新説:真夜中の女子寮 ~潜入! 男子禁制の聖域~

Juyou

第一回:男子禁制の檻、絶望のカーテンコール

「……いいか、悠真。失敗は許されない。伝説を作ってこい」 悪友のその言葉を、俺は今、人生で最大の後悔と共に思い出していた。


深夜二時。学園で最も厳格な女子寮「白亜館」の外壁。 俺、一条 悠真(いちじょう ゆうま)は、雨上がりの冷たい排水パイプにしがみつき、地上十メートルの高さで震えていた。


目的は、学園の三大美女のプライベートを覗き見ること。 若気の至り、で済めば良かった。だが、最初に覗いた窓の先で、俺の「理想」は音を立てて崩れ去った。


ターゲット1:生徒会長・桜(さくら)

最初に辿り着いたのは、二階の角部屋。 生徒会長として学園を統べる「氷の女王」桜の部屋だ。 カーテンの隙間から中を覗くと、彼女はちょうどブラウスを脱ぎ捨て、黒い下着姿になっていた。


(おおっ……! 白い、マジで綺麗だ……)


思わず見惚れたのも束の間。彼女はベッドに腰掛けると、サイドテーブルの引き出しから、一冊の分厚いアルバムを取り出した。 そこに貼られていたのは、すべて**「俺の隠し撮り写真」**だった。


「ふふ、悠真くん。今日の三限目の授業、三回もあくびをしたわね。……可愛すぎて、今すぐあの教室のドアに鍵をかけて、私だけのものにしたくなったわ」


桜はうっとりとした表情で、写真の中の俺の頬を鋭いナイフの先でなぞった。


「待ってなさい。卒業式を待たずに、あなたをこの部屋の『住人』にしてあげるから……」


(ヒッ……!?)


ターゲット2:巫女・美雪(みゆき)

心臓が凍りついた俺は、慌てて隣の部屋へ移動した。 そこは、実家が神社で、学園の聖女と呼ばれる美雪の部屋だ。 部屋の奥にあるユニットバスから、パシャパシャと水音が聞こえる。


「……ああっ、悠真さん……」


浴室の扉が少し開いており、湯気の中から美雪の声が漏れていた。 覗き見ると、彼女は全裸で、手に持った「俺の脱ぎ捨てたジャージ」を顔に押し当て、激しく呼吸を乱していた。


「この匂い……。あなたの穢れを、私の体にすべて移したい。そうすれば、あなたは私がいなければ生きていけない体になる……。もうすぐ、もうすぐお札が完成しますからね……」


彼女が持っているお札には、俺のフルネームが血のような赤い文字でびっしりと書き込まれていた。


「……ここ、ヤバい。全員狂ってる!!」


ターゲット3:美術部員・白鳥(しらとり)

最後、一階へ降りる途中に通りかかったのが、後輩の白鳥の部屋。 美術の天才と呼ばれる彼女の部屋は、異様な雰囲気に包まれていた。 壁一面に、血のように赤い絵の具で描かれた俺の肖像画。 その中心で、白鳥はカッターをカチカチと鳴らしながら、俺の等身大フィギュアの首に手をかけていた。


「あはは! 先輩の首、これくらい細いかな? ぎゅーってしたら、どんな顔するかな? 壊しちゃったら、私だけの宝物として飾っておけるのに!」


「……逃げる。今すぐ逃げる!!」


俺は必死にパイプを滑り降りようとした。 だが、恐怖で指先の感覚が麻痺し、足が空を切った。


ガシャン!!


プランターを蹴り飛ばし、派手な音が夜の静寂を切り裂いた。


「……あら?」 「……何の音かしら?」 「あは! 先輩、そこにいるの?」


一斉に三つの窓が開く。 見上げれば、月光を背負った三人の美女が、暗い瞳で俺を見下ろしていた。


「覗き見なんて……悪い子ね、悠真くん」 桜が、手にしたナイフを月光に反射させて微笑む。


「……いらっしゃい。ここがあなたの、新しい『お墓』よ」


俺の、そして地獄の50話(以上)にわたる女子寮生活が、今、最悪の形で始まった。

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