ベイルとアドニス-4

ベイルとアドニス-4




戦闘を終えたベイルたちがミオリアに報告に戻った。ベイルが得意げにミオリアに説明をしている。アドニスはそんな二人からは目を逸らしていた。先日の戦闘後の怪物のようなベイルと、今日の好きな人の気を引こうと、子供のようにはしゃぐそのギャップが、なんとも言えない不気味さを感じさせていた。

揺れるアドニスは、自分に言い聞かせる。ベイルは親友なんだ。俺が、揺れたら、駄目だ。全部、駄目になる。


「それでは、今後の働きにも期待しています。傭兵団を拡大していただけるのであれば、より重要な仕事を割り振ることになるでしょう」

ミオリアの締めの言葉に、考え事をしていたアドニスが、我に返った。慌てて、二人に目を合わせる。

ベイルはお辞儀を終え、その場から立ち去ろうとしていた。それを見ていたミオリアの視線が、一瞬だけアドニスの方を向き、その目線が交錯した。その時、アドニスは見てしまった。ミオリアの口元に、微笑が浮かんでいるのを。アドニスは、目線を逸らした。また、引き込まれそうだったからだ。

部屋から出て行くベイルに続いて、アドニスも部屋から出て行った。ミオリアはそんな二人を、後ろから見つめていた。


並んで歩いているベイルが、満足したようにアドニスに言う。

「やはりミオリアはいい女だな。必ず俺のものにする」

「・・・そうだな」

アドニスは生返事をした。この件に関しては、あまり話をしたくない。なので話題を変える。

「それで、傭兵団を拡大する件に関してなんだが・・・」

ベイルが、それだ、と言わんばかりに、その話題に飛びつく。

「そうそう、それだ!この都市を中心に、周りの都市を取り込んでいって、この一帯を支配する。そのための戦力が必要だ!」

アドニスからすっぽ抜けていた内容を、ベイルが説明した。アドニスは内心、驚いた。そんな壮大な計画を話していたのか・・・

ベイルが笑顔で続ける。

「だから、その辺りは、頼むぞ!アドニス!お前じゃないと、そういうのは出来ない!」

アドニスは、ベイルから無条件で信頼されていることを嬉しく思った。それと共に、自分の内心で思っていることを振り返って、後ろめたくもなった。

それに、どことなく、ミオリアに良いように使われている気がしなくもない。だが、アドニスはもう考えたくなかった。

「そうだな!俺たちで、やるか!」

アドニスは表情を整えて、ベイルに言った。目の前の仕事に集中して、気を紛らわせることで、何もかも忘れたかったのだ。


物語は加速していく。歯車に、わずかな歪みを残したまま・・・




・・・・




アドニスと6人の小隊長が、ある部屋の一室で会議を開いている。傭兵団の拡大についての相談をしているが、ベイルは居ない。アドニスが6人に言う。

「これからは、人数が増える。それと共に、傭兵団の中に人間や獣人も増える。つまり・・・ベイルのアレに付いていけない者が増える・・・」

アレ、とは、共食いを指す。アドニスが続ける。

「ベイルの周りは、引き続き俺たちドラゴンが固める。もしもアイツがアレを始めたら、絶対に他のメンバーに見られないようにしろ!そして、アイツがキレないなように、細心の注意を払え!」

6人がうなずいた。そこは全員、分かっている。一人が、場の雰囲気を和ませようと、軽い口調で言う。

「しかし、ドラゴンが共食いをすると、本当にデカくなるんだな。俺たちも、やってみるか?」

全然笑えない。全員が目を伏せた。1000年前とは価値観が違うのだ。とてもそんな気にはならない。きっとベイルだけが、1000年前の、そんな原初のドラゴンに近いのだろう。

そんな雰囲気に耐えられず、アドニスも、軽い口調で言う。

「まあ、この計画が成功すれば、俺たちだって富と名声が手に入る。上手くいけば、俺たちも貴族にもなれるかもしれんぞ!」

皆が、笑ってアドニスを見た。皆が、不気味な違和感を隅に寄せた。皆が、同じことを考えている。


そうだな。成功しさえすれば、何もかも上手くいく。余計なことなど、考えなくても良いさ。

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