ベイルとアドニス-6
ベイルとアドニス-6
ベイル傭兵団は拡大を続ける。その活躍によって、ミオリアの都市を中心に領域を拡大していった。ベイル傭兵団の名声は上がっていく。そして、それに比例するように、ベイルの体躯も大きくなっていった。
それと共に、ベイルの凶暴性と共に、もう一つの欠点も大きくなってきた。それは、彼の壊れた貞操観念。
彼は、戦争に勝った相手の懇意にしていた女性を、奪うように手籠めにしていった。特に一対一で勝ったドラゴンの相手に対しては、戦利品のように手を出した。
彼らは傭兵団だ。雇い主はミオリアである。このような行為は、雇い主の評価にも影響するので、好ましくはない。
それでも、ベイルは止まらなかった。そもそも貞操観念が壊れているのである。本人に悪気が全くない。悪いと思っていないので、態度改める気が無い。
以前からアドニスも、機会を見てはベイルを諫めていた。
「見境なく女に手を出すな。お前はミオリアを手に入れるんじゃないのか?」
しかし、ベイルは聞く耳を持たない。
「・・・それはそれ。これはこれ、だろ?」
・・・・
これが、敵軍のそれ、であるうちは、良くはないが、まだ何とかなった。だがそれが、味方のそれ、になりだした時には、流石に何ともならなくなってきた。
味方の兵士たちの、懇意にしている女に手を出し始めたのだ。高名なベイルが誘ったからといって、女の方からなびく場合もあるし、少々強引に手籠めにすることもある。
手を出された男の方は、泣き寝入りするしかなかった。なにせ相手がベイルなのだ。戦っても勝ち目はないし、変に取り返そうとして、「獲物を横取りされた」と判定されて逆キレされる可能性すらある。
我慢できない者は、ベイルの付けた傷から回復してきた、病み上がりのアドニスに何とかするように泣きついた。アドニスも、流石に見かねて、ベイルの説得をした。
「もう、流石に、仲間の女に手を出すのは止めろ!仲間の信頼を失うのは、致命的だ!これ以上は、俺も庇いきれない!」
ベイルは何も言わない。うるさそうに、アドニスから離れて行った。
そして決定的な事件が起きた。ベイルが、アドニスが懇意にしてた女性に、手を出していたことが分かったのだ。
アドニスはブチ切れた。
理性の塊のようなアドニスだが、それでも、ここまで侮辱的な扱いをされて、キレないような男ではない。
ベイルの襟元を両手で掴んで、壁に押し付けて、詰め寄った。
「ベイル!お前!どういうつもりだ!俺を、馬鹿にしているのか!ふざけんなよ!貴様!」
ベイルはここで謝るべきだった。アドニスのような男がキレるというのは、ベイルのような男がキレるのと、まるで意味が違うのだ。
だが、ベイルは自分が悪いとは思っていない。ベイルは、アドニスに傷を負わせた時のように、自分に明確な非があると思ったときは、謝れる。だが、そうでない場合には、どうやっても謝ることが出来ない男だった。
そんなベイルが放った言葉は、最悪だった。
「・・・しょうがないだろ。お前、怪我で寝ていたし。あの女も寂しそうだったし。・・・大体、向こうから誘ってきたんだよ」
アドニスは、ブチ切れた。あまりにもブチ切れたため、頭が真っ白になって、何も考えられなくなった。機能を停止したアドニスは、ベイルを掴んでいた両手の力を緩めた。
ベイルは、気まずそうにアドニスを見ると、何も言わずに、逃げるようにその場から離れて行った。
この件は決定的だった。かつてドロスとその副隊長は、ベイルとアドニスが対となることを前提としていた。だが、彼らは、どうやってもベイルとアドニスという、それぞれの一個に過ぎない。半身は分かたれた。
長い時間を掛ければ、もしかしたら、関係を修復することも出来たかもしれない。
だが、弱った捕食者の行く末は、決まっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます