第2話 パーティー内の喧嘩はスライムも食わない②

「『ギルド職員さん、受付嬢さんこんばんは。』はい、こんばんは〜」


「こんばんは!挨拶できてえらい!」


 パンッと手を鳴らすメリア。

 いいな、俺も挨拶で軽率に褒められたい。


「『私は王都で冒険者をしている魔法使い、18歳です。』ほぉ〜若いな」


「私にもあんな時期が……」


「悲しくなるからやめようぜ……続き読むな。『今まであんまり恋愛とかしてこなかったので最近やっと気がついたのですが、うちのパーティー内で三角関係が発生しています』」


「ほうほう!突然の胸熱展開だ!」


 まぁよくある話だ。

 娯楽がそこまで多くないこの世の中、冒険者パーティーとして活動していれば恋愛感情の一つや二つ、そりゃもりもり湧くだろう。


「好きよな〜そういう話」


 恋愛絡みの話になると、途端に食い付きがよくなるんだ。うちの受付嬢は。


「他人の恋愛話くらいしか娯楽がないのよ」


 どんな人生だよ。もっとこの世界を楽しんでくれ。

 ……かと言ってじゃあ娯楽を提供しろと言われても困るところではあるんだが。


「んでんで、続き読んでよ」


「っとそうだな……えーっと、『パーティーは私を含めて4人。戦士、魔法使い、ヒーラー、踊り子です。』……踊り子!?」


 彼女もぽかんと口を開けている。


 いや、偏見だとはわかってる、わかってるんだが。

 絶対この踊り子がキーマンだろ。

 戦士、魔法使い、ヒーラーって構成だと残りは盾役のタンクが入ることが多い。


 そこを敢えてバッファーの踊り子と。

 続きが気になって、思わず手元の紙に目を落とす。


「『それで、ヒーラーと踊り子がそれぞれ回復とバフをかけてくれるんですが、どうにも二人とも戦士にかける比重が高くて。』」


「でもそれだけだと三角関係ってわからないんじゃない?」


 メリアが口を挟む。


「実際戦士って矢面に立つわけでしょ?そりゃ怪我もしやすいし、その構成だとタンクも担ってるっぽいじゃない。じゃあバフもしっかり掛けないと」


 彼女の言っていることは一理ある。しかも推察するに物理系のステータスなのは戦士だけだ。

 だとしたら、きっと彼が耐えている間に魔法使いがぶっぱなすスタイルだろう。


 魔力を練ったり詠唱したり、魔法使いは何かと時間のかかる固定砲台だ。

 だとしたら回復やバフの比重も納得できる。実はめちゃくちゃ合理的なやり手パーティーなのかもしれない。


「確かに。その構成で生き残れてるってことは、割といい感じのランクのパーティーなんじゃないか」


 それは三角関係じゃないって結論で終わりそうなところ、ふと気になる文字が目に入る。


「待てよ……とりあえず最後まで読むぞ。『ヒーラーと踊り子で言い合いしていることも。馬車で移動する時も、2人がそれぞれ戦士に内緒話をしているのを見かけたことがあります。私としてはこのパーティーのみんなが大好きなので、なんとか三角関係を落ち着かせる方法はないでしょうか?』」


 一息に最後まで読んでふぅ、と短く息を吐く。

 顔を上げると、メリアが目を輝かせてこちらを見ていた。


 お、テンション上がってきたみたいだな。


「それはそれは!!流石に三角関係ね!踊り子ちゃんとヒーラーちゃんで戦士を取り合う姿が目に浮かぶようだわ」


「おうおう、さっきと真逆じゃねぇか」


「だって2人で言い合いしている姿も見てるんでしょう?なら流石に確定じゃない」


「……お便りにはそう書いてるな、まぁそれが戦士のことについてなのかはわからないが」


「わからないなら楽しい方向に解釈しといた方がいいのよ」


 ふんふんと鼻を鳴らすメリア。

 彼女なりの人生を楽しく生きるためのライフハックらしい。

 時々こいつの言うことにドキッとさせられる。実は人生2周目とかなんじゃないか?

 だったらさっさと結婚してるか、失敬。

 とんでもなく失礼なことを考えていたが、頭の中のメリアに合掌。


 きっと許してくれるだろう、同期で付き合いも長いし。特にこの一年は。


「うーん、魔法使いさん的には三角関係を解消してみんなで仲良くしたいんだよなぁ」


 現実世界の会話に戻る。


「気持ちはわかるわ〜、今まで4人で仲良くやってきたんだもんね〜」


 くそ、こんなところで恋愛経験の乏しさが憎らしい。

 俺が爆モテスーパーエリートギルド職員だったら……くそ、すまん魔法使いさん!


「今あんたしょうもないこと考えてるでしょ」


 ジト目がチクチクと刺さる。


「まさか!俺が爆モテスーパーエリートギルド職員だったらお悩みも瞬殺だったのになって」


「ほんっとしょうもないことじゃない。うーん……」


 腕輪を組んで彼女は少し目を閉じた後、落ち着いた声で話し始めた。


「私的には、選択肢が3つあると思うのね」


 指を3本天に向ける。だからリスナーには見えないんだって。

 なんだ、俺へのサービスか?


「1つは戦士に相談して収めてもらう、2つは成り行きを見守る、3つ目は……」


 メリアはニタァと悪戯っぽい笑みを浮かべる。あぁだめだ、これは悪いことを思いついたときのこいつだ。

 知ってるぞ俺は。今までどれだけ振り回されてきたか。


「あなたも混ざればいいじゃない」
























◎◎◎

こんにちは、七転です。

本日2話目!


この話が投稿されている頃、私は残業しているでしょう……(予言)

金曜日だから仕方ないね。


もしよかったら感想等々、ここやXで書いていただけたら嬉しいです。

ではまた、第3話でお会いしましょう。

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