第2話 ああ、ついにこの日が来てしまったのか

 少し昔ばなしでもしようか。

 ああ、あの子の話さね。


 ――今から十五年前。

 タキンチ村の農家に、ひとりの男の子が生まれた。

 最初は他の子と同じように無邪気そのものだったのに、ある時を境に急に落ち着いた性格になってね。

 それからは、村で唯一の魔法使い──『魔法オババ』なんて呼ばれるこのあたしの家に通いつめるようになった。


 この世界では男は魔力量こそ多いが扱いが下手で、女は魔力こそ少ないが扱いに長けている。

 だから、魔法使いといえば女ばかりさ。


 けれどあの子は違った。

 成人男性を軽く超える魔力量に、糸のように細い魔力操作までやってのけた。

 まさしく天稟てんぴん

 教えるたびに吸収して、気づけばあたしの方が学ばされてる気分だったよ。


 そんな日々が十年も続いて、あの子が“天候を動かす”ほどの魔法を完成させたとき、あたしは思ったんだ。

 この子はそう遠くないうちに旅立ってしまうのだろうと。


 そして、案の定あの日──


「師匠、少し村を出てきます」


 そう告げられたとき、あたしゃ柄にもなく肩を落としたんだ。

 ああ、ついにこの日が来ちまったのか。と。

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