貞操逆転世界ならコミュ症でもクール系病弱美少年でいけるらしい 〜あっ!隠してやってた裏垢のエロ自撮りがバレたぁ!?〜
しゃふ
第1話
朝、目が覚めると世界がバグっていた。テレビに映る人は女の人ばかりで、好きだったアニメの主人公はTSしてるし、ヒロインは男にセクハラしまくる痴女へと変わっていた。
――貞操逆転世界。前の世界の僕の知識をフル動員させて考えた結果、この現象はそう結論づけられることになった。
創作物の概念としては知っている。男女比が大きく女性側に偏った世界で、自分だけモテるようになった男がキャッキャウフフするやつだ。主人公がモテることへの説得力を上げるため、世界の方を改変するという、まぁ、なんとも大胆な発想である。
もちろん。そんなのは与太話にしかすぎず、願望というには、あまりにも欲が出過ぎてるそう思っていた。
――でも、実際にそうなっちゃったなら仕方ないよね。うん、貞操逆転万歳。
ということで、僕もそのビッグウェーブに乗るしかない。
実際、この世界の男女比はだいたい1:20。外を歩けば女性の群れに飛び込むことになるだろう。
そう。――外を歩けばだ。
一つ問題があった。それはこの僕の環境だ。
そう。僕、日浦渚は高校生になって早数か月、一度も学校に通ってない引きこもりなのだ!
そんな僕が外にでる?
外にでて家族以外と話すことなんて、半年以上してないこの僕が?
――無理ゲーすぎる。
……神様。転生させる人間違ってませんか。
いやでも大丈夫。だってこういう世界の鉄板は男というだけで希少価値がどうとかで女の子が押し寄せてくるのだ!
だからこうやってゴロゴロしてればきっと、あっちの方からやってくるはず……だ。
そう……ゴロゴロ、と。
そう思って、僕はこれまでと変わらない生活を数週間行った。
一日中パソコンの前でネットやゲームに浸かって、昼夜逆転を十回くらい繰り返した結果、一周回って健康的な生活になるくらいに。
そしてその結果、数週間後の僕は――
家に引きこもってTw〇terの裏垢で裸を晒していた。
「……はて、どうしてこうなったんだ」
いやまあ理由は分かるよ。だって変わったのは世界の方で、僕自身はまったく成長していなかったんだから。
この世界にやって来てからの引きこもり生活、その中で貞操逆転世界、というのを認識するような出来事はまったくなかった。
強いて言えば、素っ気なかった姉貴がべたべたしてくるくらいで、なんならそれ自体はマイナスまであった。うざいし。
そして、変化を求めた結果、僕が行き着いた先は……それがインターネットである。
ネットの海に溺れた僕は……そこで理解ってしまう。――この世界の男子高校生というのが、すごく需要があることに。
若い男であるという事実だけで、まるで神様扱い。大量の支持を集めている彼らの姿を認識してしまった僕はすぐにSNSのアカウントを作成。
そのままネットの声に乗せられるがままに……とうとう自分の身体をネットに上げるまで堕ちてしまった。
「……いや、だって、うれしかったから」
ろくに承認欲求を満たす手段がなかった僕にとって、SNSというのは劇薬と言っても良い存在だったのだ。
まあ、自撮りをネットに上げることにはちょっと抵抗があったけど、顔さえ写ってなかったらセーフの精神でそこは乗り越えた。
そして……あんまり過激すぎると流石に消されるのでぎりぎり犯罪にならないくらいのラインを攻め続けながら投稿を続け――
――現在の僕は三万人のフォロワーを抱える立派な裏垢男子、『日陰』と変身したのだ!
……こうやって服をめくって、写真を撮るだけで――ほら、すぐリプライがきた。
『日陰くん今日も滅茶苦茶えっちで最高です!」
『やばい、好みすぎるこの子』
『ひーくん、可愛い』
ぐへへ、めちゃくちゃチヤホヤされるぜ。さいこう。
――もちろん、この行為は現実逃避にしか過ぎない。結局のところ、僕という存在は変わっていなかったのだ。なんなら悪化している気がするし。
「うぅ、いいもん。僕にはネットのみんながついてるから……」
そんな現実から目を背けるため、スマホの画面に目をやる。いつものようにSNSのフォロワー数を眺めていると、気づく。
……お、何か返信来てる。
そう思い、通知欄を見てみると――
『こんな不登校の人生終わってる高校生に欲情してるやつらまじでやばいよ」
「ぐはーっ!」
まずい、心がやられた。いつもチヤホヤされてばっかだから心の強度が下がってやがる……この程度のコメントでここまでダメージを喰らうとは。
ぐ、こんなアンチコメなんて……き、効か……な……。
「――いやまあ、人生終わってるよなぁ……これ」
……自分でも分かってる。このままじゃいけないことは。前の世界からずっと、このままじゃいけないと分かっていながら、行動が出来なかった。
――おそらくここで行動しなければ、僕は一生この部屋から出ることはないのだろう。
そうだ、本当にいいのか。
一生P〇YP〇YとAm〇zonの欲しいものリストを乞食しながら生きていく人生でいいのか!?
そう思った瞬間、ふとスマホの通知がピコンと鳴った。
「――あっ、玲衣だ!」
僕のスマホの通知音。それが鳴る相手は、彼女しかいない。
このアカウントを閲覧する人は、そのほとんどが男子高校生というブランド目当てでやってくる。
いわゆるエロ目的というやつで、そういう人たちは僕という人間には興味がない人ばっかりだ。
でも、彼女だけは違った。
玲衣は僕が自撮りを上げる前から関わりがあった子だ。他の子の仲の良かった子たちがドン引いて消えてく中、唯一彼女だけは残ってくれた。
自撮りのこととかに一切触れてこないところを見るに、たぶんそういうのに興味がないんだろう。
僕にとって、たった一人の友人と言える存在。そして、心の拠り所とも言える存在が彼女であった。
『今通話できる?』
死んだ心の癒しを求めてか、僕は彼女とボイスチャットをつなげることにした。あまり大きな声を出すと姉に聞かれるので、小さな声で。
「あー、声聞こえる? ごめん、急に話したくなって」
「うん! ちゃんと聞こえてるよー。なになに、話したいことって!」
玲衣はいつものように、少し高めの無垢なその声を響かせる。聞いてるだけでこちらの荒んだ心が洗われる、まさにそんな風に思えた。
「いや、別に何かを話したいとかじゃないんだ。ただ、その、声が聞きたくなっただけというか」
「へー、そうなんだ。
――ごめん、ちょっと嬉しすぎて大きな声でるかも。やばい」
「もう、大げさだって」
「いやいや、これが普通だって」
……できるなら、このままずっと彼女と話していたい。お互い話題に尽きたら、ゲームでもして、眠くなったらそのまま一緒に眠って、また起きたら、話をして――
彼女と話す時間はこの引きこもり生活で唯一、嫌なことを忘れられる時間だった。
――でも、これじゃダメだ。いつまでも、玲衣に頼っていては。
僕は意を決して彼女に問いかける。
「……玲衣ってさ、学校でどんな感じ?」
「え、なに突然……?」
少し、彼女の声が硬くなる。もしかすると、あまり聞かれたくないことだったのかもしれない。
……そういえば、玲衣とリアルの話をすることは少ない。もちろん、僕自身が話したがらないってのもあるだろうけど。
「えっと、……普通?」
「……そっか」
――普通。その言葉が僕の頭に重くのしかかる。
僕と同い年の彼女にとって、学校というのは行って当たり前のものなのだ。
そんな現実を直視するのは辛いことで――でもそれから逃げることがもっと辛いことだということはこの数か月で分かっている。
だから、変わらないといけないんだ。
「友達、いっぱいいるよね。玲衣って優しいし」
人付き合いとか、そういうのは苦手だけど、僕も玲衣みたいに――
「いないよ」
……えっ?
玲衣から帰ってきた言葉、それは僕にとって意外なものだった。
「……学校の友達なんて、嫌い。いつも面倒ごとばっか押し付けてきて、誰も私のことなんて見てくれないから」
その言葉は重々しくて、いつもの明るい様子の彼女からは考えられないものだ。
でも、次の言葉が放たれるとき、その声色はいつの間にか別のものに変わっていた。
「だからね
――私の友達は日陰くんだけ」
少し、照れくさく感じる彼女の言葉。それは僕の心を優しく包み込むように、安らぎを与える。
……そうだ、僕には玲衣がいるんだ。
「――よし、決めた! 僕、来週から学校行くよ」
「えっ?」
「行くったら、行く! 不登校は今日でおしまい!」
正直不安なことばかりだけど、でも。
きっと玲衣なら、僕が失敗したとしても、見捨てずにいてくれるだろうから。
だから、大丈夫。
「……行くぞ、学校」
合法児童ポルノ乱造機としての生活はもうおしまいだ。僕は真人間としてこの世界に降り立つ。
……でも、一旦は情報収集だ。この世界が学校がどうなのか、イマイチよく分かってないし。
そう思って、机に置いていたスマホを掴んだとき、ふと画面の隅に映った広告が目に入る。
なになに……美少年ゲーム?
ふむふむ、どうやら美少年が溢れる学園で夢のスクールライフらしい。
なんともこの世界らしいというか、まぁ前の世界ならこの性別が逆転してたんだろうなってことは容易に想像できる。
……"スクール"ライフか。
やってみてもいいかもしれない。この世界の学校について知ることはできるだろう。
幸いお金は沢山ある。この機会に色んな学園もののゲームをやってみよう。
そう思って僕は、パソコンの前に座った。
そしてそのまま三日三晩、美少年を攻略することに費やすのだった。
かんぜんにりかいした。
現在は土曜日……と思ったがいつの間にか日付が回っていたので日曜日。明日にもなれば学校に行くことになるこの日。
僕はとうとう全ての美少年を攻略することに成功した。長かった、非常に長かった。
そして、僕はこの世界における学校での生き方、それを発見することに成功した。
そう、僕はそのためにこのゲームをプレイしたのだ。決して野郎同士が乳繰り合う姿を見たかったわけではない。まったく、BLゲーでもないのになんであんなにホモ描写が多いんだ。
ただ、こうやってゲームをプレイすることで僕は一つの結論を得ることに成功した。
数々の美少年を手玉にしてきた僕の言うことだから間違いないだろう。
……この世界で僕が生き抜く方法――そう、その属性は。
――クール系清楚病弱美少年だ。
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