第4話 男たちの夜
アレックスとマークは翌日が休みのため王都のパブに飲みに来ていた。
「ちょっと~、アレックス本当にどうしたの?なんかやけにこう、いじけてるというか、ねちっこいというか、やけくそっていうか・・」
「・・・うるさい・・俺だって・・くうう」
(もう少し酔わせてから白状させるか・・)
マークはアレックスに気づかれないよう度数の強い酒を店員に頼んだ。持ってきてもらった酒をアレックスの前に置き、伝えた。
「君が泥酔しそうだから、水をもってきてもらったよ。さあ、飲んで。」
「・・・ありがとう。」
ぐいっと持ってきたもらった飲み物を飲む。アレックスは喉がカーっと熱くなるのを感じた。
「!これ酒じゃんか!!」
「(まあバレるよね。)・・そうだった?ごめん間違えちゃったかも~。こっちが水!」
水を手渡す。アレックスは少し飲んで水であることを確認すると一気に飲み干した。頬は赤くなり、目が虚ろになってきたアレックスを見てマークは思った。
(これは泥酔の一歩手前位だな。丁度良いころ合いだ。)
マークは長年の付き合いであるアレックスの良い方は熟知していた為、優しく声をかけ始めた。
「アレックス、今日はどうしたの?ユリアナさんのこと気になっているのかなって思っていたけど、実際どうなの?」
「・・・うん。気になってる。なんでわかった?」
「そりゃ、長年の付き合いだからね。」
アレックスは空になったグラスを見つめながら話し出す。
「・・彼女は俺の、多分、多分だけど・・初恋の人だと思う・・。今日眼鏡がずれた時に見えたんだ・・。」
「!!!初恋の人!?初耳なんだけど!!」
「・・だって誰にも言ってないし・・・・振られていたと思うし・・・」
「・・!え!?え!?詳しく!」
アレックスが酔いつぶれる前に全てを聞いておくと意気込みを見せるマーク。そんなマークを見ずにアレックスはツラツラ自分の思いや今までのことを話し出す。
「・・12歳の時に行ったサンドル地域で会ったんだ。最初は一目ぼれだったんだけど・・話していくうちに彼女の考え方とか、それを実際に行動に移している姿に感銘を受けて・・。いつの間にか彼女が俺の心に住み着いていたんだ・・。」
(住み着いているって!!こんなポエムのように話すアレックスは初めてだ!!)
アレックスの語りを聞きながら心の中で笑っているマーク。そんなマークに気づくことなくアレックスは話し続ける。
「サンドル地域を離れるときに、自分の名前と住所を書いた紙を渡して・・手紙を書いてほしい!書くからと伝えたんだけど・・来なくて・・。俺話せるのが楽しくて名前を聞いていなかったから・・自分からは送れなくて・・バカだよなあ・・名前くらい聞いておけよなあ。」
マークは無言でうなずく。そこは名前を聞いておけよと心から思った。
「そんなこんなでこの年齢になって・・彼女、ユリアナが気になり始めて・・。最初はそう思ってなかったんだけど、なんか気になり始めてさ・・。今日ピーちゃんが彼女の眼鏡をずらしたんだ。そしたら彼女の瞳がサンドル地方で会った彼女の目元にそっくりで・・」
「彼女のフルネーム、ユリアナ・サンドルだもんね。」
「・・そう・・。無意識にサンドル地方のあの初恋を忘れようとしていたのかもしれない。サンドル、サンドル・・・。ヒントは沢山あったのに・・」
うわあ!とアレックスはテーブルに突っ伏す。マークはそんな姿を見て
(これはもうお開きだな。連れて帰るか。)
と思い、店員へ会計をお願いした。そのことに気づかないままアレックスは話していた。
「一体、気になる人は初恋の人だったとか、そんな物語みたいなことある!?!?俺、また振られる!?というか向こうは俺のこと怖いと思わない!?だって昔会って名前と住所を渡したやつが同じ職場にいるんだよ!いやだよね!?ごめんね!!?怖いよね!でも俺が君を入職させたわけではないんだ!!!」
アレックスがパブの中心で叫び始めたので、マークは急いでアレックスを連れ寮へ帰った。
「はいはい。アレックス。事情は分かったからさ。僕も協力するし・・まあ任せてよ。こういうの得意だからさあ。」
「ううう。俺は苦手だ。恋愛なんて苦手だ・・ううう」
(まさかだったな。女性恐怖症なのかと思っていたけど、そういうわけではなかったのか。あんなに女性にモテモテのアレックスにこんな一面があったなんて・・)
酔いつぶれた従弟を寮へ連れて帰りながらマークは思っていた。そして少し笑いも出てきた。こんな楽しそうなことは楽しまなくちゃいけない!と。
(あ~毎日の仕事に張り合いが出てきた~楽しみだな~くっつけちゃおう!僕が君たちのキューピッドだ!)
夜も更け、街のところどころにほろ酔い気分の男たちが定食屋やパブから出てきた道を通りながら、三日月のでる夜を歩いて寮へ向かった。アレックスは途中で泥酔してしまっていたが、マークの足取りは軽かった。
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