私達は普通じゃない

辻田鷹斗

プロローグ

『私は強い!さあ、あなたも一緒に!戦おう!』

根暗だけど芯の強いカノンちゃんの言葉に私は何度も助けられる。そんなカノンちゃんは現実にはいなくて、テレビの向こう側にいる。要はアニメのキャラクターだ。

深夜アニメ『進めカノン』。

夢も希望もない私は親の金で1人暮らししていた。実際家賃や食費は仕送りで何とかなっていた。とはいえ、仕送りだけでは生活にゆとりがないのも事実。だから2年前、近くの100円ショップでアルバイトを始めた。我ながら続いてる方ではある。けど、気持ちは冴えないまま。

何となく大学に進学したけど友達もキャンパスライフも学業も全く充実せず、ただ孤独に過ごす日々に嫌気が差した。いつしか不登校になり、結果、単位が全く足りず、2年生へ進級できない状態となった。学生課の職員が危機を察知して親に連絡したけど、放任主義な親は私の問題に向き合おうとしない。よって、学費も払えず退学へ。

退学して半年後、100円ショップのアルバイトを始めた。

はてさて、無味無臭で自堕落な私がなぜ、100円ショップのアルバイトを2年も続いているのだろうか?

理由は単純。

"カノンちゃん"がいるからだ。

グッズでもフュギュアでもない。

リアルでカノンちゃんがいるからだ。

というのは私の独善的な視点であり、実際には高校生の"日笠さん"が正しい名前だ。

つまり、日笠さんが、カノンちゃんそっくりということである。

黒髪ショートカットで、目はパッチリ奥二重で、背は170cmと高く、足は長くて、全体的にスラッと細くて、腰のラインが素敵で、声もちょっと高いけど大人びてて、まつ毛長くて、優しくて、真面目で、ちょっぴり人見知りな日笠さん。

何から何までほぼカノンちゃんである。

とりあえずバイトの面接した甲斐があった。面接した帰り、レジにカノンちゃんがいて仰天した。

(これは絶対運命だ!)と。

そうしてバイトを始めて、続いた。と言っても、未だにカノンちゃんと話せてはいないが。早くしないとカノンちゃん(日笠さん)は3年生になってしまう。もう卒業してここを離れてしまう。

そんな焦りを胸に今日も私は、レジで接客する彼女を傍目に品出しをしていた。

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