1 中学生の泣き虫ミオ
ミオ…13歳
中学生のミオは、学校の帰り道、気持ちが沈んでいた。
今日もまた、友達に気を遣いすぎて、「ごめんね」を何度も言ってしまった。
本当は悪くないのに……。
空気が少しでも重くなると、自分のせいだと思ってしまう。
胸の奥がぎゅっと痛くなって、知らず知らずのうちに涙がこぼれていた。
気づけば、古い駅舎の前に立っていた。
ぽつんと灯るあたたかな光。
その光に包まれた“心のステーション”と書かれた看板がまるで「泣いてもいいよ」と言ってくれてるみたいで、ミオは導かれるようにそっと扉を開いた。
カランコロン~♪キラリン〜☆♪
「わっ、来た!来たっ!いらっしゃいだよっ!」
ぱっと明るい声が響いた。
そこにいたのは、星の光をまとったような笑顔の女の子――カンナ。
ミオはカンナの元気な声に驚きながら涙を拭う。
カンナは、ミオを「どうぞ」と切り株の椅子に座るように促しながら
「えっと、お名前は?私はカンナだよ、よろしく!」
「あ、はい、ミオです」
「ミオちゃんだね。ミオちゃんの心、ちょっとだけお疲れだね!」
そう言うと部屋の奥まで行き棚から淡い青色の小瓶を取り出す。
瓶の中には、月の光を集めたような粉がきらめいている。
カンナはその粉を、スプーンでそっとすくい上げカップに入れる。
小さな光の粒がふわりと舞い上がる。
続いて、温めたミルクを注ぐ。
ミルクが月の粉と混ざると、淡い乳白色の渦がゆっくりと広がり、まるで夜空に薄雲がかかったような模様が描かれる。
最後にカンナは両手でカップを包み込む。
願いを込めて!
そして、カンナはそっと微笑みミオの前にそのカップを置く。
「まずはこれ、飲んでみよっ!心がぽかっとあったかくなるよっ!」
ミオが一口飲むと胸の奥のぎゅっとした痛みが少しずつほどけていく気がした。
ミオはカンナ特製の月色ミルクティーを飲みながらぽつりぽつりと話し始める。
友達に気を遣いすぎて疲れてしまうこと。
嫌われたくなくて、つい自分を責めてしまうこと。
泣き虫だと言われるのが辛いこと。
カンナはうんうんと大きく頷きながら聞いていた。
そしてミオの手を軽く握りながら言った。
「ミオちゃんはね、優しいから泣いちゃうんだよ。
泣くのは弱いからじゃなくて、ちゃんと心が動いてる証拠なの!」
ミオは目を丸くした。
「でも……迷惑かけちゃうし……」
「かけてないよ!」
カンナは元気よく首を振る。
「ミオちゃんが“ごめんね”って言いすぎちゃうのは、相手を大事にしてるからだよ。でもね、ミオちゃんの心も大事にしてあげてほしいの!」
カンナは胸に手を当てて続けた。
「ミオちゃんの涙はね、“頑張りすぎちゃったよー”って心が教えてくれるサインなの。だから泣いてしまうけど泣いたらまた笑えばいいんだよ!」
ミオの目に、また涙が浮かんだ。
でも今度の涙は、少しだけ温かかった。
ミオは深呼吸をして、小さく笑った。
「……ありがとう。なんか、ちょっと楽になったかも」
カンナはぱっと笑顔になり、指先で星を描くようにして言った。
「よしっ!ミオちゃんの心、キラリン☆復活だよっ!」(o^―^o)ニコっ
ミオは思わず吹き出した。
その笑顔は、さっきまでの涙をすっかり忘れたように明るかった。
********
ミオが駅舎を再び訪れたのは、あの日からちょうど一週間後の夕方だった。
前回のように泣いたりしていない。
でも、どこか落ち着かない表情で、手をぎゅっと握りしめている。
駅舎の灯りは、まるでミオを待っていたかのように、ぽうっと温かく光っていた。
ミオは深呼吸をして、そっと扉を開けた。
カランコロン~♪キラリン〜☆♪
「わっ!ミオちゃんだ!おかえりだよ!」
カンナはぱあっと笑顔を咲かせて、ミオに走り寄ると手を軽く取った。
「今日はミオちゃん、泣いてないね。でも……ちょっとだけ、心がモヤモヤしてるでしょ?」
ミオは驚いて目を丸くした。
カンナには、心の揺れが全部見えてしまうらしい。
ミオはゆっくり話し始めた。
「この前、カンナちゃんに会ってからね、ちょっとだけ強くなれた気がしたの。
“泣いてもいいんだ”って思えたし…… 友達とも、ちゃんと話せたんだよ」
カンナは嬉しそうに頷く。
「でもね……」
ミオは視線を落とした。
「今日、また友達とすれ違っちゃって…… 前のように泣かなかったけど、“また迷惑かけちゃったかな”って思って…… なんか、自分が嫌になっちゃった」
ミオの声は震えていた。
でも、涙はこぼれていない。
それが、前回との大きな違いだった。
カンナはミオの肩にそっと手を置いた。
「ミオちゃん、すっごい成長してるよ!」
ミオはきょとんとする。
「だってね、前は泣きながら来たでしょ? でも今日は、自分の気持ちをちゃんと持って来たんだよ。 それってね、すっごくすっごく強いことなの!」
ミオの胸がじんわり温かくなる。
カンナは続けた。
「人ってね、一回で変われるわけじゃないの。
ちょっと進んで、ちょっと戻って、またちょっと進むの。
ミオちゃんは今、その“ちょっと進む”をちゃんとやってるんだよ!」
ミオの目に、光が戻っていく。
カンナは星型クッキーをひとつ差し出した。
「これね、二回目に来た人にだけにあげる“がんばり星型クッキー”だよ!」
ミオは思わず笑った。
「そんなのあるの?」
「あるの!」
カンナは胸を張る。
「だって、二回目ってね、“もう一度がんばりたい”って気持ちの証拠だから。
その気持ち、めちゃくちゃキラリン☆なんだよっ!」
ミオはクッキーをひと口かじった。
ほろりと甘さが広がり、胸の奥のモヤモヤが少しずつ溶けていく。
ミオは小さく息を吐いた。
「……そっか。私、ちゃんと進んでるんだね」
カンナは満面の笑みで頷く。
「もちろんだよ! だから……」
カンナは指先で星を描くようして、いつもの決めセリフを放つ。
「よしっ!ミオちゃんの心、キラリン☆復活だよっ!」(o^―^o)ニコっ
ミオは笑った。
「ありがとう!」
前よりも、ずっと強い笑顔だった。
それはもう、泣き虫ミオではなく、前に一歩進んだミオだった。
次の更新予定
「よしっ!心、キラリン☆復活だよっ!」カンナの“心のステーション編” この美のこ @cocopin
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