第8話 8.訓練
次の日、トレーニングルームにて、
織多さんと加賀見は、VR模擬戦を行っていた。
軍隊の訓練の使用に耐えうるスペックのこの装置は、
かなりの負荷を脳にあたえているようであった。
そのためか、かなりの疲れを感じる。
加賀見は、ほどほどのところで、
やめないと明日以降に行くであろう
探索への影響を危惧した。
「それにしても強いというか、凄いな、彼女は」
ステージ選択、遭遇戦。加賀見は、織多さんとまず、
共同で準備されたステージをクリアするモードを選択した。
「加賀見さんは、火器が充実していますねー。
ゲームでいう、後衛ですね。私は、これだけですから前衛ですねー」
と言い、初日に化け物を両断した薙刀を見せる。
「あまり期待はしないでください。訓練を受けたとは言え、
特に軍隊経験どころか格闘技の心得すら、ありませんので。
とりあえず、生き残ることを考えて、行動しましょう」
と加賀見は、件の薙刀を見ながら、言った。
ステージ開始後、加賀見は、織多さんの後に続き、
何もせずにクリアした。
この娘は、実戦の経験があるのではないだろうか。
それほどに、的確に敵を倒した。
「ふう、手ごたえがありませんね。
それにこれだけ動いても疲れませんしー。
あっでも脳が疲れるから、甘いものがトレーニング後に
必要かもですね、加賀見さん」
3回ほど、繰り返し、織多さんは、
加賀見とバトルするモードを希望した。
「わかりました、やりましょう」
ステージ上で、織多さんと対峙する。
VRと分かっていても銃器を向けることを
躊躇する加賀見。
対して、織多さんは、気合の入った呼吸をしている。
「はぁぁぁーはぁぁー」
そんな織多さんを見て、加賀見は、気でも
放出されるのではと錯覚してしまい、
距離を取ろうと走り出した。
織多さんがなんとか目視できるくらいに引き離し、
威嚇射撃を行ってみる。
彼女は、悠然と歩いて、近づいてくる。
加賀見は、言いようのない圧迫感を感じ、
今度は、火炎放射器で彼女の周りを燃やすが、
彼女には火が見えていないのだろうか、
歩いて近づいてくる。
これは仮想現実だ、死ぬわけないはずなのに
恐怖を感じる。逃れることのできない死を一歩一歩、
死神が鎌を持って、近づいて来る。
「来るな来るな来るなー。ぐぅー」
加賀見は、銃器を乱射し、その場を逃げ出す。
その瞬間、死神が走り出し、加賀見に追いつく。
そして、鎌を振り下ろすように見えた。
「助けてくれー」
加賀見は訳も分からず、織多さんに懇願していた。
「はい、私の勝ちですねー。
VRとはいえ、切られたりすると、
心傷になるらしいから、ここまでです」
と軽く加賀見は、肩を叩かれた。
VR模擬戦を終了し、加賀見は、心底ほっとしていることに
気づいた。そして、彼女に尋ねた。
「今更ですが、織多さんは、実戦経験があるんでしょうか?」
「えっーと、シャワー浴びた後に食堂でどうでしょうか?」
普段の雰囲気と会話に加賀見は、ほっとして、
「はいはい、ケーキもつけますよ。もちろんおごります。
30分後にどうですか?」
「はいっ」
と元気よく返事する織多さん。
食堂で織多さんは、ニコニコしながら、話してくれた。
「薙刀を主とする実戦的な古武術を
小さい頃からしていました。
特に家元とかではないのですが、
近所の道場に通っていました。只今、師範代ですよー。
さっきは、お互いの実力をとのことだったから、
本気出してみました。
加賀見さんは、あれですね、相手が私だったからか、
威嚇射撃に終始していましたねー。
それで、道の真ん中を堂々と進みました」
笑いながら話すが、あの圧迫感には
もっと何か根源的なものがあるような気がした。
そんな気がして、それとなく話を続けようとしたとき、
探索の認可通知がメールに来た。
「おおっー明日からできますねー。
明日、朝から行きますかー?」
織多さんがうれしそうに尋ねてきた。
「そうですね、明日は日帰りですので、
ここの外部環境に慣れるために行きますか」
加賀見は、答え、二人分のケーキを
食べ終わるのを待って、部屋に戻った。
いつも通り、定時連絡のメールを
本社に送り、早めの就業完了にした。
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