番外編「フェンの受難:モフモフ愛好会」
平和になったフェンリル王国には、一つだけ大きな問題があった。
それは「フェン様モフモフ権」の争奪戦である。
「並んでください! フェン様へのブラッシングは一人五分までです!」
シルヴィアがストップウォッチを持って叫んでいる。
王城の庭には、長蛇の列ができていた。
エルフ、ドワーフ、人間の子供たち、さらには他国の外交官まで並んでいる。
「わふぅ……(解せぬ)」
俺は特製の台座の上で、無抵抗のまま横たわっていた。
正直、気持ちいい。
エルフのマッサージ技術は高いし、ドワーフのブラッシングは力強くてツボに入る。
だが、さすがに数が多すぎる。
「次は私の番ね!」
列を無視して割り込んできたのは、なんと隣国の王女だ。
「ちょっと待ってください! 外交特権の乱用は認めません!」
「うるさいわね! モフモフに国境はないのよ!」
醜い争いが勃発する。
俺はため息をついた。
最近、俺は『守護獣』というより『公認セラピー犬』扱いされていないか?
そこに、救世主が現れた。
リアだ。
「みんな、そこまで! フェンは私のものです!」
リアが仁王立ちで宣言する。
「フェン、おいで!」
「わん!(イエス・マイ・ロード!)」
俺は列を飛び出し、リアの元へダイブした。
リアは俺を抱きしめ、顔を埋めて深呼吸する。
「スー……ハー……。フェン成分補充完了。これで午後の執務も頑張れるわ」
結局、一番のモフモフ中毒者は、この国の女王陛下だった。
俺は尻尾を振りながら、諦めて目を閉じた。
まあ、愛されているならよしとするか。
この国が平和である証拠なのだから。
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