あけおめ、大好き!
文月みつか
第1話 止まらない食欲と考えごと
寒い冬はこたつでみかんに限る。
猫のように背中を丸め、
テレビではお笑いの特番をやっていたが、幸子はいまひとつ笑えない。ずっと別のことに思考をとらわれているためだ。無意識にみかんを手に取ってしまうのも、半分は食欲、半分は考え事をしているせいだった。
「ちょっとあんた、それ何個目? 正月だからっていい加減にしなさい」
出来立てのきな粉餅がのったお皿を持ってきた母が、こたつに入るなり幸子をにらむ。帰省したわけではなく普段から実家暮らしのため、特別歓迎されるわけでもない。むしろこんな歳になっても実家でぬくぬくしている娘は
「ろくな運動もしないくせにそんなに食べて、たった数日間でどこまで太るつもり?」
「お母さんこそ。お餅のカロリー知ってる?」
「私はいいのよ。今さら2、3キロ太ったところで変わらないんだから。でもあんたは、明後日から彼氏と初めての旅行でしょ? せっかくもらい手が見つかったのに、逃げられたらどうすんの」
「うるさいなぁ。
「ああそう。仲のよろしいこと。10年後も同じことが言えるかしらねー」
母はきな粉餅をぽいと口に放りこんだ。
幸子にとってこの1年は激動の年だった。30代も半ばに突入しようかという時期にやっと重い腰を上げて婚活をし、3度目の婚活パーティーで今の彼氏の幸太とマッチングした。初めはあまりピンと来ない相手だったが、付き合ってみると案外馬が合い、とんとん拍子に関係が進んで両家での挨拶も済ませた。おそらくこのまま結婚することになるだろう。幸太と出会うまでは同じような毎日の繰り返しでおかしくなりそうだったのに、ここまで変わるなんて。順調すぎて怖いくらいだ。
「よくもまあしょっちゅう会ってるなあと思っていたけれど、さすがに今日と明日は幸太くんも家族で団らんの時間なのねぇ」
「ううん、違うよ」
右手につまんだみかんから、ぶしゅっと汁がとんだ。それこそ、この数日間幸子の頭の片隅にずっと居座っている件だった。
「友達と貸別荘に泊まるんだってさ」
「なるほどぉ。最近あんたとばかり会ってるから、付き合い悪いって言われてるのかもしれないわね」
そうだろうか? ほとんど毎週のように会っていると聞いているが。
「……お腹いっぱいになった。あとはどうぞ」
「あら、やっとこたつから出ることにしたの。すごい進歩だわ」
娘と替わってこたつと一体化した母を居間に残し、幸子は自室へと戻った。
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