第4話「株式会社ブレイブ・ソリューション」
会社を作ると言っても、そう簡単なことではない。
まずは拠点が必要だし、法人登記もしなければならない。そして何より、ダンジョン関連業務を行うためのライセンスが必要だ。
レオンの仮住まいとして、舞が紹介したのは、都内某所にある築40年の木造アパート「ひだまり荘」の一室だった。家賃3万円。風呂なし、トイレ共同。
「……ここが、俺たちの城か」
レオンは六畳一間の畳を見つめ、腕組みをした。
「文句言わないでください。今のレオンさんの所持金、ゼロなんですから。私の貯金を切り崩して敷金礼金払ったんですからね!」
舞はジャージ姿で掃除機をかけながら言った。彼女は既に前の会社に辞表を叩きつけてきた。退路は断たれている。
「いや、悪くない。壁が薄くて隣のテレビの音が聞こえるのも、平和の象徴って感じでいいな」
レオンはポジティブだった。彼は魔王城の冷たい石床で寝ることに比べれば、畳の上で眠れるだけで天国だと言い放った。
数日後、法務局での手続きを終え、晴れて二人は会社組織となった。
社名は「株式会社ブレイブ・ソリューション」。
勇気ある解決策、という意味だが、実態は「なんでも屋」に近い。
「さて、次は探索者ライセンスの取得ですね」
舞がパソコンを開きながら言った。
「ダンジョンに入るには、国が認めたギルドで試験を受け、ランク認定を受ける必要があります。Fランクから始まり、実績を積んでSランクを目指すのが一般的です」
「面倒だな。いきなり一番難しいところに行っちゃダメなのか?」
「ダメです。不法侵入で逮捕されます。まずはFランクのライセンスを取り、地道に実績を上げて……」
「待て」
レオンが画面を指差した。
「この『特定危険区域・清掃業務委託』ってのはなんだ?」
それは、ギルドの掲示板ではなく、自治体のホームページの隅にある募集要項だった。
「えっ? これは……いわゆる『ゴミダンジョン』の掃除ですよ。資源が枯渇して、弱いけど数の多い害獣モンスターが繁殖した廃ダンジョンです。臭いし、汚いし、実入りが少ないから、誰もやりたがらないんです。行政が困って、入札にかけてる案件ですね」
「誰もやりたがらない、か。つまり、ライセンスのランク制限がない?」
「まあ、そうですけど……。こんなの受けても、魔石はクズ石ばかりだし、赤字になりますよ?」
「いいや、これだ」
レオンはニヤリと笑った。
「誰も見向きもしない場所にこそ、宝の山がある。これを受けよう」
舞は溜息をついたが、社長の決定には逆らえない。
こうして、ブレイブ・ソリューションの初仕事は、東京都練馬区にある放棄された地下水道ダンジョン、通称「ドブネズミの巣窟」の清掃業務に決まった。
入札はあっさり通った。競合がいなかったからだ。
報酬は雀の涙ほど。だが、ここには「全権委任」の条項があった。ダンジョン内で得たものは、全て業者の所有物となる。
「よし、出撃だ。舞、記録用のカメラを忘れるなよ」
「本当に行くんですか……私、臭いの苦手なんですけど……」
二人は軽トラック(レンタル)に乗り込み、現場へと向かった。
レオンの服装は、通販で買った安物の作業着に、背中には「ブレイブ・ソリューション」の手書き文字。腰には例の偽装された聖剣。
見た目は完全に、怪しい清掃業者だった。
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