お天気ロボ子
水面あお
第1話 今日の天気は晴れ!
古代遺跡で人型ロボットを拾った。
メイドのようなふわっとした可憐な服を纏ったロボットだ。
金髪でさらっとした長い髪。顔は精巧な作りで、整いすぎている。人間では到底辿り着けない完璧さだ。
電源が落とされていたので駄目元で起動してみたところ、ウィーンという駆動音とともにロボットに生命が宿っていくような気配を感じる。
遺跡で発掘されるロボットの大半は故障しているのか動かないため、非常に珍しい。
暗い室内でロボットの薄青の目に光が灯る。
その瞳は僕をじっと見つめていた。
「……ご主人様?」
どうやら無事起動したようだ。
「僕は君の主人じゃないんだ。そのご主人様とやらは、おそらくもう亡くなっている」
ロボットは表情を変えずに僕の話を聞く。
主人の死に何の感慨も抱かないところは実にロボットらしい。
ロボットには必ず主という者が存在する。主の命令に従い、主の幸福のために行動するのがロボットの役目だからだ。だが、主人が亡くなったりすれば、権限者は白紙になる。
「……となると、あなたが次のご主人様ですか?」
「そうだ」
本来であればもっと複雑な手続きが必要なのだろうが、今となってはそれを強いる法もなければ機関もない。
「よろしくお願いしますね、新しいご主人様!」
「ああ、よろしく」
ロボットは元気よく返事をして、優雅なお辞儀をする。きっとそうシステムされているのだろう。
軽く挨拶を済ませたところで、僕は今がどういった時代なのかを説明することにした。
2XXX年。
人類の生み出した技術は飛躍的進化を遂げていた。
あらゆることが自動化され、人々はその恩恵を享受するようになったのだ。
人類はどこまで成長するのか、誰もが期待の眼差しでその過程を見守っていた。
しかし未知のウイルスがその成長に歯止めをかけた。感染すれば対処法はなく、数日のうちに命を落とす。
そのウイルスが世界的に蔓延し、世界人口の9割以上が消えた。
その頃になればウイルスの感染力は弱まっていたが、残った人々は少ない富を奪い合い、人類は衰退の一途を辿ることとなった。
あれからいくつもの月日は流れ、かつてのように共同体を形成しながら暮らす人々が大半を占めるようになった。
けれど、今の人類にはロボットを製造するノウハウも設備もない。高度な技術は既に過去のものとなって久しい。
「ふむふむ。つまりは荒廃した世界ということですね! そういう創作物ありますよねー!」
「創作じゃないぞ」
「わかっています!」
本当にわかっているのだろうか? なんだかウキウキしているが、そう楽しい世界じゃない。
「……ところで、君は何が出来るんだ?」
僕は古代遺跡の中にある遺物を発掘することを生業としている。このロボットを売ればきっと多額の資金を得ることになるだろう。売らずとも、探索に大いに役立てることだってできるかもしれない。
そのためには、このロボットの有用性を確かめなければならない。
「情報ネットワークを探索して最適な答えを導き出すことができます。……あ、でもこの時代もうネットが存在しないみたいなのでダメでした」
てへっ、とロボットはこぶしでポンと頭を叩く。
「メイドの真似事は?」
「ワタシ、実は足部分の動きが少し悪いんです。昔はよく食器とか割ってました」
ニコニコ笑顔で絶望的なことを口にするロボット。
駄目だこりゃ。
はぁ……とため息を吐いていると、せっかく目覚められたのに見捨てられると思ったのか「て、天気予報ならできます!」と慌てた素振りでまくし立ててきた。本当にできるのだろうか。
「今日の天気は?」
「今日の天気は晴れです!」
彼女は自信満々(?)に言ってのける。
天気を確認するため、二人で遺跡の外に出る。
雨が降っていた。
入る前は晴れていた気がするが、残念ながらロボットの天気予報は外れたことになる。
「てて天気予報だって外すことがありますからっ。お、置いていかないでくださいぃぃ! こんなところでひとりぼっちは嫌なんですぅぅー!」
駄々をこねるように喚くロボット。もしかしなくてもポンコツじゃないか……と思ったが、これでも古代技術の結晶なのだ。
僕は呆れ混じりに振り返る。
「置いていかないから。……あ、名前でもつけておいたほうがいいか?」
「ぜひ! ご主人様がつけてくれた名前ならなんだって嬉しいです!」
まるで餌を待つペットのような表情で僕のことを見つめてくる。
以前の主人につけて貰った名前もあるだろうが、所有者が変われば名前も変わるのが原則と聞く。
僕はどんな名前が彼女に似合うか考えた。
「うーむ……お天気ロボ子でいいか」
「雑うっ!?」
自慢ではないが、僕のネーミングセンスは終わっている。
でもまあ、分かりやすくていいだろう。
「ちなみにお天気 ロボ子だ」
「お天気は名字だった!? で、でも、ご主人様から貰った名前なので、大切にしますねっ!」
それが僕とお天気ロボ子の出会いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます