ストッキングについて詳しかった女子

岱芽

 これはキタ。

 ずっと懇意にしていたバイト先の同僚の亜梨沙と飲みに行ったら、思ったより亜梨沙が酔っ払ってしまい、一緒帰ろうと肩を貸して退店するも、結局私も酔っ払ってるし2人で盛り上がった挙句カラオケに入って大暴れ、落ち着いたタイミングでちょっとエッチな雰囲気になってきて今はそのままキスしている。

 息が熱く絡み合うキスを続けながら、私は我慢できなくなって亜梨沙の体をそっと押し倒した。カラオケルームのソファに彼女の背中が沈み、私が上から覆い被さる形になる。亜梨沙は抵抗するどころか、目を細めて甘い吐息を漏らしてる。目を合わせないようにしているんだろうか。かわいすぎる……。

 そのまま手を伸ばして、服越しに彼女の胸を撫でる。柔らかくて、温かくて、指先で軽く押すだけで形が変わる。亜梨沙は気持ち良さそうに目を閉じて、肩を小刻みに上下させて息をしている。頰が赤く染まって、身体の中で暴れ回る熱が唇から零れている。

 もう辛抱たまらなくなった。片手で亜梨沙のスカートの中に滑り込ませる。

「ね……ぇ、……恥ずかしいよ」

 亜梨沙はそう言うけど、目はむしろいじらしく光って私を誘っている。太ももの滑らかな肌を伝って、指先をどんどん上へ走らせる。パンストの感触。勢いで指を掛けてビリッと破いた瞬間。

「ちょ、ちょっと!それ高いんだけど!」

 いきなり亜梨沙が目を皿にしてツッコミを入れてきた。酔ってるはずなのに、急に素面みたいな声になっていた。私の手が止まって、二人して固まる。

「え、あ、……ごめん」

「あーもー、これ私気に入ってたのに……」

 いきなり説教モードになり、私もいたたまれない。

「ごめん、私あんまりストッキングとか得意じゃなくて」

 私は慌てて手を引き、破れたパンストの穴を指で広げないように気をつけながら謝った。亜梨沙はソファに横たわったまま、ちょっと拗ねたような顔で私を見上げる。

「もう……朋花ってば、勢いだけでいくんだから。……まあいいけどさ。これ、Wolfordのやつなんだよ? 一足で五千円近くするの」

「ご、ご千円!? え、そんなにするの!?」

 思わず声を上げてしまった。亜梨沙はくすっと笑って、上体を起こした。スカートの裾を直しながら、ちょっと得意げに話し始める。

「うん、そう。Wolfordってオーストリアのブランドで、シルクみたいな触り心地なのに丈夫で、伝線しにくいのが売りなんだよね。……まあ伝線どころか破れちゃったけど」

「うわ、ごめん本当に……」

「折角だから、ストッキングのこと教えてあげようか?朋花、確かにストッキングはモノによっては蒸れるし、ぎゅっと締め付けられる感覚が苦手って人もいるけど、ちゃんとしたやつなら快適に履けるハズだよ。女の子なら知っておいた方がいいよ」

 亜梨沙は私の隣にぴったり寄り添って、膝を軽く組み替えた。破れた穴から覗く白い太ももが妙に色っぽくて、ドキッとする。

「え、教えてくれるの?なんか急に先生みたい」

「ふふ、酔いが少し醒めたし、ちょうどいいでしょ。まずね、ストッキングって大きく分けて二種類あるの。パンティストッキングと、ガーター付きのストッキング。私の今のはパンティストッキングの方で、腰まで一体型になってるやつ」

「へえ……ガーターって、あのベルトで吊るすやつだよね?なんかエロいイメージかも」

「そうそう。でも最近はガーターもファッションで復活してるよ。あとデニールっていう厚みの単位があって、数字が小さいほど薄くて透け感が強い。30デニール以下だと夏向きでかなり透けるし、60以上だと秋冬で暖かい感じ。それ以外にも使われている糸の違いなどで変わるよ」

 亜梨沙は指で自分の脚をなぞりながら説明する。破れた穴の周りをくるくる指で回して、見せつけるように。

「私のこれ、たぶん20デニールくらい。光沢があって、脚がきれいに見えるでしょ?」

「うん、すごくきれいかも。余計ごめん」

「いいってば。歴史もちょっと面白いよ。ストッキングの原型って、昔は男性が履いてたんだって。ルネサンス期に貴族の男の人たちが、タイツみたいなのを履いてたのが始まりで、ナイロン製の現代的なストッキングは1930年代にデュポン社が発明したの」

「え、男の人が?」

「うん。で、戦後になって女性のファッションに爆発的に広まった。他の大手ブランドだと、Wolford、Falke、Fogal、Oroblùとか。あと日本だとATSUGIとか福助が有名かな。でも私はWolfordが一番好き。肌触りが全然違うんだよ」

 亜梨沙はそう言って、私の手を取ると自分の太ももにそっと当ててきた。

「ね、触ってみて。……ほら、こんな感じ」

 破れた穴のすぐ横。温かくて、すべすべで、確かに高級感のある生地なようだ。指先が震える。さっきの熱がまた戻ってきて、息が少し荒くなる。

 亜梨沙は私の耳元で小さく笑った。

「ねえ、朋花。……勉強、もう充分?それとも、……忘れられないように、もっと、教えてほしい?」

 亜梨沙の甘い声に私の理性はすっかり蕩けてしまう。誘われるように、私は再び彼女の体を横たえて、できるだけ上品に、彼女を味わい尽くす。

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