快晴の空が、海に見えた日。

ともゆり

二月の午後四時


僕は露天風呂に入りながら、冬の快晴の空を見上げていた。


とても綺麗な空だ。

雲ひとつない空に、ちょっぴり「夜の青」を垂らしたような水色が、目の前いっぱいに広がっている。


お風呂に入りながら、僕はぼーっと、その空を眺めていた。


海みたいな色だな、と思った。

ちょっぴりの「夜の青」がそう思わせる。

深みのあるこの色の底に、

僕は吸い込まれてしまいそうだ。


……あれ? 


僕は、どっちが天で、どっちが地なのか、よく分からなくなってしまった。


これは海?

これは空?

僕は?


気がつくと僕は、重力の紐に足をくくられて、逆さまに吊り下げられていた。

目の先にあるのは……海だ。


こわい。

重力の紐、ほどけないで!

こわい。

深い、深い海の底に、落とさないで!

こわい。

あの底には、何があるの?

こわい。

もし、あの底に落ちてしまったら、

僕は……死ぬのかな。


こわい、こわい!

鼓動が、どんどん早くなる。恐怖で、口から心臓を吐き出してしまいそうだ。


もう、無理!!そう思って目を瞑った。


目を開けたら...


温泉のお湯だった。


……ああ、幻想か。


現実に戻った。

そのとき。

僕は、幸せだな、と思った。


僕の目線からは、

海も、空も、どちらも

美しく見えるからだ。


僕は、海の目線を知らない。

空の目線を知ったからこそ、

僕が見ているこの美しさを、

海に押しつけたりはしないし、

空が見ている怖さも、

僕は、否定したりはしない。

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快晴の空が、海に見えた日。 ともゆり @yuri0428

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