AIと共作プロジェクト
三京大、
#1 小瓶の約束
あの日の灯台は、遠くから見てもすぐにわかった。
十年の年月が過ぎても、あの白い塔は変わらずに海を見下ろしている。
波の音、潮の香り、そして風が頬をかすめる感触。
全部が、十年前の夏と同じだった。
僕はポケットの中で、小さなガラスの小瓶を握りしめていた。
細くひびが入り、冷たいガラスの感触がどこか頼りなかった。
「十年後、ここに持ってきてね。」
中学三年の夏、海を見下ろす灯台の下で、沙耶はそう言った。
透明な小瓶の中には、白い小さな紙が入っていて、何かが書かれていたけれど、僕は読むのが怖くて、結局あの日から開けたことがなかった。
彼女は転校することになっていた。
親の仕事の都合で、遠くの街へ引っ越すと聞いたのは、その夏休みの始まりだった。
だから僕たちは、この約束をしたんだ。
「十年後、ここで。」
けれど、十年は思ったより長く、思ったより短かった。
社会人になり、仕事に追われ、連絡も取らずにいた。
正直、今日ここに来るのも、最後の勇気を振り絞った結果だった。
そして——
僕はその小瓶を、灯台の階段を上る途中で落としてしまった。
乾いた音を立てて、小瓶は地面に砕け散る。
細かなガラス片が陽の光を受けて、キラキラと光っていた。
「……やっちまった。」
膝をついて、ガラスの破片の中から紙切れを拾い上げる。
小さく折りたたまれたその紙は、時間の重みで少し黄ばんでいた。
震える指で広げると、そこには細く優しい文字が並んでいた。
「大好きだったよ。
あの時は言えなかったけど。
もし十年後、ここに来てくれたなら、それだけで私は幸せです。」
文字が、にじんで見えなくなった。
潮風のせいだ、と言い訳したかったけれど、それは涙だった。
灯台の下に立つと、遠くの波間に、白いワンピースの少女が立っているような気がした。
風が強くなり、海がざわめく。
「沙耶……」
十年前の自分は、ただ沙耶の笑顔を見つめることしかできなかった。
好きだと言えず、約束だけを胸にしまいこんだ。
そしてその約束すら、小瓶とともに割ってしまったんだ。
けれど、手紙の言葉が胸に染みる。
あの時、彼女はすでに気持ちを伝えてくれていたのだ。
僕はガラスの破片を集め、小さな手紙とともにポケットにしまった。
約束は、果たせたのだろうか。
わからないけれど、僕は少しだけ前を向けた気がした。
「ありがとう。沙耶。」
灯台の上から海を見下ろすと、波の音が優しく響いた。
まるで、彼女の声が、遠いどこかから届いたような気がした。
(終)
いかがでしたか? これが記念すべき(?)一作目ですね。今回基になった単語は……
「灯台」
「約束」
「ガラス」です! いかがでしたか? また別の記事でお会いしましょう!
三京大、
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