晴れ時々雨
満月 花
第1話
「狐の嫁入りって言うんだよ」
昔、幼い頃おばあちゃんが教えてくれた。
晴れている空から、雨が降っていたあの日。
私は子どもながら想像してた。
キラキラとした衣装で狐が結婚式をする光景を。
「見たい、狐の嫁入り見てみたい」
ふわふわの毛並みのお嫁さん可愛いだろうなぁ、
とワクワクしていたら
おばあちゃんはちょっと怖い顔をしてみせた。
「狐の嫁入りは絶対に見てはいけないんだよ。狐さんは怒ると怖い事するかもよ?」
そう言って両手をあげて、ガァオーって言ってくる。
私は声を上げて逃げるふりをした。
おばあちゃんが笑いながら、ガオガオ言って私を追いかけてくる。
ひとしきり遊んだ後、おばあちゃんは私をギュッと抱きしめて
「いつか、ゆきちゃんの花嫁姿見たいね」
それがおばあちゃんの楽しみだよ、と微笑んだ。
おばあちゃんは面白くって楽しい人だった。
おやつを手作りしたり、散歩しながらも花や小さな生き物を捕まえては見せてくれる。
そんな穏やかで優しい時間が私は大好きだった。
母親は、元気すぎて困るとため息ついてたけど。
なかなかアクティブな人らしく、周りはいつもハラハラしていたとか。
孫ができてやっと丸くなった、なんて言っていた。
おばあちゃんの所に行くたびに
春には桜
夏には花火
秋には紅葉
冬には雪遊び
四季を通して、どんな時にもおばあちゃんは楽しい。
そして、晴れた日の雨降りにはいつも狐の嫁入りの話をする。
おばあちゃんの少しカサついた手を握りしめて田舎道を歩いた。
そして、そんな私も花嫁衣装を着る時がやってきた。
晴れた日なのに、ときおりパラパラ雨が降る。
「狐の嫁入りだね、きっと祝福してるんだよ」
誰かがそう言っていた。
おばあちゃんに見せたかった。
あんなに私の嫁入りを見たいと言っていたのに
今、この祝福の場におばあちゃんはいない。
あんなに元気だったのに。
まさか、結婚式の二日前に足を挫いたなんて。
健康がとりえと豪語したおばあちゃんが
ゲートボール中に足首を派手にグキッとやった。
骨折こそしなかったもののかなり腫れたらしい。
「しばらく安静に、ここで無理すると本当に骨折する」
と医者に怒られた。
孫の結婚式には絶対に出る!とごねたらしい。
でも高齢である事と、遠方ゆえに飛行機から電車はかなり無理が出る。
親戚みんなで泣き落としで説得。
私はスマホの画面に手を振る。
せめて晴れ姿を見たいと言うおばあちゃんの強い要望で
動画通信で繋がっている。
「ゆきちゃん、本当に綺麗だね。三国一の花嫁さんだ」
おばあちゃんが涙ぐんでいた。
外は狐の嫁入り
サラサラした雨が優しい。
私はプーケを手にして微笑んだ。
晴れ時々雨 満月 花 @aoihanastory
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。晴れ時々雨の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます