クズニート、天使に匙を投げられて異世界転生する。
アサエル
第1話 異世界転生
俺は川原 輝。自分で言うのもなんだが、ニートだ。好きな物はパチンコと酒とタバコ。
「ん~、酒でも買うか。」
そう思って俺は久しぶりに外に出てコンビニに向かうために信号を渡る。
その時だった。
車の急ブレーキ音がすぐ近くで聞こえた。
気が付くと、俺は真っ白な空間に立っていた。
雲も床も境目がなく、ただ白い。
「あー……俺死んだのか?」
そう呟いた俺の前に、ため息をつきながら天使が現れた。
「……川原 輝。享年34歳。」
「なんか天使のくせに暗くね?」
「こういう性格なんです。」
天使は羽を畳み、書類をめくりながら心底どうでもよさそうに言った。
「生前の行いについてですが……」
「あ、そこはいいっす。」
「よくありません。」
天使は俺を見ずに淡々と続けた。
「1992年の2月10日に生誕。小中高は公立の学校へ入学。中学校・高校は陸上部に所属。23歳の時に退職、以後無職。ニート歴11年。貯金は全てパチンコへ。健康保険未納。親の年金を――」
「待って待って待って、言わなくていいから!」
天使は面倒くさそうに溜息をつく。
「正直に言います。」
天使はやっと俺を見た。
「あなたは天国にも地獄にも行けません。更生の見込みが薄いと判断されました。」
「俺でもわかるように言うと?」
「神に見放されたということです。」
天使は淡々と続ける。
「ですが、完全な廃棄対象でもないなので異世界に送ります。」
「え?雑すぎじゃね?」
「その世界は剣と魔法の世界。魔法理論は厳格。倫理観は保守的。娯楽は極端に少ないですね。」
「…嫌な予感しかしないんだけど。」
「あなたの大好きな賭博・喫煙・即時快楽性の高い文化は存在しません。」
「最悪じゃん!!……あ、でも酒はあるのか。」
「そう言うと思って未成年の体にしてあります。」
「ちくしょう!!」
「チャンスを与えてあげてるだけでも感謝してほしいですよ。」
天使は呆れた表情で俺を見る。
「じゃあチートは!?」
「ありません。」
「加護は!?」
「ありません。」
「優しいヒロインは!?」
「保証できません。」
俺は落胆した。
チートやハーレムが無いなら、異世界転生の意味はあるのだろうか……?
「転生後の名前は“アダン”です。魔法学校に入学する当日に転生させます。そこで人として生き直せたら、まあ……それでいいでしょう。」
「生き直せなかったら?」
天使は少し考えて、肩をすくめた。
「その程度の人間だった、ということです。」
体が光に包まれる。
天使の姿が遠くなる。
光に包まれながら、俺は改めて思った。
――ああ、俺の人生、ゴミみてぇだな…。
再び目を開けると、緑色の目がくりっとした少女が、こちらを覗き込んでいた。
「うわっ!?」
俺はビックリして飛び起きた。
「ママー!お兄ちゃん起きたよー!」
少女は部屋をバタバタと出る。
俺は部屋にあったたて鏡を慌てて見る。
「な、なんだコレ!?」
そこには、いつものボサボサの黒髪の俺ではなく、茶髪のストレートヘアーの少年が立っていた。
……目の下のクマが目立つが。
「マジで異世界転生したのかよ…。」
先程の少女が俺のもとに来る。
「お兄ちゃん、朝ごはん食べないの?」
転生先の“アダン”には妹がいるらしい。
「……お嬢ちゃん、君の名前は?」
少女は首を傾げる。
「アンナだけど……?」
「よしアンナちゃん、質問していいかい?」
アンナちゃんは戸惑いながら、頷いた。
「ここは、どこだい?」
「ブロン王国……。」
「俺の名前は……?」
「アダン・マーティン……。」
「パチンコとタバコは……?」
「パチ………?なにそれ~?」
「マジかよ………。」
「お兄ちゃん、どうしたの?」
アンナちゃんが不安そうに俺を見つめる。
「え!?あ、いや、なんでも!?」
「お兄ちゃん、今日から学校に通うから緊張してるの~?」
「うんうんうんうん!!!!」
アンナちゃんがニコっと笑う。
「じゃあ、アンナが元気出るおまじないかけてあげる!」
「あ、ありがとう…。」
アンナちゃんが俺の頭をわしゃわしゃと撫でてくれる。
こんなクソつまらない世界でも、こんな可愛い妹がいたら何とかなりそうだな…。
そう思った瞬間、衝撃の言葉が聞こえた。
「お休みの日は帰ってきてね?」
「え?休みって……」
「ママが言ってた!お兄ちゃんは、“りょーせーかつ”だって!」
「寮生活!!??」
「うん!」
「お、終わった……。」
俺は、この異世界で上手くやっていけるだろうか……。
クズニート、天使に匙を投げられて異世界転生する。 アサエル @asaeru2525
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