送信前の私
reika1021
第1話:朝靄に触れる日
画面の白さが、朝の光より先に目に入った。机の上の蛍光灯はまだ本気を出していなくて、窓のほうから滲む淡い明るさが、キーボードの縁だけを頼りなく撫でている。さとはコートの袖口を少しだけ引き上げ、スマートフォンを伏せたまま、息をひとつ深く入れた。深く入れたはずなのに、胸の中は軽くならない。
下書き。
その三文字が、今日は妙に刺々しい。書いてはある。用件もそろっている。添付もある。期限も明確。誰が読んでも迷わない文章だ。迷わないのに、送れない。送れないというより、送ったあとに自分がどうなるかを、身体が勝手に知ってしまっている。
画面の上で指が止まる。指の腹がガラスに触れる寸前で浮いている。触れれば、文字は相手へ届く。届けば、相手の時間に触れる。触れるという言葉が、仕事のはずなのに、恋のほうへ滑っていく。たったそれだけのことで、世界の重さが変わるのが分かるのが、もう嫌だった。
さとは文末を見た。句点の位置。語尾の硬さ。敬語の距離。いつもなら機械みたいに選べるのに、今は一つずつが、薄い刃のように手に残る。
よろしくお願いいたします。
ここで止まるのが一番安全。いつもの自分なら、そう決めて終わりだった。安全という言葉が出る時点で、今の自分が何かを守ろうとしているのが分かってしまう。守りたいのは関係だ。壊れたら困る。困るから守る。そういう理屈の仮面は、仕事の顔をしている。けれど、その仮面の下にあるのは、もっと生活に近い言葉だった。
あなたのことを考えない時間が減ってしまった。
その一文は、告白というより報告に似ていて、だからこそ残酷だ。相手に責任を渡してしまう。渡したくない。渡したい。どちらも本当だと認めた瞬間に、自分が少しだけ気持ち悪くなる。やめて、と心のどこかで言っているのに、やめられない。好きだと確信してしまった数日前から、ずっとそうだ。
数日前。
それがいつかは、時計で言えない。あのとき、という印だけが残っている。ビルの谷間の風が一段柔らかくなった帰り道だった気がする。歩道の端で、植え込みの土が雨のあとみたいに匂っていた。車の排気と混ざるはずなのに、土の匂いだけが勝っていた。さとはその匂いに足を止めた。ふと、スマートフォンが震えた。新井からの業務連絡。短く、要点だけで、余計な温度はない。
了解です。助かります。
ただそれだけ。いつもの文面。いつもの速度。いつもの距離。なのに、その日だけ、さとはそれを読む瞬間に、胸の奥がひどく静かになった。静かなまま、じわじわと重くなっていく。嬉しいとも違う。苦しいとも違う。ただ、認めざるを得ない何かがゆっくり落ちてくる。落ちてくるものの正体を、言葉にしたくなかった。言葉にすれば固まってしまう。固まったものは、元に戻らない。
それが恋だと分かったとき、楽になると思った。正体が分かれば対処できる。整えられる。整理できる。仕事みたいに。そう信じたかった。けれど、恋は正体が見えたあとに、別の顔をしてやってくる。分かったからこそ、分かりたくなかったことが分かる。言えば、相手の世界が変わるかもしれない。言わなければ、自分の世界だけが少しずつ狭くなる。
どちらも嫌だ。
嫌なのに、どちらかを選ぶことすら、まだできない。
机の端に置いたマグカップの陶器が冷たい。さとは指先で縁をなぞった。口をつけると、コーヒーはもう温度を失っていて、舌の上に苦みだけを残した。苦いのは嫌いじゃない。現実の味がする。現実を飲み込めば、恋のほうが薄くなるはずだと期待してしまう。期待という言葉に、また自分で引っかかる。
期待しない努力。
それを始めたのは、好きだと確信した翌日だった。返信の文が丁寧になりすぎていることに気づいた。送信前に、同じ一文を三回も読み返していることに気づいた。句点の前で呼吸が止まっていることに気づいた。気づいた瞬間、恥ずかしさで頬が熱くなった。誰にも見られていないのに。
