第2話「神の遺物と覚醒」
三日三晩俺は歩き続けた。
永久凍土の荒野は過酷だった。吹雪が視界を全て塞ぎ、地面の雪と氷が足場を不安定にさせる。食べ物はもちろん何一つ食べていない。飲み物はなんとか
氷を溶かして飲んでいたが、それさえも俺の体力を
容赦なく奪っていく。
そしてーーもちろん魔物もたくさんいる。
初日の夜、真っ暗な暗闇の中、黒い影が動いた。
アイスコボルトの群れ。
小型だが、すばしっこくて凶暴な魔物だ。
僕はアイスコボルトが気づくより先に、
岩陰に隠れて、息を殺す。
一匹、二匹.....五匹。
五匹が自分の真横を通り過ぎる。
心臓が跳ねる。
レベル12の俺じゃ一体にも絶対に勝てない。
見つかったら、終わりだ。
アイスコボルトたちが去った。
俺はその場に座り込んだ。
震えが止まらない。
恐怖によるものなのか、それとも寒さによるものなのか。
いや、その両方だ。
二日目。
さらに危険な魔物に出会した。
ーーアイスベアだ。
全身が雪のように真っ白で、高さが約5メートルも
ある40レベルの魔物。
俺は走った。
俺は全力で走った。
岩場に逃げ込み、アイスベアの大きい体が
入れない隙間に体を押し込んだ。
熊は諦めずに岩を何度もかりかりしてくる。
はたして何時間経ったのかはわからない。
やがて諦めたのか、熊は去った。
俺はその場で気を失った。
三日目。
もう体が限界で、あちこちが痛い。
足が動かない。視界がぼやける。
ここで終わるのかーー
そう思った時、遠くに何かが見える。
建造物。人工物だ。
「あれは?」
最後の力を振り絞って、俺は歩いた。
雪に何度倒れても、俺は何度でも立ち上がる。
そしてーーついに辿り着いた。
巨大な遺跡。崩れかけた城壁。
半ば雪に埋もれかけた城門。
城門の目の前にある朽ちた岩に、
文字が刻まれている。
「ALDIA」
「.....ここが」
声が震えた。
「アルディア王国」
祖父が語っていた。祖父が書物に書き残していた。
ここが、300年前に滅んだ人間の国。
そしてーー俺の祖国。
「やっと着いた」
俺は力尽き、城門の前で倒れた。
雪がどんどん俺の顔に降り積もる。冷たい。
もう動けない。
意識が遠のく。このまま俺は死ぬのか。
ーーでもどうせなら祖国で.....
『ーーよく来た。我が末裔よ』
その時、どこからかともなく声が聞こえた。
誰かが話しかけている声ではない。
脳裏に直接話しかけられるような、
そんな感じだった。
「.....誰だ?」
『我は、アルディア王国最後の王、
リオネル・アルディアだ』
目の前に光が現れた。城門の向こうには、青色の
巨大な魔法陣が浮かび上がる。
その周りの雪がどんどん溶けていく。
『そして今は。この地に眠る遺物。
私は三百年、待ち続けた。』
「三百年.....」
『そうだ。我が血を引くものが訪れるのを
人間が再び立ち上がる日を』
魔法陣がゆっくりと回転する。
その中心に、人の形をした光が浮かび上がった。
王冠を被り。長い剣を持つ。
ーー王の姿。
「リオネル王」
『お前の名は』
「ゼファー.....アルディア.....です」
『ゼファーか。よき名だ』
光が優しく微笑む。
『お前に問う。お前は復讐を望むか。
復讐をする覚悟はあるか』
「え.....?」
『この世界に。五大種族に復讐をする覚悟は
あるか
今まで散々奴隷として扱ってきたものたちに
ーー復讐を望むか』
俺の脳裏に、今までの奴隷として扱われてきた
記憶の全てが鮮明に蘇った。
ヴァルトアに殴られた日。「人間の分際で」と
言われ、嘲笑われた日。食事を地面に投げ捨てられ、犬のように食べさせられた日。
仲間だと思っていた同じ奴隷に裏切られたあの日。
人間だというだけで存在を否定されたその瞬間。
「望む.....」
俺は雪を必死に握りしめる。
「俺をあんな目にしてきたやつらなんて
殺してやる」
「全員、全てだ。俺を奴隷にしたやつ。嘲笑った
やつ、見下したやつ
ーー全員、ぶっ殺してやる。」
『よい、その憎悪。その憎悪こそがお前を
最強の王にする。』
魔法陣が激しく動いた。
『ならば、そなたに力を授けよう。
我が王国が残した最後の秘宝をーー
【無限成長】のスキルを』
俺の体が浮かび上がり、雪から離れて宙に浮く。
『通常、この世界の生物は年齢でしかレベルが
上がらない。二十歳で成長が止まり、歳と共に
衰えていく』
全身が暑い。体全体に何かが流れ込み、力がみなぎってくる。
『だか、今のお前は違う。殺せ。戦え。
モンスターを。敵を倒すだけお前は強くなれる。
限界などはない』
視界の端に文字が浮かび上がる。
【スキル獲得:無限成長】
『これは禁忌の技術。三百年前、アルディア王国の
研究者が極秘に開発していた人間にしか使えない
究極のスキル』
「なんで人間だけ.....?」
『元々多種族は成長限界に縛られていた。
だが人間は、本来無限の可能性を持つ
種族だった。だから他の種族たちは
人間を恐れた』
なるほど、だから滅ぼされた。人間の可能性を
恐れて。
『そして、もう一つ』
光がさらなる輝きを放つ。
『【支配の契約】
ーーお前が心から認めた相手は絶対的な忠誠を
誓う。裏切りはない。疑念もない。
お前が王として君臨して、復讐をするための
力だ。』
【スキル習得:支配の契約】
『行け、ゼファー・アルディア。
我が跡を継ぐものよ。
再び人間の国家を築き、この世界に復讐をせよ。
我が夢、そなたに頼んだぞ』
光が爆発的に広がりーーそして消える。
俺は地面に降りたった。
雪が冷たくない。体が痛くない。力が体の底から
湧き出てくる。
すると、視界の端にステータス画面が現れてくる。
【ステータス】
名前 ゼファ・アルディア
種族 人間
年齢 17歳
スキル 無限成長
支配の契約
レベル 12→15
スキル詳細:
・【無限成長】(固有スキル)
戦闘により、無限にレベルアップ可能
・【支配の契約】(固有スキル)
自身と相手のお互いが心から認め合うと、
相手に絶対的な忠誠を誓わせることができる。
忠誠を誓わせている場合、相手が自身を
裏切ることができなくなる。
・【剣術:レベル2】
・【体力強化:レベル1】
冒険者登録:なし
(奴隷のため、冒険者未登録)
「これが.....俺の力」
拳を握ると、心の奥底から圧倒的な力を感じる。
すると、遺跡の奥から魔物の唸り声が聞こえてくる。
以前なら逃げていた。隠れて、息を殺して、
ただ怯えて何もできなかった。
だがーー
「こい!」
俺は笑った。冷たく、暗い笑みだった。
「殺してやる。この世界の全てをぶっ壊してやる」
俺は遺跡の方へ一歩ずつ足を運んでいく。
復讐の第一歩。奴隷から王への最初の一歩が
ここから始まる。
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