ミオリアとフローラ-6

ミオリアとフローラ-6




神殿は、ミオリアの死因を隠した。詳しい原因は不明だが、状況から見て腹上死の類のようだったからだ。300年生きた巫女の死にざまとしては、余りにも不名誉なので、病死という扱いになった。

数日後に、ミオリアの葬儀が、新しく代替わりした巫女の手によって執り行われた。多くの人から慕われ、一部の人から恐れられた彼女の葬儀には、多くの人たちが、都市中、および、都市の外からも参加した。

中には、彼女の古い友人という人もいる。300年を生きていた彼女には、多くの友人が居た。


皆が口々に囁いている。

「ミオリア様が亡くなってしまうなんて・・・この都市は、この先どうなってしまうんだろうか・・・」

「誰が替わりを務められるんだろうか・・・」

ミオリアは都市の支配者として君臨していたが、それは彼女が300年生きていたからであった。彼女に権威があったのであって、神殿に権威があったわけではない。彼女の替わりは今のところ不在と言って良いだろう。


この都市は、西の方にあるかつての帝都と、東の方にある外周部の間に位置している。崩壊した帝都は部分的に再建され、かつてほどの力はないが、ある程度のまとまった勢力が支配している。外周部は、ドラゴンを始めとしたさまざまな種族が、勢力争いを繰り広げている。

そのような状況の中で、神殿はその力を大きく削減された。今後は、ミオリアに仕えていた騎士団、アドニスたちの役割が増大していくだろう。




葬儀の最中の片隅で、墓場の石椅子に腰かけて、アドニスは、頭を抱えていた。まだ30を超えた程度なのに、既に頭には髪の毛が残っていない。

「・・・まさか・・・ミオリアが死ぬとは・・・」

彼女に対しては、もはや恐怖しか感じていなかったが、こうして死なれると、それはそれで困る。なにせ、アドニスは彼女に使える騎士団の団長なのだ。実務上で困ることが沢山ある。前述した外敵への備えもそうだし、騎士団内部もまとめなければならない。仕える対象が居なければ、騎士団にならないからだ。代替わりした、新しい巫女を、どの程度当てにできるだろうか?

その上、彼は既に一貴族である。自分の領地の管理もしなければならない。過労死しそうになっていた。

「・・・お父さん、大丈夫?」

一人の子供が、頭を抱えているアドニスに、心配そうに声を掛ける。彼の息子だ。彼は貴族となってから、貴族の奥さんを貰い、家庭を作っていた。

アドニスが、子供を見つめて、言った。

「ああ、心配かけて済まんな。大丈夫だ。ほら、お母さんのところに戻りなさない。お父さんは、この後で仕事があるから」

そう言って子供の頭を撫でる。子供はうなずくと、母親の方に走っていった。それを見て、アドニスは思う。


俺より強かったベイルが死んで、ベイルより強かったミオリアが死んで、なぜか俺だけが生き残っている。親友殺しをした俺が、家庭まで持ってしまった。なんなんだろうな・・・これ。


アドニスは、立ち上がった。この都市と、自分の領地を守るのが、贖罪なのかもしれない。だったらもう、過労死するならするで、別に良いかと思った。

アドニスは天を仰いだ。アドニスの心境とは裏腹に、日差しの気持ちいい、晴れた青空だった。




・・・・




フローラは、ドラゴンになって、自分の本来の拠点である、火山の麓の森の中にある屋敷に向かって、飛んでいる。彼女はここで、新しい魔術の研究をしているのだ。

彼女の生涯の目的は、魔術とその可能性を極めること。それには膨大な時間が掛かる。だから、あんなことをしてまでして、不死を求めた。


彼女は、自分の屋敷の入り口に降り立ち、人型に戻った。彼女は、自分の屋敷を見上げる。誰も居ない屋敷の前で、彼女は宣言した。

「私は、魔術を極める。私の名前を、その歴史に刻む。私は魔道の先を行く!」

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