第24話 未知の影


隠し通路を抜けた先。

クロウの視界は暗く湿った広間に広がる。

通常ルートとは明らかに違う、異質な空間。


《空間把握(狭)》が反応する。

床や壁の微細な振動、空気の密度、魔力の流れ。

すべてが、未知の規格外の存在を示していた。


(……普通じゃない)


足音ひとつ立てず、クロウは短剣を握り、周囲を見渡す。


#### 規格外モンスターの出現


広間中央に、背丈二メートルを超える魔獣が鎮座していた。

全身は黒曜石のように光る鱗で覆われ、目は深紅に輝く。


《遅延感知》が一気に振動する。

圧倒的な魔力と行動予測不能な動き。

過去に出会ったどの敵よりも、規格外だ。


クロウは深呼吸し、観察に徹する。


・ 足の動きと重心の変化

・ 腕の振り方と剣の軌道に似た攻撃パターン

・ 魔力波動のタイミング


《蓄積変換》で前回の失敗や成功をリソースに変換。

戦いながら次の行動を決めるための準備が整う。


#### 戦術の試行


クロウは攻撃を仕掛けず、まずは誘導と牽制を選ぶ。


・ 床の段差を利用し、魔獣の動きを制限

・ 《微調整》で攻撃の隙間を最小限にし、反撃のリスクを回避

・ 《遅延感知》で動きのパターンをリアルタイムで蓄積


一撃を受けることなく、広間の半分を安全に確保。


(……このままでは倒せない。だが、制御は可能だ)


攻撃ではなく、動きを封じる戦術。

クロウは小型ボス戦での手法を、より複雑に応用する。


#### 緊迫の交錯


規格外モンスターが咆哮し、空気を振動させる。

その衝撃波で壁や天井が微かに崩れる。

だが、クロウは《微調整》《空間把握(狭)》で軌道を修正。

攻撃を受けながらも、情報を蓄積し、次の一手を導き出す。


魔獣は力で押しつぶす戦いを仕掛けてくる。

だがクロウは逃げず、観察と誘導の連鎖を止めない。


広間は緊張で張り詰め、クロウとモンスターの間で時間が止まったかのように感じられる。


#### 心中の決意


息を整え、クロウは心の中でつぶやく。


(……倒す必要はない。

 勝ち筋は制御と情報の確保にある)


力で勝つことができなくても、

スキルと観察で状況を支配する。

それこそが、最弱判定の冒険者が切り拓く道だ。


クロウは短剣を握り直し、魔獣の動きに合わせて静かに一歩前に出る。


隠し階層――未知の規格外モンスター。

クロウにとって、真の試練の幕開けだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る