たった今恩赦された領主の俺が、領民たちの無罪を立証しなきゃいけないんですか?!

kyo-ta-ro04

[#01 - 君の知らない理由]

「……もし、お前の仮定が事実なら、お前はどうするつもりだ?」


鉄格子の中、狭い部屋に横たわる背の高い男「ドミトリヒ」が言った。


「さあな。まずは自分の村に戻らなきゃならないだろう?」


「なんだか、そうしたくなさそうに見えるが?」


「……これだから、勘のいい奴は嫌いなんだ」


ドミトリヒの向かいの監房に座っている「ユスティアン」が言った。


「ハハハ、そんな顔をしなきゃいけないのか?」


「お前の知らない理由があるんだよ」


「出たよ、そういう理屈っぽいところ……」


ドミトリヒが少し顔を上げ、ユスティアンの表情を見て言った。


「……正直、俺は信じられない。お前の言う通りになれば万々歳だが……」


ドミトリヒは横になったまま、小さな革のボールを天井に投げた。


「あんなに厳粛に下された判定が、そう簡単に覆るか?」


天井に当たったボールは、壁のあちこちに奇妙な角度で跳ね返り、右側の鉄格子を越えて入っていった。


「その理由でなければ、あなたは眠れないはずでしょう?」


ユスティアンの対角線上、つまりドミトリヒの右隣の部屋の囚人「アンナ」がボールを拾いながら言った。


「違いない。その理由でなければ、明日の俺たちは、お前の怖がる幽霊になっているだろうからな」


「おい、幽霊なんて怖くないって」


ユスティアンが毛布を被って幽霊の真似をしながら言った。


「神像造りの職人がそんなに臆病だなんて……。それで東方の神像の注文を受けられるのか疑問ですね」


「その時は、必死に堪えてやるんだよ。集中状態に入れば、そんなことは考えもしないからな」


横になっていたドミトリヒが跳ねるように起き上がって言った。


「「取り憑かれたな(ですね)」」


「いや、マジだって」


二人はドミトリヒをからかいながら、クスクスと笑った。


「ところで……もっと詳しく話してください。本当に私たちが恩赦されるのが確実なのか」


「確実じゃない。可能性が高いというだけだ」


ユスティアンが爪を軽く噛んだ。


「周りを見てみろ。もう僕たち以外、誰も残っていない」


「……あいつらが生きているのか死んでいるのかも分からないのにか?」


「ああ、それは分からないな」


唯一、二人を見ることができる位置にいるユスティアンが、指で円を描きながら言った。


「だが、僕たち三人には共通点がある」


「……人間だってことか?」


ユスティアンは驚いて咳き込んだ。


「いや……それじゃなくて」


「エレガントな私が、あなたたちと同じだなんて。それ以外に共通点なんてありませんわ」


アンナが明るい金髪を肩の後ろに流しながら言った。


「でも、実を言うと俺もあいつの意見に賛成だ」


ドミトリヒが続けて言った。


「冗談はやめろ、ドミトリヒ」


「冗談じゃないんだが……」


少し拗ねたドミトリヒが頭を掻いた。


「やはり、あれしかないだろう。『異教の偶像崇拝』」


「……?!」


ユスティアンが口にすると、二人とも心当たりがあるようで言葉を失った。


「あら……私はただ剣舞を披露しただけですのに……」


「ああ、神像の前でな」


「……ううっ」


アンナが小さく呻き声を漏らした。


「罪人『ユスティアン・クロムウェル』、証言台へ」


濃い茶色の角材で建てられた裁判所の席。その背後には、高価そうな黄金の玉座があった。


(……いよいよ、僕の番か)


ユスティアンは唾を飲み込んだ。


「クロムウェル、汝は4年前、先代領主が犯した『反乱罪』の刑期を務めている。この言葉に偽りはあるか?」


「いいえ、相違ありません」


「先代領主の反乱罪、それはかつて異教の呪術を借用したことが原因であったな。これに相違ないか?」


「はい、その事実に相違ありません」


小さな木槌を前にした裁判長の質問が裁判所に響き渡った。


「当時の異教呪術の借用が発覚したのは、村人の通報であったな。これも間違いないか?」


「はい、その事実に偽りはありません」


「村人の通報」という言葉が聞こえると、法廷内がざわつき始めた。


(……そうだ。確かに父上は……僕たちは、領民の通報によって裁判にかけられたんだ)


ユスティアンはうつむいたまま、軽く目を閉じた。


(滑稽だな……僕があいつらの嘲笑の的にならなければならないとは……。『正しいこと』を隠して告発を免れた連中が……)


ユスティアンは人々の声を聞きながら、数人の顔を思い浮かべた。


「面を上げよ、クロムウェル伯爵」


「……?!」


「そのように振る舞えとは命じていない」


ユスティアンは素早く膝をついた。


「どうか……慈悲を」


皇帝は拍手を二度打った。裁判を続行せよという意味だった。


裁判長が皇帝に向かって頭を下げた。


「当法廷では『旧法典』の内容により、不当な扱いを受けている者たちを精査している」


裁判長が法典を開きながら言った。


(だから、囚人たちが徐々に消えていたのか……)


「貴殿の術式が、現時代において、もはや不法ではないと判明したゆえに……」


(……やはり、僕の予想通りだ)


ユスティ안は心の中で結果を確信した。


「ユスティアン・クロムウェルは、本裁判をもって恩赦されたことを宣告する」


裁判長が木槌を三度、打ち鳴らした。


観衆は依然としてざわついていたが、皇帝は自らの印章を文書に押した。


文書を受け取ったユスティアンは、他の貴族たちを掠めるように見渡した。


(……ああ、こうして時代は変わっていくんだな)


ユスティアンは、知っている顔がもう数えるほどしか残っていないことを確認した。


貴族のうち数人は目を逸らし、数人はむしろ険しい眼差しで彼を睨みつけた。


「……まずは、家に帰るとしよう」


(ザッ、ザッ)


ユスティアンは一歩一歩、力強く、しかし落ち着いた足取りで歩き出した。


「……気に食わないわね」


人々の中から、ユスティアンに聞こえるほどの声が漏れた。


(ふん、法が常に味方だと思うなよ)


その後もいくつか言葉が聞こえてきたが、その時にはすでに、彼の足音は裁判所から消えていた。


裁判所、正門の繁華街と住宅地の分かれ道にある公園。


「結局、あなたの言った通りになりましたね」


「ふう、俺は本当に寿命が縮まるかと思ったぞ」


「『十年、寿命が縮まる』よ、ドミトリヒ」


アンナとドミトリヒが公園の木立の中に立っていた。


「二人とも、無罪判定で恩赦されたのか?」


「ええ、あなたの言う通り法が改正されたとかなんとか……」


「つまり、俺たちのやってきたことはもう不法じゃないってことだな?」


ドミトリヒは小さな道具を軽く振り回しながら言った。


「ああっ、もう! 危ないからここではやめてって言ったでしょう!」


「だが、数年も使えなかった技術だから、こうでもしないと……」


アンナの言葉に、ドミトリヒは肩を落とした。


「二人とも、体が財産なんだからな」


ユスティアンは腰の剣を抜き、数回振った。


「だが、一理ある。長い間練習できなかったから、忘れてしまいそうだ」


「うーん……分からないでもないですけど」


アンナは顎に手を当てて言った。


「なんだか……私だけ差別されている気がしますわ」


「ええ……? そんなはずはありませんわ。私は皆の上に公平に立つ人間ですもの」


アンナは慌てて、持っていた日傘を落とした。


彼女は何度か空咳をして、再び言葉を継いだ。


「コホン……それでユスティアン、あなた……本当に伯爵なんですの?」


(……いよいよ、正面突破か?)


ユスティアンはアンナの言葉に、なぜか力が抜けた。


「何よ……そんな呆れた顔をして! 早く質問に答えなさいな!」


ユスティアンの表情が「情けないものを見る目」に変わったことに気づき、アンナが言った。


「ここにいらしたのですな。久しぶりの王城ゆえ、このアルベルト、少々迷ってしまいました」


「いや、むしろ裁判が終わる時間にぴったりだったよ」


「ほほ、それなら良かったですな」


彼らが立っていた木立の裏道から、温厚そうな老執事が姿を現した。


「紹介しよう。こちらはクロムウェル領の行政総括代行、『アルベルト』だ」


「……本当に領主だったんだな」


ドミトリヒの目が見開かれた。


「ドミトリヒ、お前までそうなのか?」


執事のアルベルトは、ユスティアンの腕を掴んで馬車の方へと引いた。


「坊ちゃま、いえ……領主様。今はそんなことをしている場合ではありません」


「お、おい?! 元々こんなに力が強かったか?」


「何ですの? 私たちを置いていくおつもり?!」


アンナとドミトリヒが後に続いた。


「領主様のお連れ様ですか? 説明している時間はありません。まずは馬車にお乗りください」


(ドタン、バタン!)


「こんなに……強引に押し込むなんて……」


「ハハ、これから何か面白いことでも始まるのか?」


押し込まれた二人が席に座った。


「それで、一体何があったんだ?」


「ぼさっとしている間に、我らの領民たちが全員、犯罪者として捕らえられそうなんです!」


「何だと?!」


執事のアルベルトは、急いで馬車の手綱を振った。

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