三十路の限界アイドルを助けて死んだらそいつの自作ゲーム世界に転生してしまったのだが・・・しかもモブ
二見あい
第1話 変質者に刺されたのだが?
なんとなく満たされない。
数学の宿題を終えた僕は、
犬の散歩に出かけた。ただの日課だ。
すでに日は暮れて、
辺りが真っ暗になっている。
いつもの散歩コースを歩いていると、
どうしてか女性の悲鳴が聞こえてくる。
「やめてください! 近寄らないで!」
通りすがりの公園で、
見知らぬお姉さんが言い寄られていた。
お姉さんを囲む男はふたり・・・
冴えない変質者だ。
デブとガリの対極な体型でわかりやすい。
お姉さんはスマホを抱えて怯えている。
「つ、通報しますよ!」
脂ぎったデブはニヤニヤしていた。
骨っぽいガリはデブの後ろで強がっている。
怯える女性がひとりで気丈にふるまっても、変質者を喜ばせるだけだった。
ひとり歩きするには気弱なお姉さんだな。
辺りには他に誰もいない・・・
その時、犬がけたたましく吠えた!
デブがビクッ!? と肩を震わせて、
ガリが慌ててキョドキョドする。
(意外と小心者なんだなー? まあ夜にたむろして出歩く人間なんて、そんなものかな?)
自立心の無さをバカにして、僕は笑った。
そこでお姉さんと目を合わせてしまったのが運の尽き・・・
「あ、っーーーー」
切実な訴えは言葉にならなかった。
助けて! とは口に出さないけど、恐怖と動揺でとっさに言葉が出ないだけだとわかる。
「ワンッ!」
僕の代わりに犬が吠えた。
頼もしいやつだな。おまえはヒーローか?
僕、学生なんだけどなあ・・・
通報したなら警察を頼ってくれないかな?
だけど無視して立ち去るのは気まずい。
だから犬を連れて、公園に入る。
デブは、僕が子どもだとわかると調子を取り戻してふんぞり返った。ガリは、なぜか犬を見て威嚇している。こいつらバカだろ???
「qざwxscでrfvtgbyhぬjみk、おl。p」
変質者が、なにか人間の言語っぽい言葉を早口でしゃべっていたけど・・・発音が悪すぎてうまく聞き取れなかった。たぶん日本語だ。
こいつら、ふだんからロクに言葉を使っていないんだろうな? 言語能力に難ありだ。
「ワン! ワン! ワン!」
けたたましく吠える犬が、
敵意を持って変質者を威嚇した。
リードを放せば食ってかかる勢いだ。
デブはプルプル震えながら威張っていた。
ガリは・・・お犬さまの威光を恐れてくれればよかったのだけど・・・こいつはなぜか血眼になって叫び散らす。
「くゎzsxでrcftvgybふんじmこ、lp。!!!」
クスリでもキメていらっしゃる???
あきれ気味の感想は、半分くらい当たっていたのかもしれない。
叫び散らす変質者が、背負ったリュックから包丁を取り出したからだ!
ふつうの万能包丁だ。安そう。
しかし街灯を鈍く反射する金属の輝きが、僕の胸をヒヤッとさせる。
「ぐるる、うぅ・・・」
犬が警戒して唸った。
僕はリードを手放さない。
万が一、争いになって愛犬が包丁で刺されたりしたら、寝覚めが悪いからだ。
・・・そのとき、 視界のすみっこにパトカーのすがたが見えた。通報を聞いて、急ぎ駆けつけてくれたらしい。よし、勝ったな。
(正義は勝つ、ってことかな?)
目ざとくも、デブが逃げ出そうとした。
そこで僕は・・・
フッと笑って、リードを手放した。
さながら鎖から解き放たれた狼のように、猛犬がけたたましく襲いかかる!
警察官と犬のはさみうちにされて、デブがお縄になった。
しかしそこで誤算がひとつ・・・
包丁を振り回す変質者が、警察でも犬でも僕にでもなく、お姉さんに襲いかかった!!!
「っ、危な!?」
お姉さんはとっさに動けなかった。怯える彼女に駆け寄り、立ちっぱなしのお姉さんを突き飛ばす・・・まではよかったのだけど。
「qざwxscdrvftgbyhぬjみk、おlp!!!」
ほんとに日本人かおまえ???
耳障りな発声を嫌がる感想を最後にして、
僕の意識はプツリと途絶えた。
なぜかって?
思いっきり、腹部を刺されたからだ。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ぐ、ぐえー!? 死んだー!?
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