異世界転生した俺が、まさかの豚だった!〜人参を求めて3,000里〜
SeptArc
第1部 第1話 豚として目覚めた朝
目が覚めた瞬間、俺は理解した。
――詰んだ。
視界がやたら低い。というか、地面が近い。近すぎる。
首を動かそうとすると、首が太い。異様に太い。
息を吸えば、鼻腔いっぱいに広がるのは土と藁と、どこか甘ったるい匂い。
「……ぶひ?」
口から出た音で、現実が確定した。
俺は、豚だった。
夢ではない。悪い冗談でもない。
確かな体重。四本の脚。鏡代わりの水桶に映る、丸々とした赤茶色の顔。
異世界転生。
ここまでは、まあ、理解できる。
だが――
「いや、人間じゃないのかよ!!」
叫んだつもりだったが、出たのは再び「ぶひ」という可愛らしい鳴き声だった。
自尊心が一気に地に落ちる音がした。
ここはどう見ても養豚場だった。
木柵、藁、餌箱、そして周囲には同じような豚、豚、豚。
(待て……落ち着け……)
俺は考えた。
異世界転生ものの定石を思い出す。
チート能力。
神の声。
ステータス画面。
来い。今だ。来てくれ。
その瞬間――
《リープ条件確認》
《品種:デュロック》
《目標:極上のニンジンを取得せよ》
視界の端に、淡く光る文字が浮かんだ。
「……ニンジン?」
餌箱を見る。
そこにあるのは、干し草と芋の皮だけだ。
直感的に理解した。
この世界で、ニンジンは特別な意味を持つ。
その時、養豚場の扉が開いた。
「よしよし、今日は出荷前の運動だぞー」
人間だ。
人間が来た。
(まずい)
本能が警鐘を鳴らす。
こいつらは、俺を食う側だ。
だが――
身体が勝手に動いた。
筋肉が、張り詰める。
脚に力が集まる。
視界が、狭くなるほど前方に集中する。
(……あ)
俺は走った。
いや、突進した。
柵が近づく。
普通の豚なら止まる距離だ。
だが、止まらなかった。
――バキィッ!!
木柵が砕け、世界が開けた。
「うわっ!?な、なんだこの豚!!」
悲鳴。怒号。
だが知ったことか。
自由だ。
外だ。
そして、遠くの畑に――
オレンジ色が見えた。
(……あれか)
本能と記憶が重なり、確信する。
あれが、ニンジンだ。
だが次の瞬間。
鋭い衝撃が、首元に走った。
視界が回転する。
地面が迫る。
「仕留めたぞ!」
(……ああ)
俺は理解した。
力任せはダメだ。
暗転。
⸻
《リープ発動》
《次の品種を割り当てます》
⸻
目が覚める。
視界が、また低い。
「……ぶひ」
だが、何かが違う。
身体が、軽い。
毛が、白い。
そして、なぜか――
人の言葉が、さっきより少しだけ、分かる気がした。
(……なるほど)
俺は息を吸い、静かに決意する。
次は、頭を使う。
極上のニンジンを手に入れるまで、
俺は何度でも、豚になる
ーーーーーーーーーー
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