ハーレムエンドの成れの果て

ミズノトアミ

序章

 兄は屑だ。


 徐々にわたしの中に芽生えたこの想いが何時生まれたのかと言えば、姉妹たちのうち、既に四人が犠牲になっていたことを、遅まきながら気づいた夏休みの午前のこと。

 

『口』型の家の連なり。

 ホテルや学校のような独立した建物ってわけじゃない。口の一辺一辺に計十棟の家が並び、大きな口型を作っている。小規模なコミュニティと言えば多少想像がしやすいか。

 この『口』型の家を取り囲むようにして、背の高い塀が建っている。一軒一軒が独立していても、南の正門からしか入ることができないっていうのがこれを作ろうとした製作者のこだわりである。

 真ん中は中庭として皆に解放されており、正門から続いている。


 ――この奇妙な家の連なりがわたしたち境家大家族の住む家である。


 世間周囲なんかでは『蜜月館(みつげっかん)』と呼ばれていたり。蜜月の意味するところから、わたしなんかは差別的ニュアンスを感じ取ってしまうけれど。その館の主が気に入っているからね。

 文句は云わないよ。

 楽しんでいるし。

 傍から見るととても歪な、だけどわたしたちにとっては当たり前な居場所。

 正門から入った風は中庭で滞り、澱み、解れ、一帯に饐えた香りを巻いて漂わす。その空気に当てられたわたしたちは、知らず世界の中心がここであるかのように錯覚し、世間を俗界と呼び、妙な自分ルールで線引きをしてしまう。何故この至上の喜びを理解できないのか、しようとしないのか。嘲り蔑むのか。引きこもることでがんじがらめになり、それがまた家族の結束力を高め、わたしたちはより強い絆を得る――。

 ……なーんて言ってみたところでさ。実際、めんどうなだけだよね。こんなの。

 本人たちは幸せかもしれないけど。

 わたしたち、子世代にはさ。さ、

 さっさと始めますか。

 ハーレムエンドの成れの果て。

 開幕しま……あっ! ハーレムエンド目指してる人の為に一応言っとくよ(そんな人がもしいたらだけど)。わたしたち、子供たちのこと、見てからにしてあげて。

 お願いだから。

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