その手には嵌まらない
燕屋ふくろう
第1話 歓声
僕だってそれなりの家柄だから、君に釣り合わない訳じゃない。なのに君は僕を疑って、アプローチをする度に詐欺師を見るような目をして去って行った。まるで、「その手には嵌まらない」とでも言うように。
今日は君の結婚式だ。当然、君の隣にいるのは僕じゃない。招待されていないから近くで君を見ることも叶わず、場内から漏れ出す拍手に耳を澄ませる。式場の外でざわめく観衆に混ざって、君が出てくるのを待つ。
いよいよ、2人が出てきた。歓声や拍手は最高潮だ。この空気に水を差す訳にはいかないので、拍手だけでも参加する。
君の顔は白くて、ちっとも楽しそうじゃない。僕のアプローチは無視したのに、格式張った縁談を引き受けたのは君らしい真面目な選択だ。君からしたら、恋愛感情なんてものは胡散臭く思えたのだろう。
君のために作った指輪に思いを馳せる。置いてくる勇気がないからポケットに忍ばせただけに過ぎない、小さな荷物。婚約指輪なんて大層なものではなく、恋仲になった暁に贈ろうと思っていた。だけど、指輪を渡す段階にすら漕ぎ着けられなかった。
君は観衆へ手を振り始めた。この指輪は、その手には嵌まらない。
その手には嵌まらない 燕屋ふくろう @oinku
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