EP2 正しい告白の断り方

 わたしと蒼園あおぞのさんの間には静寂が広がっている。

 わたしは恐る恐る蒼園さんの様子を見る。

 すると、蒼園さんはガクガク震えていた。


「え、え、いま、なんて言った……?」


 か細く不安定な声で蒼園さんは話す。

 わたしはツバを飲み、決意を固めてもう一度口を開く。


「わたしは、蒼園さんとは付き合えません!」


 沈黙を割いたわたしの声は、教室に響いた。あ、まって、教室じゃん。周りのみんなは、こちらの様子をどうしたどうしたと言わんばかりに覗き込んでくる。やばいな、これ。冷静になったわたしは震える蒼園さんの手を引いて逃げる。


「ちょ、ちょっと。こっちこよう」


 わたしたちはそのまま、中庭まで逃げてきた。


 放課後の中庭、その四隅にある冷たいベンチには二人の女子高生。

 片方は口をぱくぱくさせていて、目は虚ろ。かなりグロッキー。

 そしてもう片方は額からダラダラと汗を流している。


 やばい、やばい。振っちゃったよ。あの蒼園さんを振っちゃったよ。というか告られた? あれは告られたというのか? 宣『告』ではあるから、『告』られたに入るのだろうか。……って、そんなことよくって。

 わたしはそーっと隣の蒼園さんの様子を見る。

 蒼園さんは虚ろな目に少し会いた口からはよだれがだらーっと……って、こんなとこ見られちゃったらまずいでしょ!

 キョロキョロと周りを見回したが、周りに人通りはなかった。良かった、誰にも見られていないようだった。

 さあ、そうとなればわたしがすることは一つだ。

 わたしは蒼園さんの腕をつつき始めた。

 

「あのー、蒼園さんー? 蒼園さんー?」

「はっ! はい!」


 蒼園さんは体を震わせながら起立した。

 数分して周りをキョロキョロと見始め、わたしと目があった、その瞬間。

 蒼園さんの顔は一気に青ざめた。

 ぱくぱくと口を動かしながら、声を発する。


「ご、ごめんなさい。さっきはあんな唐突にあんなことを言って……」

 

 頭を下げる蒼園さん。


「そ、そんなことないです。ちょっと唐突すぎたのはそうですけど……」


 こんな様子を見てしまうと、断る口の歯切れも悪くなってしまう。

 その言葉を受けた蒼園さんは頭を上げ、わたしの目を見つめる。


「ごめんなさいね。……さっきのことは忘れてもらっていいかしら」


 少し潤んだ目。


「はい、忘れてほしいなら忘れます」


 蒼園さんは少し遅れて頷く。

 ここにわたしたちのヘンテコな関係は終わった。

 出来る前に終わったようだ。


「じゃ、じゃあ私は失礼するわ……」

「はい、気をつけて」


 わたしたちは雲ひとつない青空の下、別れた。

 一節の雨を残して。

 

 

 

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