女子大生アリサの選択 AV出演の代償

みさき

AV出演の多くはハイリスクローリターン

大学三年生のアリサは、今、スマートフォンの画面を真っ青な顔で見つめていた。画面には、学生ローンの返済催促メールが三件も並んでいる。今月分の返済がまだだ、と。彼女の銀行口座の残高は、わずか三千円。来週の家賃さえ払えない。


「なんでこうなっちゃったんだろう…」


アリサはため息をつき、狭いワンルームのベッドに倒れ込んだ。両親からは毎月十万円の仕送りがあり、週二回のカフェでのアルバイトでさらに四万円ほど稼いでいた。本来なら、生活費と多少の交友費を賄うには十分な額だった。


しかし、アリサの浪費癖はそれを上回っていた。最新型のスマホ、友達との高級レストランでの食事、毎週のように訪れるファストファッション店での衝動買い。SNSに映える「充実した大学生活」を演出するために、彼女は必要以上にお金を使い続けた。気づいた時には、カードのリボ払いも限界に近く、手っ取り早く借りられる学生ローンに手を出していた。額は五十万円。親には絶対に言えない金額だった。


「何とかしなきゃ…」


焦ったアリサは、カフェのバイトだけでは追いつかないと悟り、求人サイトで「高収入・未経験OK」の募集を見つけた。それは、都心の高級クラブでの水商売の仕事だった。初めての接客業に戸惑いながらも、見た目が良かったこともあり、すぐに馴染んだ。時給はカフェの比ではなく、月に二十万円以上を稼げるようになった。


経済的に少し落ち着いたはずだった。しかし、収入が増えると、今度はそれに見合った「生活水準」を求めてしまった。ブランド品のバッグ、より豪華な外食、流行りのサブスクリプションサービス…。稼いだお金は、あっという間に消えていった。ローンの返済は滞り、利息だけが雪だるま式に膨らんでいく。


「こんなんじゃ、いつまで経っても終わらない…」


絶望感に押しつぶされそうになりながら、彼女はさらに過激な選択肢を探し始めた。非店舗型の風俗案内のサイトを見つけ、登録した。単価は確かに高かったが、仕事の内容や相手は毎回不安で、精神的に消耗するばかりだった。それでも、その場しのぎの現金が必要だった。


そしてある日、彼女の目に飛び込んできたのは、あるプロダクションからの「AV出演」の募集広告だった。太い文字で書かれたキャッチコピーが、彼女の脳裏に焼き付いた。


『一回限り・高額報酬・秘密厳守』


頭の中をその文字が駆け巡った。一回だけ。多額のお金。誰にも知られずに。これで全ての借金を清算できるかもしれない。曖昧なリスクの詳細は、目の前の「解決策」の輝きにかき消された。焦りと切迫感が、冷静な判断を曇らせた。


「…これで終わりにしよう。全部。」


そう呟き、アリサは応募フォームに必要事項を入力した。



数週間後。撮影は、彼女の想像以上に非情で機械的なものだった。約束された報酬は確かに高額だったが、手取りは思ったよりも少なかった。そして、後から明らかになったのは、その業界の厳しい現実だった。


「一回限り」のはずが、作品は半永久的に市場に出回り続ける。想定外のリスク。顔が知られるリスク、将来の就職や人間関係への影響、精神的ダメージ——は計り知れなかった。そして何より、その「高額報酬」は、制作側の莫大な利益と比べれば、出演者に支払われるのはほんの一部でしかないことを、彼女は後に知る。ハイリスク、ローリターン。いや、彼女にとっての「リターン」は、一時的な現金以外に何もなかった。


全てが終わり、振り込まれたお金は全て借金返済へ充てて、アリサは自分の部屋で呆然としていた。まだ少しだけ借金は残っているが、完済の見通しはたった。しかし、同時に消えたものもあった。何か大切なものを、深く傷つけてしまったような、取り返しのつかない喪失感。空虚さだけが胸に広がる。


スマホの画面には、また別の「簡単・高収入アルバイト」の広告が表示されていた。以前なら飛びついていたかもしれない。でも今は、指が震えてクリックできない。


彼女は窓の外の灰色の空を見上げ、ただ、つぶやいた。


「…困った。」


これは、出口の見えないトンネルに、また一つ、自分で新しい入り口を作ってしまったような気がした。そして、その先に光があるのか、それともさらに深い闇が待っているのか、彼女にはもう、見当もつかなかった。


AV出演の多くはハイリスクローリターン


親バレ、身バレ、就職、、恋愛、結婚、大げさにいえば、将来的に子バレの心配もつきまとう。


デジタルタトゥーの恐怖に怯えながら、出口の見えないトンネルに入ったアリサだった。

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