ロボットの時代に、僕は人に助けられた。
遊び人
完
遥か遠い春を思う。
今年初の雪が降ったそれも大吹雪だ
街は突然の出来事に大混乱に陥り
車通りもすっかり少なくなった。
ボロボロになった厚着
その上に拾った上着を羽織る
明夫の
溜息が白い息になり
そっとこの街の景色に同化する
安静できる場所を探し
行く当てもなく彷徨い続ける
飲食店で映る壁掛けテレビを
明夫は外の窓から眺める
これは日課であり、癖なのだ
今日は天気もあってか
店をきり盛りする夫婦はテレビを一点に見つめる
「近年の経済状況もあってか、ホームレスが多発しておりNPO法人を筆頭に全国各地の公園で炊き出しが開催されています」
ニュースキャスターが
慣れた口調で原稿を読み上げ
炊き出しの映像に変わる
明夫は背伸びをし
内容を詳細に確認しようとするが
そこは生憎窓である
夫婦はテレビから振り返り不審な目で
窓を見た。
明夫は咄嗟に
目線を下げ道の方へ
厚着から期限も思い出せないボロボロのレシートが落ち、
たくさんのポケットからは小銭は1個も落ちてこなかった。
天気のせいもあり、ダンボール製の寝床は
今日の内に一瞬で崩れ
明夫は仕方なく
住み着いていた公園から離れることになった。
記憶を頼りに明夫は歩く
シャッター街が連なる商店街の横では
今にも商店街を食ってしまいそうな
高層ビルが何軒も周りには建っていた
「これもAIか…」
ビルの大型ビジョンに映るのは
テレビのアナウンサーのように
流暢に喋る女性の姿であった
「社長、ロボットは導入するのはいいのですが
オフィスにいる社員は僕達はどうなるんですか?」
社長室に単独で飛び込んだ明夫。
「今は人口不足じゃ…その上で業績を伸ばし毎年給料を上げるのはしんどい
仕方ないだから・・・」
一カ月後にオフィスで伝えられたのは
退職勧奨であった
社長や上層部の泣きっ面を見せられ
給料数年分と退職金を条件に
明夫はそう伝えられ
周りを見回した
昨日まで愚痴を言い合っていた
同僚達は
今日初めて会ったような人のように感じ
部屋の冷房が狭い隙間に入り
いつもよりずっと冷たく感じ
長年働いたオフィスを去ることになった。
「今度はAIか・・・」
懐かしのビルを眺め
空から降る雪に視界を覆われ
諦めがついたのか
顔についた名残惜しさを払い
吹雪を追い風に乗せて、足取り早に
前へ一歩一歩強く進んだ。
明夫は
再び歩む、クリスマスシーズンを前に
街は一層盛り上がりを見せるはずだったが
予想外のこの天気に
もぬけの殻のような静けさだ
そこからはCMがラジオのようにエンドレスされ
そうした中、明夫はおもちゃ屋の前で止まった
外からはガラス張り沿いに
おもちゃが種類豊富に飾られている
「お父ちゃん、これ買って、買ってってば」
「ダメだ、クリスマスまで待ちなさい」
「嫌だ、今買って、買ったらなんでもするから」
明夫は涙を滲ませ
カウンターの前で
ブリキで作られたロボットを両手に抱え父へ懇願した。
「買わないと決めたら買わない
分かったか、クリスマスまでもう少しじゃないか、だからな。」
そう言い、父は明夫から半ば強引に
おもちゃを剥ぎ取り
商品の棚に置き、店を1人出た。
「クリスマスまで、あれ置いとくから
楽しみに待っててね、待ってるから心配しないでね」
店長はカウンター越しに顔を見せ
明夫に笑顔で伝えた。
「ありがとう、信じるからね」
明夫は店を出て
外で待っていた父は
ガラス越しから店長に礼をし
明夫と手をつないだ。
明夫は咄嗟に振り返った後ろには誰も居なかった
残っているのは悴んで赤くなった手だけだ。
雪が弱まり
太陽が姿を現した。
車通りも増え、人の声が徐々に増えていき
明夫は何かに導かれるように
声が大きく聞こえる方へ歩いた。
明夫が見たのは長蛇の列だった。
公園にこの時期
こんなに人でごった返すのはありえない
ニュースで見たことを思い出し、明夫は
両手で腹をさすり、急いだ。
そこには
「炊き出し」
と書かれた、蛍光色の旗である。
長蛇の列の奥には湯気が立ち上り
匂いが公園の入り口からでも伝わる。
明夫は、いくつものポケットに手を突っ込み
慌ただしくしていると、
「お金はいらないですよ、、だから気にしないで」
「あっ、ありがとうございます……」
なんだか懐かしい気分がした。
列の周りには紙皿を持ち、笑顔で談笑し
汁物をほうばる姿が目に入った。
いよいよ、明夫の出番になり
大きな汁缶から
ボランティアの方々が熱々の豚汁を紙皿にすくう。
「はい、どうぞ、頑張りましょうね」
「ありがとうございます・・・」
その言葉がなんだか嬉しかったのか、
明夫は下を向いたまま頬は上がっていた。
明夫はまだ誰も座っていない
ベンチを探しそこで一人座る
熱々の豚汁に箸をいれると
そこからは沢山の野菜がそして豚肉が入っており
明夫は口に入れ、満足そうに頷く。
「おい、あんた一人か?」
「はい、一人ですけど」
「そこ、座っていいか?」
明夫は大きく頷き、男は明夫の隣に座った。
「最近は、不景気でこんなに人がごった返している」
「そうですね・・・」
「これも、もとは全部ロボットのせいだな
おかげでこの様だ。」
「ロボットか・・・」
ロボットによって仕事を辞めさせられた…
ブリキのロボットが欲しくてクリスマスまで毎日楽しみだった。
気づけば明夫には小さな涙が
雪のように溢れていた。
明夫は目の前に植えられた
一本の木その奥にある大通り沿いの並木たちの
春の姿を思い
明夫は遠い空を眺めた。
ロボットの時代に、僕は人に助けられた。 遊び人 @asobibinin
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