天才美女発明家天野原の野望

赤雪トナ

第1話  天気変えられーる君

「助手君助手君! 聞いてくれたまえ!」

「はいはい、なんですか博士」


 部屋の外から呼ばれた童顔青年の助手は開発室の扉を開いて、中を覗く。

 そこには二十歳半ばの黒髪白衣美女が片手で持てるタブレットを掲げていた。


「この天才! 美女! 発明家! 天野原が! 今回もすんばらしい発明をしたぞ!」

「ほー、今度はどんな発明ですか」

「んーっテンションが低いっ。もっと喜びを分かち合おうじゃないか!」

「はいはい、内容を聞いてから共有しますよ」


 そう答えつつ、助手はポケットに手を入れる。そこにスマホがあることを確認すると先を促す。


「聞いて驚け! なんとこれは『天気変えられーる君』だ!」

「なるほど。簡単操作で天気を変えられると」

「そのとおーりっ! さすが助手君! 名前を聞いただけで理解するとは、さすがこの天才の助手なだけはある!」


 名前そのまんまですからという返答はせずに、どうしてそんなものを作ったのかと聞く。


「今週はやる気が出ないウィークだって言っていたでしょ」


 だからのんびりしていたのに余計な事をするな、と内心で続ける。


「うむ! しかし近所の短パン少年が楽しそうに言っていたのだ。金曜日の遠足楽しみだなと。しかし天気予報を見ていた私は知っていた! 金曜日は雨だ」

「もしかして少年って正太君のことじゃないですよね」

「正太君だが?」

「これまで何度も不審者として警察のお世話になったでしょ! もう関わっちゃだめじゃないですか!」


 天野原は助手の言葉を鼻で笑う。

 そんな天野原を見ながら助手はポケットの中のスマホを操作した。


「私の愛は止められない。これまでは誤解から怖がらせてしまったが、今回の発明は喜んでくれる。そして感激した正太君はお礼として、あの小さな手で私のお尻をスパンキンッ!」


 天野原はショタコンだ。美貌と金と地位があるため男など選びたい放題だったが、ショタという手の届かない☆を求めるチャレンジャーだった。


「スパンキンッ! じゃないですよ。正太君をおかしな趣味に巻き込まないでください」


 スマホを取り出した助手は目的の相手に繋がっていることを確認する。


「ん? 話の途中で電話とは失礼だぞ」

「いいんですよ。必要な電話なんですから。あ、玄頼警部ですか? いつものです、お願いします」


 すぐに向かうという返事を聞いて通話を切る助手に、天野原は慌てた様子を見せた。


「待て! どうして警部に電話なんかするのだ! まだ未遂だぞ!? 正太君にはなんの被害も出ていないっ」


 そっちじゃないですと助手は答えて続ける。


「天気変えられーる君の方ですよ」

「あれがなんだというのだ。天気を変えるだけだろ」

「この天才アホはすごいのにほんと……。天気を無理矢理変えたらどこにどんな影響がでるかわかったものじゃないでしょ!」

「正太君の喜びに比べたら大した影響ではないっ。だが警部の説教は怖いので逃げるっ」


 逃がすわけないでしょと助手が素早く近づいて、四の字固めをきめた。

 いくら頭が良くても不意の暴力には負けるのだ。

 痛い痛いと悲鳴を上げる天野原を、助手は玄頼警部が到着するまで拘束し続ける。

 そしてパトカーのサイレンが聞こえてきて、警察が研究所に入ってくる。

 玄頼警部に首根っこを掴まれて天野原はパトカーに叩き込まれた。

 わりと定期的に見る彼らの日常がそこにあった。

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