第2話 悪運が、命を残した日
最初の戦場は、
戦場と呼ぶには、あまりにも日常の延長だった。
コンビニの看板が倒れ、
信号機がぶら下がったまま揺れている。
ここは、
昨日までの通学路だ。
「……来るぞ!」
誰かが叫んだ。
遅かった。
---
裂け目から落ちてきたのは、
人の形をした“何か”だった。
腕が長すぎる。
脚の関節が逆だ。
地面に着地した瞬間、
アスファルトが割れた。
「化け物……」
誰かが、震えた声で言う。
逃げ道は、
もう塞がれていた。
---
俺は、
走れなかった。
足が、動かなかった。
頭では分かっている。
逃げなきゃ、死ぬ。
でも、
身体がついてこない。
---
誰かが、能力を使った。
炎。
光。
風。
どれも、
**効いていない**。
化け物は、
面倒そうに腕を振った。
それだけで、
三人が吹き飛んだ。
壁に叩きつけられ、
動かなくなる。
---
「……やばい」
その言葉が、
現実になろうとしていた。
俺は、
祈ったわけじゃない。
考えたわけでもない。
ただ、
**「死にたくない」**
そう思った。
---
その瞬間だった。
胸の奥が、
ひやりと冷える。
嫌な感覚。
でも、
なぜか確信があった。
――来る。
---
化け物が、
俺の方を向いた。
視線が合う。
次の瞬間、
世界が歪んだ。
---
化け物の足元が、
崩れた。
さっきまで無事だった地面が、
突然、陥没する。
偶然だ。
誰が見ても。
化け物は体勢を崩し、
そのまま前につんのめった。
俺の横を、
**すり抜けるように**。
---
助かった。
そう思ったのは、
一瞬だけだった。
---
崩れた瓦礫が、
**全部、俺の方に落ちてきた**。
「――っ!」
逃げる暇はない。
身体を丸めた。
次の瞬間、
衝撃。
---
視界が、
真っ白になる。
痛みが、
遅れてやってきた。
骨が、
鳴った気がした。
---
気づいたとき、
俺は瓦礫の下にいた。
動けない。
呼吸が、
浅い。
どこか、
折れている。
---
でも、
生きている。
化け物は、
遠くで別の方向に転がり、
他の能力者たちに囲まれていた。
俺は、
**戦場から弾き出された**。
---
「……これが、悪運?」
声が、
掠れる。
助かった。
間違いなく。
でも、
代わりに――
* 一番痛い位置に瓦礫が落ち
* 一番逃げられない場所に残され
* 一番役に立たない状態になった
---
誰かが、
俺の前を通り過ぎる。
「こっちは後回しだ!」
「動けないなら、無理だ!」
正しい判断だ。
俺は、
戦力じゃない。
---
胸が、
苦しくなる。
痛みじゃない。
理解してしまったからだ。
---
悪運は、
俺を守らない。
ただ、
**殺さないだけ**。
---
しばらくして、
爆音がした。
化け物が、
ようやく倒されたらしい。
歓声が、
遠くで上がる。
---
俺は、
瓦礫の下で思った。
これが、
俺の能力だ。
* 勝てない
* 輝かない
* でも、死なない
一番、
始末に悪いやつだ。
---
視界の端で、
数字が一瞬だけ揺れた気がした。
【スキルポイント:??】
だが、
確認する余裕はなかった。
意識が、
暗くなっていく。
---
次に目を覚ましたとき、
俺はもう、
**逃げられない側**にいる。
そんな予感だけが、
確かに残っていた。
---
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます