聖戦の脱走兵
はらぺこ・けいそ
曇りのち雨
人類の存亡をかけた戦争が始まった。
魔王が誕生し世界は恐慌に陥り、人々は世界に絶望した。そんな中で現れた『勇者』に人類は希望を抱いてしまった。
それからは早かった。
教会は聖戦だ、と声をあげて聖騎士を派遣した。
人間の王国や帝国は軍を出した。
他の種族からも精鋭たちが続々と参戦してきた。
俺も王国の兵士として聖戦に参加した。おとぎ話で聞く勇者様が現れたのだ、この戦は勝てると確信が持てた。そう思えるくらいには勇者様も強かったのだ。各国の精鋭をいとも簡単に薙ぎ倒したのだから。
それから、我々の士気が下がることはなかった。
士気は下がることを覚えないまま、魔王軍を次々に滅ぼしていった。勇者様を筆頭に先頭を行く方々が強者を倒す。我々は残党狩りをする、そんな日々が続いた。
それが油断となり悲劇が起きた。
一瞬の出来事だった。
魔王軍の幹部が俺を含め多くの一般兵がいる後方に位置する部隊を襲ってきた。
「全員退避しろ!我等では敵わない!!」
情報を別の部隊に伝えろという意味で言っているのだろう。しかし、目の前で広がるのは先ほどまで談笑していた仲間たちだった。俺は足がすくみ逃げられなかった。このままでは死ぬ、そう思った。足を引きづらし少しづつ移動をする。
「み~つけた、どこに行こうとしてるのかなぁ?」
ピエロが目の前に現れた。終わりを悟った、ここで死ぬのだろうと。俺は声も出なかった。今の俺は世界で一番情けない顔をしているんだろうな、そんな考えはピエロの言葉で変わってしまった。
「ん~このままじゃ面白くないし鬼ごっこ、しよっか」
突然の出来事に俺は意味が分からなくなった。何故ここで俺を殺さない?何がしたい?お前は、何が目的なんだ?
「なぁ、何が目的でそんなこと」
「目的?楽しいからだよ人間くん。それ以外でもそれ以下でもない。僕はねピエロなんだ。だから、喜劇を起こすんだ♪」
狂ってやがる。俺たち人間を殺して回ることを喜劇と言っている。本当に、何がしたいんだ。
+*+*+*
俺は、逃げるしかなかった。
「時間は三時間!その間に逃げるんだよ?そのあとは僕が見つけ次第に殺しちゃうから」
そい言われた俺は逃げ出した。一般兵であれど敵を目前にして逃げることは許されない。上官のいない今に自己判断で逃げてもよいものなのか、わからない。
それから何時間走ったのかはわからない、疲れきるまで走った。俺が目にしたのは廃村だった。そこは魔王軍に荒らされているのか物資と言えるものは何一つなく、建物は焼け跡も見える。
これが戦争か、俺は平和な時代に生まれたかったなと後悔をしながら廃村の一角にある建物に寄り掛かって休憩をした。
「はぁ、つかれた。ちょっとだけ寝ても大丈夫だよな」
そう言って、俺は眠りについた。
+*+*+*
はぁ、どうして僕がこんなことをしているんだろうね?まぁ、いいんだけど。
「さて、どこにいるんだろうね人間くん」
探し始めて三時間くらいが経過したかな。逃げた方向は痕跡をたどっているからわかるんだけど、どこに行ったのかぁ?
おっ、廃村があるね。少し覗いて行こうか。
+*+*+*
ピエロが近づいてくる、足音を消して、顔を白く塗りなおし素顔を隠し。
「み~つけた」
俺が目を覚ますと、目の前にはピエロがいた。
「終わり、か」
俺は息を吐き、ため息をつきながら言葉を吐いた。その言葉は辛く涙がこぼれ落ちる。状況の整理がついてしまった、仲間はもういない。俺は静かに涙を流す、それを隠すように雨が降り始める。
「あちゃー、雨が降ってきたかぁ。早く帰らないと」
ピエロは俺をどうしたいのだろうか。雨に打たれ白く塗ったピエロの顔からは肌色が現れてきた。
「なぁ、お前はどうして。なぁ、お前はいつから」
俺の目の前にいたのは嘗て俺の親友として切磋琢磨していたアイツだった。でも、あいつは、もう。
「あぁ、この顔のことかい?君が知る必要はないよ」
俺は胸にナイフが刺さっていることに気が付くと意識が遠のいて行った。
「僕はドッペルゲンガーさ。」
雨に濡れて化粧の落ちたピエロは人間の親友の顔を保てず人とえない顔を残して、また化粧を始めた。
「今日の天気は少し不機嫌だね」
そう言って、ピエロは顔を白く化粧を終えた。
空は雨が降り止み、薄黒い雲だけが漂っていた。
聖戦の脱走兵 はらぺこ・けいそ @keito0390
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