ミステイク・デスゲィム~デスゲームの主催者ですが、部下が毎回『人違い』で一般人を連れてくるので、仕方なく人生相談に乗っています~

赤色ノ人

第0話『断罪の庭師は、枯れ木に死を咲かせる』

 殺戮遊戯デスゲーム

 それは、社会という巨大な樹木を健やかに保つための剪定せんていに他ならない。


 伸びすぎた欲望、腐り落ちた倫理、法の手を逃れて肥大化した自我。

 それらを摘み取り、め直し、あるいは根元から断ち切る。


 それが、影の執行人として歴史の裏側を歩んできた我ら一族の生業なりわいである。


「ガーデナーさま。今宵の獲物は、少々『根』が深いようです」


 その呼び名に、俺はゆっくりと頷き、紅茶のカップをソーサーに戻す。

 卓上には、一通の分厚い封筒と、一枚のオーダーシート。

 そこには、法で裁けぬ悪に愛する者を奪われた、ある遺族の慟哭どうこくが記されていた。


「構わん。依頼主クライアントの涙の量だけ、丁寧に切り刻むのが我々の流儀だ」


 これより俺は人を辞め、罪人を裁く舞台装置の絶対的な管理者、『庭師ガーデナー』となる。


 薄暗い管制室へ向かうと、無数のモニターが青白い光を放っていた。

 モニターの先には、麻袋を被された遊戯の参加者が映し出されている。


 愚か。

 実に愚かだ。

 

 大罪人が未来永劫、安全圏にいるとでも思ったか?

 過去に何人もの未来を奪っておきながら、のうのうと陽の当たる場所を歩いてきた報いがこれだ。


「………ここへ招かれた時点で、貴様の人としての権利は剥奪される。覚悟するがいい」


 我が一族の中でも、俺は特にが得意だとされている。

 父や祖父のように、短絡的な暴力で屈服させるのではない。

 対象の記憶を掘り起こし、過去の罪と向き合わせ、逃げ道を塞ぎ、自らの手で自らの首を絞めさせるような精神の閉塞。


 肉体的な痛みなど、すぐに慣れてしまう。

 本当に人を殺すのは、刃物ではない。


 後悔だ。


 俺は静かにマイクのスイッチを入れる。

 剪定鋏を握る職人のように、慈悲深く、かつ残酷に。


「聞こえるか、かくも醜き枯れ枝よ」


 花も咲かず、実も結ばぬ貴様に残された価値は一つ。

 精々、無様に燃え尽きて、この社会うときの養分となって散るがいい。

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