だから決めた。期待しない。重くしない。仕事の関係として自然な距離を守る。守れるはずだ。守るのは得意だ。守るために、さとはこれまでずっと、言葉を整えてきた。
整える。
その動詞が、今は苦い。
文章を整えるほど、自分の内側だけがざらつく。ざらつきは喉に残る。喉に残ると、声が変わりそうになる。声が変わるのが怖い。職場の声は、誰にでも同じでいなければいけない。そう信じているわけではないのに、さとはそうしてきた。自分の感情を、仕事の場へ持ち込むことが苦手だった。苦手というより、持ち込むことで誰かの一日を乱すのが怖かった。
新井直樹は、同じ会社の別部署にいる。業務は隣接しているが重なりきらない。だから、連絡が必要なときだけやり取りが発生する。頻繁すぎず、途切れすぎず。距離を保てる構造。それが良かった。良かったはずだった。
さとは椅子の背にもたれた。背中に布が触れる。オフィスの椅子の布は、汗も温度も吸い込んで、いつも中立な顔をする。その中立さに、今日は救われる。
画面をもう一度見る。
件名はない。チャットだ。短く、必要なことだけ。余白を作りすぎない。相手の時間を奪わない。奪わないために、さとは余計な形容詞を削った。丁寧すぎる言い回しも削った。削ったのに、最後の一文だけが、どうしても決まらない。
よろしくお願いいたします。
これが最適解。仕事ならそうだ。でも、仕事ではない何かが、この文末の裏側で息をしている。息をしているから、さとは苦しくなる。
昨日のことが浮かぶ。
会議室の前ではなく、エレベーターホールだった。夕方、空がまだ青を残しているのに、ビルの内側だけ夜みたいに冷えた時間帯。床の石は滑らかで、靴底の音が小さく反響する。人の気配が多いのに、誰も互いを見ていない。視線を交わさないまま、同じ方向へ流れていく。東京の建物の中にある、あの無言の協調。
さとは腕に資料を抱えたまま、エレベーターの到着を待っていた。背中側で誰かが来る気配がして、振り向く前に、声で分かった。
「藤井さん」
新井だった。声はいつも通り。軽くも重くもない。きちんと相手の名前を呼ぶ。その呼び方が、さとの中でだけ少し意味を持ってしまう。
「お疲れさまです」
さとは言った。言いながら、口元が硬くなるのを感じた。笑うと距離が動く。動くのが怖い。怖いのに、相手がいると少しだけ顔の筋肉が緩む。緩むこと自体が、自分への裏切りみたいだ。
「この前の件、共有ありがとう。助かった」
「いえ。こちらも確認できて良かったです」
会話は業務の範囲に収まっている。収まっているのに、胸の奥だけが騒がしい。騒がしいというより、どこかが集中している。相手の言葉の端、息の抜けるタイミング、視線の落ち方。それを拾ってしまう自分の注意力が、仕事のときより鋭い。
新井は資料の角を指で押さえながら、ふと周囲を見た。ホールの端に立つ人の群れ。スマートフォンを見下ろす顔。遠くで鳴る到着音。音が鳴ったのに誰も驚かない。その無関心さが、さとには少しだけ羨ましい。
「今日は外、冷えた?」
唐突な問い。軽い。軽いはずなのに、さとには重い。重いのは質問ではなく、質問を投げてくる相手の余裕だ。余裕があるからこそ、余計な言葉を挟める。余計な言葉が挟まると、関係の境界が曖昧になる。曖昧になるのは怖い。曖昧なまま温度だけが上がるのが、一番苦手だ。
「少し。駅の辺り、風の向きが変わってました」
そう答えた自分に驚いた。もっと無難に、寒かったです、で終わらせればいいのに。風の向き。匂い。そういう細部を口にする癖が、最近強くなっている。新井がいると、なぜか細部が滑り出る。滑り出た言葉が、自分の感情の背中を押してしまう。
新井は一瞬、目を細めた。笑う直前の顔。笑わないまま、でも柔らかくなる顔。
「藤井さん、そういうの分かるんだね」
「分かるというか……なんとなくです」
……が口から出そうになって、さとは飲み込んだ。沈黙を文字にするのは許されている。でも会話の中でそれを見せるのは、まだ怖い。沈黙を見せれば、相手が覗き込むかもしれない。覗き込まれるのは嫌だ。覗き込まれたい。これも、両方が本当だ。
新井はそれ以上聞かなかった。聞かない。そこが彼の優しさで、同時に、さとの心を長く締めつける。踏み込まれないから、こちらは勝手に深くしてしまう。深くしてしまうから、言えなくなる。
エレベーターが開いた。中は混んでいない。新井が先に入り、さとが後から入った。二人の間に一人分の距離ができた。距離がある。あるのに、壁と壁が近いから、距離が濃い。狭い空間は、余計な感情を膨らませる。
数字のボタンを押す指が、新井のほうへ伸びる。さとは自分の階を言おうとして、言えなかった。言えなかった自分が、急にばかみたいで、でも言えなかった理由が分かってしまう。相手に自分の行き先を教えるだけのことが、なぜか、親密に感じられてしまったから。
新井が先に、二つの階を押した。
「上?」
そう聞かれて、さとは小さくうなずいた。声を出せば、声の揺れが出る気がした。揺れは恋の証拠みたいで、そんな証拠を相手に渡したくない。
エレベーターが動く。床の微かな振動が足裏に伝わる。東京の建物の中の振動は、いつも静かで、でも確実に身体へ届く。その確実さが、今は心臓の鼓動とつながってしまっている。自分の鼓動が、機械の動きに合わせてしまう。合わせることで落ち着こうとしている。落ち着こうとする自分が、もう落ち着いていない。
新井が、さとのほうを見ないまま言った。
「最近、忙しい?」
普通の質問。普通の言葉。職場で何度も交わされるやつ。さとはそれに答える準備ならいつでもできる。できるはずなのに、喉の奥が少し乾いた。
「まあ、いつも通りです」
自分で選んだ無難な答え。いつも通り。その言葉は、関係も固定する。これからも同じでいたい、という呪文にもなる。さとはそれを口にしながら、自分だけが変わっていくのを止められない。
新井は小さくうなずいた。
「そっか。無理しないでね」
無理しないでね。
その一言に、さとはほとんど反射で笑いそうになった。笑うと崩れる。崩れると見える。見えると、終わる。終わるという言葉の意味が、何なのか分からないまま、さとは笑わなかった。笑わずに、うなずいた。
エレベーターが目的の階に着いて、新井が先に降りた。さとはその背中を見た。背中は何も語らない。語らない背中に、こちらは勝手に意味を足してしまう。足してしまう自分の癖を、最近はもう否定できない。否定できないなら、せめて行動を抑える。期待しない。重くしない。そうやって、自分の中でだけ、つり合いを取ろうとする。
その帰り道、さとは駅のホームで新井を見かけた。見かけただけだ。声をかけなかった。かけなかった理由は、簡単に言えば仕事外だから。けれど本当は、声をかけたら、声をかけた自分の中に何かが生まれてしまうのが怖かった。仕事外の新井を知ること。知ったら、戻れない気がした。
その夜、さとは布団の中で、スマートフォンの画面を何度も点けたり消したりした。通知は来ていない。来ていないことに、安心してしまった。安心する自分に腹が立った。腹が立つのに、また画面を点けた。自分の顔が薄く映る黒い画面を見て、何かに負けたみたいな気分になった。
そして今朝、送るべき連絡がある。
それだけなのに、指が止まる。
さとは椅子から立ち上がって、給湯室へ向かった。歩くことで、頭の中の水が少しだけ動く。廊下の空気は乾いていて、紙の匂いがした。コピー用紙の匂い。インクの匂い。人の手の匂い。会社の匂い。東京のビルの匂い。どれも生活の匂いだ。生活の匂いが、恋を押し込めてくれると思ってしまう。
給湯室でポットの湯気を見た。湯気はすぐに消える。消えるものを見ていると、気持ちも消える気がする。消えないのに。さとは新しいコーヒーを入れた。粉が濡れる瞬間の匂いが濃い。濃さは短い。短いから、余計に意識してしまう。意識することが、恋の癖と似ている。
席に戻る途中、窓際の通路で外を見た。東京の空は、晴れているのに白っぽい。雲があるわけでもないのに、遠くの輪郭だけがぼやける。高い建物が重なって、空の面積は細く切られる。切られた空は、どこか落ち着かない。落ち着かないのに、見てしまう。見てしまうのは、自分の中の余白を確かめたいからかもしれない。余白があると、そこに新井の存在が入ってくる。
さとは席に戻り、画面を開いた。下書きの文章は、まだそこにある。逃げても消えない。消えないものを相手へ渡すのが、今のさとの仕事だ。
彼は、変わらない。
返信は安定して早い。短く要点を返す。必要以上に余白を作らない。絵文字も入れない。文章に熱を乗せない。そういう人だ。だから、さとは安心していた。安心していたのに、今はその安定が、さとを苦しめる。変わらない相手に対して、変わってしまった自分が浮き上がる。
浮き上がるのを隠すために、さとは文字を整える。整えるうちに、整えた文字が、逆に自分の揺れを照らす。照らされると恥ずかしい。恥ずかしいのに、目を逸らせない。恋はこういうところがある。正体が見えたあとも、逃げ場が増えるどころか、減っていく。
送信すればいいだけ。
送れば、この止まっている時間は終わる。
終われば、少し楽になる。
そう思ってしまう自分が、もう甘い。甘いのに、甘さがないと生きられない感じもある。仕事だけで生きていけると思っていた。思っていたというより、そういうふうに生きてきた。恋愛は生活を乱さない範囲で。そう決めていた。決めていたのに、乱れている。乱れは外から見えない。見えない乱れは、内側だけを削る。
削られている感覚を、誰かに言えない。
言えないのは、相手の世界を重くしたくないからだ。新井にとって、さとは職場の感じのいい人であるべきだ。話しやすい人であるべきだ。連絡がきちんと来る人であるべきだ。そういう役割は、さとにとっても心地いい。心地いい役割が壊れるのが怖い。壊れなければいい。壊さなければいい。そのために、言わない。
言わない優しさ。
その優しさが、いつか自分を刺すことも、どこかで知っている。知っているから、なおさら、言えなくなる。矛盾が増えていく。矛盾が増えるほど、心の中が散らかる。散らかった部屋にいるみたいで落ち着かない。落ち着かないのに、散らかっているのを見られたくない。だから黙る。黙るほど、散らかる。
さとは、文末にもう一度手を入れた。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
丁寧すぎる。削る。
よろしくお願いいたします。
戻す。戻した瞬間、胸が少しだけ締まる。締まるのは息のせいだけじゃない。文章は正しい。正しいのに、正しいことが、恋の匂いを強くする。隠しているつもりが、隠していること自体が恋の証拠になってしまう。
さとは自分に問いかけた。何が怖いの? と。問いかけの答えは、すぐ出る。返事が来るのが怖い。返事が来ないのも怖い。どちらも怖いのに、どちらも欲しい。欲しいという言葉が出るたびに、心が少しだけ下品になる気がする。恋は人を下品にするわけじゃない。ただ、普段しまっている欲を露出させる。
その露出を、さとは自分で見たくない。
画面の右上に、既読の表示はまだない。送っていないのだから当然だ。まだ送っていない。まだ。まだという言葉が、時間を引き延ばす。引き延ばすのは癖になる。癖になると、送る前の時間が増える。増えれば増えるほど、心が疲れる。疲れると、職場の顔が薄くなる。薄くなるのは怖い。薄くならないように、また整える。
