空のカナタ

数多未

第1話 日常?

―ジリリリリリリ―

騒々しいベルが鳴り響く。頭が起きろと訴えてるけど、布団が離してくれない…もういいや眠いから寝よう…。

―コンコン―

「あの、チコさん…?起きてます?二度寝してそうなので起こしに来ました…ハルカです…」

…やっぱ起きないとまずいな。

「ごめん今から準備する!」

「あはは…部屋の前で待ってますね」


♢


「ごめんおまたせ!」

「それじゃあ行きましょうか…あ、寝癖ついてますよ」

「わ、ほんとだ」

「…よし、これで少しはマシになりましたかね…?」

「ありがとう!」

「ふふ、お役に立てて何よりです!」

このニコニコしてて可愛くて優しい天使は壱巳崎遥香(ヒトミザキハルカ)。私の友達だ。友達になった日から毎朝律儀に起こしに来てくれてる。ほんといい子。

「今日の朝ごはん何にしよっかな…あ、遥香はどうするの?」

「私はベーコンエッグにします」

「じゃあ私もそうしよっ!」

―ピンポンパンポーン―

『職員のみなさん、おはようございます。今日も1日頑張りましょう。個体名A-1からN-43、朝食の準備ができています』

アナウンスが広い廊下に響き渡る。私達はいつからかこの実験所に閉じ込められ、実験体として生活を徹底的に管理されている。私はここではA-1として、実験、研究、手術の繰り返しの日々…正直うんざりだけど、友達の笑顔を見ればそんな気持ちも吹っ飛ぶ。

「あ、A-1様。朝食をとられますか?個体名G-17様も、御一緒に食べられますか?」

「うん。ハ…じゃなかった、G-17はベーコンエッグだっけ?」

「はい…A-1様はどうしますか?」

「ん〜、私もベーコンエッグで!」

「かしこまりました。では御二方、こちらへ」

この実験所ではランクが絶対だ。一番上が神格クラス、その次が所長、上位クラス、職員、中級、下級、研究段階や失敗作と続く。なぜ所長や職員より実験体が上の立場なのかというと、私達が本気で結託して人間を攻撃すれば、脱走どころかこの実験所がある国を滅ぼすことぐらい造作もないからだ。だから結託できないようにクラス分け(神格クラス同士は話せない)と管理・躾を徹底している。対策の一環として、機嫌を損ねないというものがある。だから職員は上位クラス以上の実験体には敬語・様付け、神格クラス以上の実験体には呼ぶ時頭に個体名を付けないことが義務付けられている。

―ピーンポーンパーンポーン―

『部屋替えが完了しました。上位クラス以上は至急自室に戻ってください』

部屋替えは反乱対策の一つで、二ヶ月に一度部屋割りを変える。仲良くなって結託でもされたら困るんだろうな…。できれば遥香と同じ部屋になりたいんだけど、神格クラスは上位クラス以上とは相部屋になれないルールだからなぁ…トホホ。

「あ、もうそんな時期ですか…早いですねぇ」

「…そう?私は二年ぐらい経った気がするよ」

「そんなにここでの暮らしが退屈なんですか?」

「遥香がいるから退屈ではないけど…大っ嫌いだもん、人間なんて」

「…またそんなこと言って、誰かに聞かれたらどうするんですか。ほら、お部屋に戻りましょう」

「…ん」

またお話しましょうね!と手を振りながら人混みに消えていく遥香は、幸せそうに見える。きっと、見えるだけなんだろうけど。


♢


部屋に戻ると、一人の青年が待っていた。

「あんたが私の新しいバディ?」

「そうだ」

「そ。基本私は部屋にいないから、好きにしなさいな。神格クラスとか気にしなくていいからね。敬語もいらない。もちろん、人の前ではちゃんとしてほしいけど」

「…わかった」

素直そうな子で良かった。前癖が強いのに当たって大変だったからな…あの子、今どうしてるかな。あの感じだと処分されてるだろうけど。

「なぁ」

「ん?」

ずっと口を閉ざしていた青年が、深刻な表情で話しかけてきた。

「一緒に抜け出さないか、この施設」

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