刺客

刺客の単体戦闘能力は低い......が、この状況ではそうも行かない。


速度特化に加え、暗闇でも正確に周りを把握する何かしらの能力を有しているみたいだ。


この状況下ではBランクぐらいにはなってそうだ。




クラスのみんなは暗闇での戦闘に慣れていないみたいで、ドギマギしている。


そのため、みんなを庇いながら戦っている。


呀狼戦、再びだ。




しかも、今回は完全に役立たずだ。


逃がしてやれればいいのだが、あいにくそうも行かない。




この感じ、勇者に使っている人数がかなり多い。


僕が感じた人数はだいたい6人ほど。


そして、勇者に使っている人数は5人くらい。




完全に勇者狙いだ。




それに、こっちがかなり分が悪い。


なんせ、30人以上を庇いながら戦っているのだから。




――仕方がない。かなり深手を負ってしまうかもだがあ・の・方・法・を使おう――






――計画は順調に進んでいた。


光源を落とし、混乱を招く。




『勇者は実戦経験が少ない』と聞いていたので、条件さえ整えば殺すくらいのことは容易く行えると。そう思っていた......




――何なんだよあのバケモン。


俺等とは違って暗闇で何も感・じ・な・い・はずなのに。


なぜ、5人がかりで倒せない。




頭は騎士団長の相手で精一杯。


コイツラを倒してさっさと撤退。余力があれば騎士団長も倒す手筈だったのに。




こいつのせいですべてが狂った。


誰だこいつは。勇者の顔はすべて暗記した。


だがその中にこいつはいなかった。




それに、異常なくらいの身体能力。


なぜこの状況で34人もの人を守りながら戦える。




だが、あいつも少しずつだが動きが鈍くなっている。


おそらくだが集中力が切れてきているのだろう。




暗闇で五人分の殺気を捌き続けている。


そりゃ、限界も来るはずだ。




まあ、こちらとしてはこのまま攻め続けたら終わりなので案外楽な仕事だったな。




そんなことを思ったのが悪かったのか、


急に悪寒が走り、やつから遠ざかる。




その刹那、やつの姿がぽうっと浮かんだと思ったら。


他の四名が武器ごと切られていた。




「本当の化物じゃねえか......」




他のやつは死んでは......いないようだな。


深手を負っているが生きてはいるようだ。




だが、動けるような傷ではなく。今ここで動けるのは俺一人。




それでも俺は、刃を構えた。


逃げ場はない。




刺客は、絶望的な相手に刃を向ける――






――うん、上手くいって良かった。


一か八かで鎌を創造したが、みんなを守りながらできるかは完全運任せだった。




鎌の創造って結構集中しないと出せないので、戦いながらはかなり大変なのだ。


もし行った場合はかなり動きが鈍くなってしまう。


これが、唯一の弱点かな。




さて、残る刺客は後一人だ。


思わぬ効果で、鎌自体が光っているので先程よりも戦いやすいだろう。




そう思っていたら、相手方から突っ込んできた。


だが、奇跡が起きるわけもなく。


その男は武器を切られ、柄の部分で強く殴打された。




そのまま気絶してしまったので、他のやつの手当と拘束を任せた。


他にももう一人いると思っていたからだ。




それを探すと案外近くにいた。


騎士団長が倒してしまっていたようだ――




――「さて、しかく...しきゃきゅ......しきゃく!の皆さんは何が目的でこのようなことを?」




うん。めっちゃ噛んだ。なぜこうもシリアスな展開のときに噛む。


TPOを考えろ僕の舌。




後ろでも、「今噛んだよね」と話し声が聞こえる。


みんなには賄賂で忘れてもらおう......




そんなことは一旦置いといて、まずは刺客の言い分を聞かないと。


彼らが言うには『この街は腐敗している。だから腐った中枢を倒そうとしたんだ』だそうだ。




たしかに、ここの大臣の数名は腐りかけてると思う。


でも、街が腐敗してるってどういうことだろう?


みんな優しかったけどな......




僕からしたら、正直よくわからなかった。


ひきゃく......刺客のかたもそれ以上は何も言ってくれなかったし......




まあ、犯罪者の戯言だ。そこまで重要に考える必要はないだろう。


でも、なんか妙に引っかかる。




そうした漠然とした不安を抱きつつ、今日は自室へと帰っていった。






やっぱ自分の部屋ってだけで落ち着くなー。


でも心配事が一つ。服が汚れていないかどうかだ。




これは借り物なので汚していたら面目が立たない。


そのため、前や背中を確認したい。




――見た感じ、汚れている場所はなさそう?


これなら、ちょっと洗うだけで返せるので良かった。




でも、さっき背中を確認した際。髪の毛が見えた。


今更ではあるが、僕の髪って長いくせにサラサラ過ぎない?


寝起きも全然絡まってないし。




前世でも。ロン毛......ってほどではないけど目元が隠れそうなほどには長かった。


その時でも、かなり絡まっていた記憶があるので素直に関心した。




この髪をほうっておくのはもったいない気がして、


過去に学んだ髪型を真似ていく。


昔にCGを作るときにいろんな髪型を学んだが、ここで放出するとは......


人生は何が起こるかわからないな。




でも、知ってはいたができるかどうかはわからなかってけど、


案外簡単にできた。


最初はツインテールから始まって、ポニーテール、ハーフアップ、一本の三つ編み......




て、何してんだ。


ふと冷静になり、手を止める。




危なかった。このままだったらみんなが言っていた“イリム女子化計画”が現実になってしまうところだった。


でも、ポニテは動きやすかったから、戦闘時には結んでいいかも。




それにしても、あの刺客――あ、一発で言えた――が言っていた“街の腐敗”てなんだろう。


ほんと、僕からしたらそんな腐ったような気配は微塵も感じなかった。




ほんと何なんだろう?


そう思いながらも時間を過ぎていき、すでに日が落ちている。




――考えすぎも良くないな。


そう考え、イリムは布団に潜る。


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