さとは小さく笑った。自分が滑稽だと思った。滑稽だと思えるのは救いだ。でも救いの形が、こんなところにあるのが嫌だ。嫌だと思うのに、笑ってしまう。笑うと少しだけ息が深くなる。深くなると、指が動く準備ができる。
隣の席の同僚が、資料をめくる音を立てた。紙が擦れる音。乾いた音。さとはその音に、今いる場所を思い出させてもらう。ここは仕事の場所。恋の場所ではない。恋の場所ではないから、送れるはずだ。送っていいはずだ。送ることは仕事だ。そう言い聞かせる。言い聞かせている時点で、もう普通ではない。でも普通じゃないことが、さとにとっては現実だ。
指が、画面に触れた。
触れたまま、止まった。
最後にもう一度、全文を読み返す。読み返すのは、誤字脱字を探すため。そう自分に言う。実際には、感情の漏れを探している。漏れていない。漏れていないのに、漏れている気がする。気がするのは、自分が漏れているからだ。自分の中で。
送る。
さとは送信した。
画面がひとつ上に滑り、送った記録が短い塊として残った。残った瞬間、心のどこかが少しだけ空になった。空になったところへ、すぐに別のものが入ってくる。新井が読む。新井が返す。返事が来る。来ないかもしれない。来ないかもしれない時間を、さとはもう想像してしまっている。
想像は、仕事の役に立たない。
でも恋の中では、想像が勝手に増殖する。増殖する想像を抑えるために、さとはマグカップを持ち上げた。今度は温かい。温かさが指先へ染みる。指先の温度が戻ると、身体も戻る気がする。戻る気がするだけで、戻らない。戻らないのに、温かさがあるのはありがたい。ありがたいという言葉が、また甘い。甘さを飲み込んでしまう。
通知は、まだ来ない。
来ないことに、ほっとしてしまう。ほっとしてしまう自分に、同時に苛立つ。苛立ちも、恋の一部だ。恋の一部だと認めたくないのに、認めてしまったところから、苦しさが始まっている。
仕事の画面へ戻る。別の資料。別の修正。別のメール。別のやり取り。日常は動く。動くのに、さとの中だけ、さっき送った短い文章の残像が消えない。文字はもう、自分の手を離れている。離れているのに、まだ指先に残っている感じがする。押した瞬間の感触。息が止まった瞬間の薄い痛み。
このまま、何事もなく一日が過ぎるなら、それが一番いい。
そう思ってしまう。
思った瞬間に、心のどこかが小さく反発した。何事もなく過ぎるのが一番いいなら、恋なんて、最初から始まらなければよかった。始まらなければよかったと思うほど、始まってしまったものが確かになる。確かになるほど、また言えなくなる。
さとは目を伏せた。伏せた視界の端で、スマートフォンの黒い画面が光を吸っている。あそこに通知が出る。出たら、さとはどんな顔をする? どんな声で返す? どんな文章を選ぶ? 今よりもっと丁寧になる? それとも、わざと素っ気なくする? 素っ気なくするのは、自分の気持ちを守るため? 相手の気持ちを守るため?
守るという言葉が、また出てくる。
守りたいものがある。
それが恋の始まりではなく、恋が始まってしまったあとの話なのだと、さとはもう知っている。知っているから、今日も普通に働ける。知っているから、今日も苦しい。苦しさは、胸の奥に小さく居座り、誰にも見えない顔をしている。
画面の隅に、さとの送った文章がまだ見えている。短い塊。仕事の塊。その塊の中に、自分の生活が少しだけ混ざってしまった気がして、さとは目を逸らした。逸らしても、消えない。
通知が来ない時間が、少しだけ救いで、少しだけ罰だった。
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