第1話 いやだってさー仕方ないじゃん。小市民だもんよ。

 さっきは自己紹介だけでスペックがまだだったね。


 僕はレイ。銀髪銀目の魔法使い見習いだ。

 服装は師匠である魔法オババからもらった茶色のポンチョの様なローブ……ていうかこれもうポンチョじゃね?をトップスに、ボトムスには黒のパンツを履いている。

 ローブの右肩辺りにはガーライトの宝石がタリスマンとして縫い付けられている。

 ショートの銀髪はアシメのアップバングだ。


 なぜ街道を歩いていたかというと、数日前に王都から来たと言う先触れの兵士に王城まで来て欲しいと言われた(意外なことに王命ではなかった)。

 いったい僕の魔法なんか披露して何になると言うのか……。

 粗相をして不敬罪で打ち首になったりしないだろうか?……不安だ。


 それに……。


 街道脇の岩に腰を下ろしつつ地図を広げ、嘆息する。 

 本当は了承すれば馬車を持ってくると言ってもらえたんだけど、小市民の僕は頑なに固辞。 

 特に急がされたわけでもないので気ままに歩いて行くことになったのだ。

 あの兵士さんの迷惑になってないといいけど……。

 

 ちなみに旅費は兵士さんが置いていった。 

 旅費も断られるのを見越した兵士さんは馬車か旅費かの二択を迫ってきて、結果僕は旅費を選んだ。 

 馬車を用意するよりよっぽども安いと言う説明に背中を押されたのは言うまでもないよね。


 ……いやだってさー仕方ないじゃん。小市民だもんよ。

 まーでも後々になって兵士さんの立場を考えれば馬車を用意してもらった方が良かったとは思うよ?逆に失礼だったんじゃね?みたいな?


 でも考えてもみてほしい。急に王様に呼び出されるのを。

 王命ではないとは説明はされたけど、これはもう呼び出されたのと同じじゃない?逆らえるわけもないし。

 急に来ていきなりそんなことを言われれば誰でもテンパるって。


 そんなわけで僕が徒歩を選んだのも仕方ないのだ。……仕方ないのだ。

 罪悪感で選択を後悔しているなんてことはないのだ。うん、ないのだ。


 話が少し脱線したけど、僕が暮らしているこの国の名はレハチワ王国。 


 レハチワは大国ではないけど北の小国群、南の商国と手を組み、西の大国の脅威から身を守ってきた。 

 西の大国も法国を挟んだ先にある帝国からの進行に備えて東側への介入は長らく見送られてきたらしい。 

 故にレハチワと西の大国の間では時折小さな小競り合いが起きるに止まり、最近まで割と平和な時が流れている。


 というのが師匠の話。

 

 そのレハチワの東端。大陸の果て――そこに、我らがスリリース男爵領がある。 

 領の東側は海に面してはいるが、すべて断崖。港はなく、潮風だけが吹きつける。

 東以外は平地ではあるものの村もぽつりぽつりとしかなく、とてものどか。

 ……つまり、田舎だ。 


 領内の村は農業で生計を立てているところがほとんど。

 

 そして僕の故郷の『タキンチ村』はスリリース領では西側に位置し、農業と畜産が主だ。

 村は僕の魔法の師匠が取り寄せている魔道具のお陰で近隣の村よりは豊かであったが、特別見るものがあるわけでもない。


 ……と言うのも4年前までの話。

 近年生産性が更に上がったため、村は豊かになり、行商人もかなり増えた。


 僕は10年間、師匠の家で魔法や魔道具の作り方、世界の歴史など色々と教わった。

 師匠からは皆伝をもらっていたけど4年前には身寄りもなくなったし、村の手伝いをして野菜を分けてもらいながら、なんとなく師匠の家にも通い続けていた。


 そんな折に兵士さんはやってきた。

 曰く、天候を操れる魔法使いはあなたですか?と。

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