猫を飼ったら霊障が起きた話
彁はるこ
猫を飼ったら霊障が起きた話
猫を飼ったら、霊障が起きた話を聞いてほしい。
その猫は、仕事帰りにコンビニ近くの路上で見つけた。
骨の形が分かるほど
ダニが原因の皮膚病の、
猫風邪も引いてるのか、目ヤニと鼻水でドロドロの顔は不細工を通り越して化け猫のように不気味だ。
昔飼っていた猫が、猫疥癬になったことがある。
あれくらいなら注射と駆虫薬できれいに治る。猫風邪だって目薬をきちんとしてやれば問題ない。
未経験者には大変だろうが、私は経験者なわけで……気付いたら我が家にお迎えしていた。
連れ帰ってしばらくは何事もなく平和だった。
猫疥癬も猫風邪も治り、体重も平均より少し重くなった。お風呂にいれたら、黒猫じゃなくて白猫だと判明した。
届けを出していた警察から連絡がきて、猫が完全に我が家の一員になった頃――
問題が起き始めた。
洗面所の電気が使っていないのに点いている。
夜中、誰もいないはずの廊下で足音がする。
金縛りにあうことも増えた。
たくさんの気配と視線も感じる。
ただし、私が見られている感じじゃなくて……うまく言えないけど、ちょっと変だった。
一番奇妙だったのは猫の反応だ。
なにもない空間を見つめて小さく鳴く。尻尾を立てて、まるで誰かに挨拶するように。
さすがに不安になって、霊感のある友人を家に呼んだ。
彼女は猫のいるリビングに入るなり、目を丸くした。
「……すごいね」
私は身構えたが、彼女はまずソファで寝ている猫を撫でに行く。
うちの猫は人懐っこい。知らない人がきても、逃げも隠れもせず、むしろ構ってほしいとアピールする。
まん丸になった腹を出して、ゴロゴロと喉を鳴らす姿に誰もが虜になってしまう。
つまり、うちの猫は『人たらし』だ。
「原因は、この子だね」
彼女は猫を撫でながら言った。
「猫が可愛すぎて、近所の霊が集まってる。みーんな猫を見てるよ」
「え、害は……?」
「ないない」
彼女に撫でられた猫は、満足そうに腹を出して喉を鳴らす。
そんな、まさか……。
私は恐る恐る
「うちの猫は、幽霊までたらし込んでるってこと?」
「そういうこと」
私は言葉を失ったが、彼女は楽しそうだ。
「害どころか、むしろ猫のために守ってくれてるよ」
その瞬間、肩の力が一気に抜けた。
確かに、霊障と言っても嫌な気配はなかった。金縛りもすぐに解けるし、私を怖がらせる気配も、怒りも、恨みも、なにも感じない。
ただ賑やかなだけだった。
「猫好きに悪い人は……いや、悪い幽霊はいないよね?」
それ以来、私なにも気にしなくなった。
足音がしても「見にきてるのかな」と思うだけ。
どうやら私の家は、猫好きにとって居心地のいい場所らしい。
今日も猫はなにもない空間に向かって喉を鳴らしている。
猫を飼ったら霊障が起きた話 彁はるこ @yumika_ka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます