路上占い、あれこれ167その3完結?【占い師は天敵がいる】
崔 梨遙(再)
呆れ果てる 1621文字 の掌編です。
よくいく喫茶店、僕には73歳の天敵がいる。亀みたいな体型の婆だ。天敵は婚活をしているというが、無料の婚活アプリさえ使っていない。お金のかかることは一切しない。ドラマのように街で偶然出会えると思っている。ちなみに、お金持ちしか狙っていない。
僕は天敵がいる時間帯を避けるのだが、それでも会ってしまうことはある。
『ああ、なんで私に男ができへんのやろ?』
『……』
『なんで私に男ができへんのやろ?』
『……』
『ちょっと、あんた、聞いてる?』
『聞いてません』
『なんで聞いてくれへんの?』
『僕には関係無いことですから』
『聞いてや! なんで私に男ができへんのやろ?』
『もう、諦めたらどうですか?』
『諦めたら終わりやんか』
『ほな、やり方を変えたら? 街で偶然お金持ちにバッタリ会えるわけないでしょ』
『普通の女やったらそうかもしれへんけど、私やで、この私が全力を出してるんやで、それでも男ができへんって、おかしいやろ?』
『「この私やで」の意味がわからない』
『そこまで言わさんといてや、私みたいな美人が全力出してるのに男ができへんっておかしいやろ?』
『あなたは美人なんですか?』
『美人やろ? どう見ても美人やろ?』
『だって、太ってるし』
『これは私のチャームポイントや! これは、ちょっとぽっちゃりって言うねん』
『まあ、頑張ってください』
『なんやねん、あんた』
天敵はママさんのお母さんにベッタリだった。お母さんは最後まで店にいる。天敵も最後までいる。天敵は自分のコーヒー代をお母さんに払わせる。ママさんはお母さんを車で団地まで送る。天敵も同じ団地だということで一緒に車に乗る。お母さんは途中、スーパーに寄りたがる。スーパーに寄る。お母さんはスーパーのかごを持つ。天敵はかごを持たない。天敵はお母さんのかごに弁当やお菓子など、自分の欲しいものを入れる。そしてお母さんに全て払わせる。レジが終わってから、自分のものを自分の袋に入れる。そしてママさんの車で帰る。店が開いている日は、毎日そうだった。天敵は毎日お母さんにコーヒー代を払わせ、お母さんに弁当やお菓子など、欲しいものを買わせていたのだ、何年間も。お母さんも不思議な人だった。自分が1人で暇になると天敵を呼ぶのだ。奢らされるとわかっているのに。だが、お母さんは常連客のある婆が1番好きらしく、その常連客がいれば天敵を無視して話し込む。その常連客は天敵が嫌いだと公言している。天敵本人にも嫌いだと言っている。変な関係だった。
そして、天敵はランチタイムには電話でお母さんを某外食チェーン店に呼ぶ。お母さんが来たら、勿論、自分の分もお母さんに払わせる。それだけではない、自分の弁当も2つ買わせる。お母さんの見ていないところで弁当を2つ注文して、会計の時は姿を消し、会計が終わると現れて弁当を持って帰る。そんなことが何年間も続いていたのだから、愉快ではない。いや、他人事だから愉快なのだろうか?
そんな、憎まれっ子が世にはばかる日々に、ある日突然、終止符が打たれた。
その日、天敵はお母さんに頼まれて、巻き寿司を1つ買って喫茶店に来た。お母さんから『お釣りはいらん』と千円をもらって財布に入れた。それを見ていたある常連客(婆)が言った。
『あんた、いつもお母さんに奢ってもらってるんやから、巻き寿司くらい買ってあげたら?』
天敵は吠えた。
『他人の財布の中をのぞき込むようなことを言うなー!』
『そんなこと言うてへんやろ! 頭のおかしなことをほざくな、ボケーッ!』
常連客は、もっと吠えた。それから吠えまくった。天敵は生意気だが打たれ弱い。
『ママさん、私、絡まれてるねん、助けて!』
『おのれは、まだそんなことをほざくんか? いい加減にせい、頭かち割るぞ、ボケーッ!』
さんざん怒鳴りまくられた天敵は、それから喫茶店に来なくなった。
だが、最近、また来るようになっている。今度は僕が、また来れなくなるくらい怒鳴りまくってやろうか? どうしようか? 迷っている。
路上占い、あれこれ167その3完結?【占い師は天敵がいる】 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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