メモ帳短編集

TITONEHO

IFクロバルトくんの作り方〜宇宙人を添えて〜

 ある星の綺麗な夜。本来の歴史であれば、来るはずのない流れ星が流れて来ました。

 くりとる くりとる ひゅるるる

 いあいあ はすたぁ ひゅるるる

 不時着しちゃうぞ ひゅるるる


 なんともまぁ物騒な音を出して、その星は一人の少年の前に不時着してしまいました。


「oh⋯⋯不時着デース。久しぶりの星間旅行は慣れませんネー」

「⋯⋯何だお前」


 少年は不時着した声の主をジロリと見つめます。

 声の主は、青い髪に和装のような服と黒い鎧とマントを着た、奇妙な格好の騎士でした。


「あはぁ! 第一星人発見デース! コニチハ。僕は【検閲済み】【検閲済み】の【この惑星では聞き取れない音】デース!」

「なんて?」


 青年の言葉の多くは、少年には聞き取れませんでした。青年もどうやらそれを理解したようです。


「星間チャンネルが合いませんでしたネー。今調整したので、これでどうデス? 僕は外星神騎士のナイラルト言います!」

「くりとるりとる⋯⋯ないつ?」


 聞き取れたとはいえ、青年の発した単語は少年が知るものではありませんでした。


「oh⋯⋯またしても、馴染みがない惑星デスカ。いえ、それより君⋯⋯中々奇妙な運命をお持ちデスネ」


 青年は少年をじっと見つめます。黒い髪に、黒い服に赤い瞳の少年。

 おそらく彼は、近い将来歪んだ何かに目覚め、他者の絶望を好む魔王と化する。

 青年、ナイラルトには彼のその運命がひと目で分かりました。故に⋯⋯。


「アレデスネ。君は性欲が足りないカト!」

「せっ!?」

「スケベ度数とも言いますカ。健全な男子たるもの、惑星が違えど3大欲求、大事デス!」

「何いってんだこの男」


 まさに何いってんだ、この男。しかし、ナイラルトは無邪気な笑顔のまま、彼に一冊の本を差し出しました。

 一冊の エロ本を。


「うわぁあああ!? おっっまっっっ! 何急に差し出してんだよ!」

「君を健全な青少年にする聖典デスネ」

「エロ本じゃねーーか!」

「はい。君が別の世界線で、追いかけ回すタイプの子のエロ本を並行世界の作家に描かせて作った一冊デスヨ」

「どういう理屈で何だそれは!?」


 もはや少年のツッコミは追いつきません。そもそも青年の言葉が本当なら、別世界の自分はとんだストーカー野郎と言う事になってしまいます。


「大体な、並行世界や別世界ってなんだよ! 嘘クセェ!」

「oh⋯⋯。疑われるのは悲しいデスネ。それではロンよりショーコの時間にしましょうか!」

「⋯⋯はぁ?」


 少年が呆れた瞬間、眼の前の光景がみるみる変わります。

 暗い夜空は豪華な場内に。爽やかな草原は、激しい戦いで荒れ、傷だらけの大理石の床へ。

 誰も居なかった場所には、黒い鎧を纏った誰かと敵対する子供。少年はその二人が誰か直感で分かりました。


「あの鎧を着てる男は⋯⋯俺?」

「ハイ。そして、敵対してる子は、君の運命とも因縁とも言える子。有り体に言えば、さっきの本の表紙にセクシーなポーズで頬を赤らめていた子デスヨ!」

「眼の前の光景台無し発言じゃねぇか」


 しかし、何故二人が敵対しているのか? 少年にはそれがわからない。この二人は睨み合って居るが、様々な感情が複雑に絡み合って居るようだ。


「知りたいデスカ? 知りますネ? 教えマショウ!」

「まだ何も言ってないが?」

「聞かないデスカ? 残念デスネ? 言いマスガ!」

「⋯⋯アンタ、会話する気無いだろ」


 少年の言葉に頷きつつも、ナイラルトはなんてことは無いようにサラサラと喋り始めた。


「アチラの黒い人は並行世界の君デスネ。人を絶望させること生涯の生き甲斐にした姿デスヨ。向かい側の子はその被害者デス。あの子は並行世界の君に、何もかも奪われてマス」

「並行世界の俺が⋯⋯なんでまた」

「退屈だったカラ」


 ナイラルトの口から出された言葉を聞き、少年は唖然とする。


「君は18歳で肉体年齢が止まり、擬似的不老不死にナル。基本的に何をどうされても死なない体質にナル」

「なんだよ⋯⋯それ。それで退屈に? だからって人に害を成す理由にはならねぇだろ!」

「フム。では別の実例を見せヨウ!」


 ナイラルトが指を鳴らすと、一つの光景が浮かび上がる。金色の髪を持つ魔王が、同じく金色の髪を持つ少年に掴みかかり、何かを叫んでいる。


「もう待っただろ! 何千年も、ずっとずっと、永劫の時間お前を待ち続けたんだ! だからもう二度と、僕から離れ無いように⋯⋯その身もその心を破壊してでも!」

「落ち着け! 【検閲済み】! 俺がここで終わったら、未来のお前はどうなる!? 俺はどちらのお前も孤独にしたくないんだ!」


 端から見れば痴話喧嘩の様だが、ナイラルトは顔色一つ変えずに腕を組んでため息をこぼす。


「確かに孤独感は我々にも効く猛毒デス。が、彼の場合はより深イ。あの少年との別離を何度も経験しているようデスネ」

「だからって、破壊するとか言ってるぞアイツ。そんな事したら元も子もねぇだろうに」

「アー、彼はもう狂ってますカラ! 冷静な判断はあの地点で出来ないんデスヨ。冷酷な判断なら出来ますがネ?」

「最悪だな」


 とはいえ、何故このような光景を見せているのか。少年には理解できなかった。

 身も蓋も無い話をすれば他人事である。なんなら、自分はさっさと帰って寝るべきだ。祖父との修行の日々がまた待っているのだから。


「あぁ、そういえば。君のシショーは今日から君のオジー様ではなくて僕になりマース!」

「⋯⋯⋯⋯はぁ?」

「僕デスネー。貴方のオジー様が『孫の修行も楽じゃないわい。一週間ぐらい温泉旅行に行きたいのう』という、ヒジョーにささやかな願いを聞いてやってきた流れ星でもあるんデスネ」

「何願ってんだあのジジイ!」


 そもそもそれが本当なのかわからない。だって、眼の前の男はナイラルトは。2Mを超えたこの笑顔が仮面のように張り付いた騎士は。

 明らかに、ぬるりと。速やかに、違和感を産まないように、非日常から日常に侵略してきたような。侵蝕しているような。


「マァマァ。ダイジョーブ! 君を強くデキマスヨ! せっかく降りた星の縁デスヨ! 大事にしないとこの星侵略シマス」

「うわ、本性表しやがった!」

「本性じゃないデス。本能的交渉デス。イエス、ハイ、OK、承認、了解、承りました。ホラ、沢山答え用意してマース!」

「それって全部OKじゃねぇか!?」

「あはぁ! OK言いましたカ! 言いましたネ! では、明るい未来に向かって修行デース!」


 ナイラルトは少年の首根っこを掴み、いつの間にか用意していたであろう黒い空間に彼を放り投げました。

 無事、彼が入って行ったのを確認し、また自らも意気揚々とその空間へ入るのでした。


「ちなみにこの空間だと、外の時間の一週間は十年換算になりマース!」

「聞いてねぇぞこの野郎!」


 そして一週間と空間を出た数年後とアリウムに出会うまでの長い年月が経過。

 少年もとい、クロバルトは並行世界の彼に比べて、幾分かまともな常識人になり⋯⋯少々コズミックな修行のせいもあってか。並行世界より数回り最強な力と精神力と健全性を得た⋯⋯のだが。


「はぁ、アリウム嬢の尻揉みてぇな。いや、膝枕でもいいな。如何せんシスター服が安い生地だから薄いのが悪い。もうあの教会専属騎士になってしまえばゴニョゴニョ」


 相当にスケベになってしまったのであった!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

メモ帳短編集 TITONEHO @TITONEHO

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る