成功例

北燈

成功例


 行き先の部屋を指定し、取っ手を回して開ける。それだけで、扉の向こうは目的の空間に繋がる。

 そんな扉を作りたくて、僕は研究者になった。


「完成だ!!」

 僕が幼少期から思い描いてきた扉が今、目の前にあった。あとは実験するだけだ、別室にいる助手が、実験用の兎を通す手はずになっている。

 ガチャ

「成功だ!!」

 実験用の兎がぴょこぴょこと部屋に入ってきた。離れた部屋にいた兎が、確かにこの部屋に現れた。早く研究室に戻り、論文をまとめなければならない。そうだ、この扉で研究室へ戻れば、すぐに作業に取りかかれる。僕は兎を抱え迷わずドアノブに手をかけた。勿論行先は研究室だ。

 ガチャ

「成功だよ、助手君」

 扉を閉め助手の方を見る。助手の手の中には今自分が抱いているはずの兎がいる。おかしい、何かが引っかかる。

 ガチャ

「失敗だー」

 そう言ってひとりの男が扉から現れた。それは僕自身であった。

 

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成功例 北燈 @mimica

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