームに参りましょう。王子殿下もお立ち寄りになるようなお店なので、きっと気に入っていただけるかと」


笑顔を浮かべる取り巻きたちに促され、私は学園近くの洒落たティールームへ向かった。

豪華な内装に目を走らせつつ席に着くと、彼女たちはさっそく話を始める。


「そういえば、今日のマリア・レインのこと、ご存知ですか?」


「なんでも、殿下が彼女を直接呼び出して、魔法の相談をなさったとか」


その声には、ただならぬ興味と――少しの嫌悪がにじんでいる。


「殿下がマリアを呼び出した理由を、あなた方はご存じないでしょう? 魔法の才能がある者同士、特別課題で話すこともあるでしょうから」


私はやんわりと取り繕う。

だが、その瞬間、取り巻きの一人の唇が不満げに歪んだ。


「でも、実際にお二人で親しげに話しているのを見た方もいるとか。平民の出でありながら、殿下とあんなに――」


そこまで言いかけて、彼女は言葉を濁す。

あまり露骨に悪口を言えば、私が不快に思うと分かっているのだろう。


「……私が口をはさむことではないわ。殿下が彼女と話をするのは自由ですし、マリアも学園に認められた優秀な生徒なのだから」


そうは言ったものの、その話題が取り巻きたちに火をつけたようだ。


「でもティアラ様、これから殿下の婚約者として過ごされる可能性がおありでしょう? 少しは平民のやり方に警戒してもいいかと」


「そうですわ。悪い噂を広めるわけではありませんけれど、どこで殿下を誘惑するか分かりませんもの」


その言葉に胸がちくりと痛む。


取り巻きは、あくまで私のためを思って言っているように聞こえる。


しかし、どこか嘲りのこもった視線が気になるのだ。


「……申し訳ないけれど、そのような品のない言い方はやめて」


私がそう告げると、彼女たちは一瞬驚いた顔をする。


そしてすぐに笑顔で言い繕った。


「まあまあ、失礼いたしました。ティアラ様にご心配をおかけするつもりはないのです。ただ、もしマリア・レインが何か粗相をしたり、噂になるような真似をしたら――」


そこで言葉を切って、私の表情をうかがうように視線を向けてくる。


「私たちにお任せくださいね」


それがどういう意味なのか、私にはすぐに分からなかった。


ただ、ふと感じた寒気に、何とも言えない不安が募っていく。


本当に、私の取り巻きたちは私の味方なのだろうか。


あるいは――自分たちが気に入らない何かを、私という権威を使って排除しようとしているのかもしれない。


カップを置き、私はそっと微笑んでから席を立った。


「お茶、美味しかったわ。けれど、もうお暇するわね」


自分が置かれた立場が、どうにも居心地の悪いものに思えてならない。


学園は始まったばかりだというのに、私は既に胸の奥に重たい疑念を抱えはじめていた。

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