【プロローグ】

――記憶の中の、足音


社会人になってから、

「ただいま」と言う回数は、確実に減った。


仕事で疲れて帰ってくる夜、

鍵を回す音だけが、部屋に響く。


「……ただいま」


返事は、ない。


それでも私は、

無意識に視線を床へ落とす。


――そこに、

尻尾を振って駆け寄ってくる影を、

探してしまうから。


レオ。


名前を呼べば、

いつでもこちらを見てくれた存在。


この物語は、

私が「ただいま」を失って、

それでも前を向けるようになるまでの話。


小さな段ボールから始まった、

家族と一匹の、長い時間の記録。

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