余命一年。恋愛経験ゼロの俺は仕方なくいじめられっ子に付き合おうって言ってしまった。
うさうさ
春
プロローグ
「待ってぇ!」
俺は大声で叫んだ。だがその叫びはあの子に届かなかったのか、あの子は手すりの前で微動だにしなかった。俺は一歩ずつ静かにあの子の元へ近づいた。
「そこは危ないから、こっちへ」
「いやだ!」
あの子は鬱憤をぶつけるように大声を上げた。その声に、俺は思わず足を止めてしまった。そしてあの子はパッと振り返った。
「もう限界なの。全部いやだ!」
あの子の両目からは、ポロポロと涙がこぼれ落ちていた。
「私についての噂も人々の視線も友達からのいじめも、もう耐えられない。疲れたの。だからもう楽になりたい。私を…止めないで」
あの子は何か何かを決意したかのように、空っぽの空虚へと目を向けた。
本当に飛ぶつもりだ。
あの子の体からは、もはや緊張感というものが感じられなかった。すぐにでも飛び降りそうだった。俺は彼女を止めるために、精一杯駆け出した。
あの子との距離は縮まり、あと二歩。あの子が片足を宙へと踏み出した。ゆっくりと前へ傾いていく彼女の体に向かって、俺は咄嗟に手を伸ばした。
「死ぬな!」
間一髪で彼女を抱き留め、落下を防いだ。だが彼女は俺の行動が邪魔だと言わんばかりにもがき大声を上げた。
「放して! 私はもう生きたくな」
「俺が君の味方になる」
俺の声に、彼女はびっくりしたように、呆然とした表情を浮かべた。俺は目を逸らさず、彼女の目をじっと凝視した。
もう知らん。この方法しかない。これからのことは……なんとかなるだろう。
決心がついた俺は彼女の顔をまっすぐに見つめ、口を開いた。
「俺と付き合おう」
「いきなり何を」
「俺が君の彼氏になって、君の味方になる。だから死ぬな」
俺の言葉に呆気に取られたのか、彼女はなんの反応も返事もなく俺の顔をじっと見つめていた。俺は彼女と目を見合わせながら心に決めた。
たとえ俺には一年しか残されていないけど…、俺が死ぬ日まで君の味方になる。
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