ねぇ、神様。

Suger Rusk

ねぇ、神様。

 僕はもう、限界だ。

 僕は一体、なんのために生まれてきたのだろう。何を成すために存在しているのだろう。何をやったって、何を残したって、誰を愛したって、最後は死んで、灰になるだけなのに。

 僕を照らす光が、希望が、僕の心の深淵に溜まっていたとして、それが溢れるまで、どれほどの時が必要なのだろうか。

 家を出る前に君は一つ、僕に質問をした。僕はその問いに、

「大丈夫、必ず君の元に帰るから。」

 と答えた。その問いが、妻との会話の最後になるなんて、その答えが、嘘になってしまうなんて、思いもしなかった。

 信じられない、信じたくない。信じられるわけが無い。皆が黒装束に身をまとい、俯き涙を流す中、僕はただ、虚空を見つめる、眺めていることしか出来なかった。何も、出来ない。何も、したくない。何も、出来るわけがない。君がいないのに、君がもう僕の横で、泣いて、笑って、怒って、からかってくれないのに。

 親戚に体を揺すられ視線を落とすと、そこにあったのは、白色の欠片と鼠色の粉だった。それがなにかを理解した時、足に力が入らなくなり、膝を着いてしまった。

 忘れることは出来ない。今までの君、記憶の中の君は、輝いていた。今でも、ずっと。あんなに眩しい君でさえ、灰になってしまうのか。燃え尽きてしまうのか。

 君という光があったから、僕は輝くことが出来た。君がいなければ、僕はただの影になってしまう。ねぇ、一瞬だけでもいい。一瞬だけでもいいから、もう一度僕の前で、隣で、輝いて欲しい。話しかけて欲しい。一緒に笑って欲しい。

 君が僕のこんな情けない姿を見たら、どう思うだろうか。僕の横で一緒に膝をついて、肩を、背中をさすってくれるだろうか。それとも僕を見限って、去ってしまうだろうか。

 ねぇ、神様。僕は、どうすればいいのでしょうか。何をすればよかったのでしょうか。

 ねぇ、神様。どうか、僕の祈りを受け取ってください。この罪を、この嘘を、すべて消し去ってください。

 ねぇ、神様。僕をこの苦しみから解放してください。夢でもいいので、彼女ともう一度、話せるようにしてください。

 ねぇ、神様、どうか、どうか。

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