《西のダンジョン》

マジックアイテム売りに必要なのは第一に品揃えだ。ミササギは近頃商品数を増やすことに尽力していた。


「ええと、万能薬が足りなくなってきたな…汲みに行くか」


中でも交換の品として優秀なのは万能薬。高難易度ダンジョンの奥深くにあったりなかったりする。需要と供給が不均等なレアアイテムだ。


しかしミササギは知っている。それが無尽蔵に汲める場所のところを———というわけで西の荒野にある地下ダンジョンへ馬車を使って向かっていた。


スキルで移動すれば?と思ったそこのお前!それは不可能だ。あくまで【顧客探し】のため、場所の指定が一切できない。世界のどこにポップするのか全然分からないのだ。

だから家を持つことはできないし、可愛い猫などのペットも飼えない。


「兄ちゃん、着いたぞ。本当にここでいいんかい?何にもない荒野だが」

「ありがとう、ここでいいんだよ。あっ、何か入り用のものはある?乗せてくれたお礼に少しまけるよ」

「蹄鉄はあるかい?そろそろ変えたいと思ってるんだ」

「もちろん。まいどー」


気の良いおじさんに乗せてもらってようやく着いた荒野。名前は忘れたが、枯れ草が丸まったアレが地面をいくつも走っていた。


「“姿隠しの釘”はどこかなー?っと」


目印にしていた木の下を掘ると少し大きい釘が出てきた。言わずもがなマジックアイテムだ。それを引き抜けば、ダンジョンの入り口が姿を現した。


地下へと進む階段。通路には松明が灯されている。

未だ未踏破の高難易度ダンジョンのため、中には魔物がうじゃうじゃいる。ミササギには戦闘能力がないためクリアは叶わない。せいぜい、奥地まで行って万能薬を汲んでくることしかできない。


というかここは未踏破でなければならないのだ。

クリアするとダンジョンは崩れて、万能薬も無くなる。だから誰にも見つからないように隠している。


「………大丈夫大丈夫。マジックアイテムの力を信じろ。僕は死なない見つからない。よし!」


ミササギは足を踏み入れた。


このダンジョンのルールはスキルの使用禁止。


魔物に見つからないために、隠密に関する大量のマジックアイテムを身に付けているが、それでもパンピーには怖い場所だった。しかし、急がなければならない。


今、“姿隠しの釘”でダンジョンの入り口を隠してはいないのだから———ちなみに。本当についでに。この世界における新しいダンジョンを発見した場合の報告は義務であり、これに反した場合厳しい処罰を受けることになる。隠蔽も同様だ。

国家にバレては超困る。


◾️


国家の一員、勇者ウィンドル一行は西の荒野に来ていた。元々戦闘能力が高いこともあり、新しいウルフという足が加わったことで、あっさり魔王城までの道のりを半分まで進んでしまっていた。

この調子だとあと1ヶ月もしないでこの世界から魔王の脅威は取り除かれるだろう。


〈む、大量の魔物の気配がするぞ。…地下からだ〉

「地下?この辺りに地下ダンジョンの報告は無いはずですが…」

「…ってことは」

「新ダンジョンがあるってこと!?これは行くしかないわね!」


勇者ウィンドルはわくわくしていた。それもそうだろう。彼女のスキルは強力で、それ一回で全ての戦闘は勝てるのだから。


剣を持ってはいるが、そこらの剣士よりは強いね程度。でも強いスキルがあるから大丈夫!


ダンジョンのルール開示は踏み入れてからしか行われない。意気揚々と一行は足を踏み入れた。

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