第3話 パーティー内の喧嘩はスライムも食わない③
「は?」
とんでもない解決方法を……。
いや、というか解決してるか……?むしろ悪化する気も。
「むしろハーレムにしてみたら?別に法律で禁止はされてないし。そしたら三角関係じゃなくて四角関係になるからお悩みは解決よ」
そんなトンチを求めてるわけじゃないんだよな。
お便りの主こと魔法使いさんの気持ちはどうするんだ。
話を整理して気付いたことがある。
もしこれが正しければ、俺もメリアもとんだピエロだ。ヒーラーさんと踊り子さんに笑われても仕方がない。
でも、だからこそメリアに秘密にしておきたい。相棒の勘違いをそのままにしておくのも、一般ギルド職員の優しさと嗜みだ。
……実は面白がってるとかじゃなく、本当に。なぁ信じてくれよ。
さてさて、「わかっていない」道化のまま終わるのも癪だから少しだけ踏み込むか。
「なぁ受付嬢さん」
「なぁに?ギルド職員さん」
こてん、と首を倒すメリア。
これが見られないリスナーに同情する。この受付嬢は、素のなんでもない仕草が一番かわいいのだ。
「俺からのアドバイスなんだけど」
「ふんふん、私が言ったやつ以外のやつね〜」
「魔法使いさん、もしかしたらすごい勘違いをしてるかもしれない。でもそれを俺が指摘してしまうのも、ちょっと違う気がするんだ」
「……」
数秒の沈黙。
「んー!わかんないわね!でもあなたがそう言うならそうなんでしょう」
彼女のいいところだ。
手を差し伸べれば必ず掴む。オールを渡せば好きな方向へ漕いでいく。
「間違ってるかもしれんがな」
「まぁまぁ!アドバイスなんて多い方がいいから言ってみなさいな」
こうやって場を回してくれるのはありがたい。
この狭い部屋には俺たちしかいないんだ、なんとか上手いことやっていかねばならない。
「……じゃあ遠慮なく。魔法使いさん、俺の勘違いじゃなければ、もっと戦士のこと見た方がいいかも。うーん、そうだな、たとえば次のクエストとかで」
息を吸い込む。
そもそも、そもそもだ。パーティーってのは命を預ける仲間だろう?
「あと、気になったことは勇気を持って言えばいいんだ、君たちはパーティーなんだから」
こんなもんでいいだろう。
ヒーラーさんと踊り子さんがこの放送を聞いているなら、きっと伝わったはずだ。
そしてあわよくば、メリアのいる窓口でクエストを受けてくれたら。
「ほぇ〜私にはなんのことかわかんないけど、よろしくね魔法使いちゃん!」
魔道具をミュートにして一息。
ここで一区切りだ。ずっと喋っていたから喉が悲鳴をあげている。
これが本業ならまだしも……いや本業なんだが、明日も朝から普通に仕事なの、何かのバグだろ。
「それじゃ、一旦CM入りまーす」
メリアはそう言うと、目の前の自分の魔道具をミュートにして他の機材のボタンを押した。
途端に流れ出す某商会や高名な冒険者の紹介。彼らはこの放送に出資してくれているのだ。ありがたい話やでほんまに。
こうやって経済が回ってるんだなぁ。
水で喉を労りながら、次のコーナーに備える。
とは言っても、残すは定例の話ばかりだが。
「じゃ、始めましょうか。オルフェ」
「お前それ絶対放送に乗せるなよ。名前バレ身バレなんかした日には仕事にならんぞ」
「はいはい気をつけるわ〜〜〜」
絶対反省していないであろう表情のメリアは片手間に、しかし勢いよくボタンを押した。
「はーいじゃあ明日のお得クエストの情報の時間よ!……ちなみにさっきのCM中、目の前のギルド職員さんは水を大量に飲んでこぼしてたわ」
「おい、嘘つくんじゃねぇ……ごほっ!」
突然大きな声でツッコミを入れたせいでむせてしまう。
これじゃあ本当に水をこぼしたみたいじゃねぇか。
「頭脳派受付嬢の印象操作よ」
「どっちかって言うと脳筋だろ」
「言ったなー!よし、今すぐ放送切って殴り合いね!」
「そういう所が脳筋だって言ってんだよ!」
こいつの怖いところは、放送でも現実でもテンションが変わらないところだ。
そのうえ日中は受付嬢をやってるんだから、バイタリティがすごいよな。身体強化魔法でも使ってるのか?
そりゃ脳筋だから使ってるか。
ちょっと失礼なことで頭を満たしながら口を開く。
「んで、明日からのお得クエストを教えてくれよ」
軌道修正。
こうやって暴走列車ことメリアをレールに戻さないと時間がいくらあっても足りないからな。
「はいはい、え〜っと、見た感じだとスライム系の依頼が多いからどこかで大量発生でもしてるのかしら。スライム狩りが得意な人にはうってつけね」
こうやって明日以降張り出されるクエストをフライング的に放送で流すから、きっと冒険者は聞いてくれるんだろう。
この企画を考えてくれた副ギルマスには頭が上がらない。流石頭脳派副ギルマス。一生着いていきます!
あの人ギルマスと違って優しいし。
「あとは王都近辺の森にゴブリンジェネラルが出てるって話も聞いたわ。初心者のみなさんはあんまり深く潜らないようにね〜一応窓口でも注意喚起するけど」
もちろんうちのギルドくらいの規模になれば、受付嬢なんて支部を合わせれば数え切れないほどいる。
どれがメリアかなんてわからないようにはしているが、そのうちポロッとバレるんじゃないかとヒヤヒヤだ。
「あぁあと、ロックバードはいつ狩ってくれてもいいからね!私もギルド職員さんもアレをツマミに飲むのが大好きなんだから!」
「俺を巻き込むな俺を」
「でもこれは本当だから」
「おい、さっきの水をこぼした話が嘘だって自白したな!」
「はっ……!」
こんなやりとりを挟みつつも、もういい時間。
あんまり遅くしすぎても、聞いてくれている冒険者たちの活動に支障が出てしまう。
「……そろそろいい時間だな」
やんわりと終わりを切り出す。少し寂しく感じてしまうのは、この放送に慣れてしまったからだろう。
「そうね〜じゃあリスナーのみなさん!今日もありがとうございました!」
疲れているはずなのに、明るい声を出すメリア。
きちんと座り直して、いつもの終わりの挨拶を。こういうのは最古が肝心だ。
「ありがとうございました!この放送は王都ギルド広報部の一般ギルド職員と」
「一般受付嬢がお送りしました!」
彼女が言い終わるのを待って、BGMの音量を徐々に大きくしていく。
最後に彼女と頷きあって、マイクの魔力を切った。
◎◎◎
こんにちは、七転です。
絶賛二日酔いの更新!産地直送、できたてほやほやの文章をお届けしました!
ひたすら主人公とヒロインが喋ってるの大好き。
そう、私は男女ssの生き残り……!
筆がノれば、本日もう1話更新します!
ではまた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます