パラソルを差す女
たち
夏の輪郭は消えていく
いつか見た、夢のこと。木々の少ない、生い茂った草原の中、パラソルを差す女が居た。日差しの強い中、白の外面に光は褪せながら、また、太陽に戻っていく。きっと、もう戻れない。
女のワンピースは、夏の微風に揺られ、輪郭のぼやけた、切ない顔が映っていた。後ろにいる男の子は、パラソルに入らず、丸っこい帽子を頭に乗せ、こっちを見て来る。背景が夕焼けになる。夢の内容は忘れてしまった。それでも、全体が有耶無耶な入道雲が
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その夏の日は、何時もより爽快感のある暑さであった。雲の無い秋晴れや、冬の晴天の冷たさとは違って、夏の空には深い青空と少しの雲が広がり、夏の風物詩とも言える入道雲が見えるのが好きだった。
木で出来た小さな風車が、荒波の様な、大きな音を立て、回る。夏の風は、優しい。誰にでも触れられるように、温かく包んでくれる。日差しが、痛い。草の棘も、痛い。私だけの空間に感じるその景色は、何事にも変えられない、鬱くしいとも言える大きな雲が、昇っていた。いじわるな太陽から逃げるように、木の下にやってくる。空を横切る一筋の雲は、あの大きな入道雲と闘っている様だった。ぼーっと汗を感じて直後、天道虫がやってくる。ぱたぱたぱた、その広げた赤い羽根を、縮めて、私のズボンの上にちょこん、と乗った。私のことが怖くないのだろうか。風車とてんとう虫の鼓動の対比が、空気を伝って、生を感じさせる。風車とは逆に、小さいながらも大きく動き回るので、大変面白くなった。青いズボンの上をあちこち見回しては、あちこち歩き回って、やがて、止まった。きっと、「夏の暑さに疲れたんだろう。」と思い、また飛ぶまで、ここに居ようと思った。空の青さに見蕩れて、数分が経った時。天道虫が突如、羽根を忙しなく動かし、空中に文字を描くように右往左往と離れていった。きっと、まだ仕事があるのだろう。自由な時間を生きる私にとって、全ての物事は遠く感じられ、その分、季節は身近で、それでいて、日差しの強い夏は嫌いだった。
天道虫が去ってから、また新たに、遠くから、蝉の声が聴こえるようになってきた。ミンミンとも、ジリリリリとも。夏の演奏会みたいに、羽根を掻いて、音を鳴らして。共鳴しては、自分の存在を露わにしていた。あの音を、自分なりに感受する。叫んでいるようにも、喚いているようにも、気ままに自分の感情を動かす。目を瞑ると、音が鮮明に聞こえて、蝉の声が聞こえてくるようだな、と、想いを馳せる。蝉の送る一生。どう生きるのだろうか、365日と言う限られた一年の中の、また更に小さな「夏」と言う季節。秋には、転がって消えてしまうのに。きっと、自分の事なんか気にもせず、今は必死に後世を繋げてるのだろう。そうしてまた、来年には夏を咲かせる。また、雲が流れる、遠くに見える山よりも高く。あれは、消滅してしまう迄、永遠と目標に向かってきているのだろう。草の匂いが、目に見えるほど、強い風と共にやってくる。湿っている。蝉も、鳴く事を止めた。青い日差しを眺め、目に焼き付かせながら、私も目を閉ざした。
パラソルを差す女 たち @ier_tachi
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