第99話



春日美村の件も想い、大我は目を細めた。

道源がこの間の暴行の証拠をおさえている為、もう村の追手が白希に手を出すことはないだろう。

これからは神経質に逃げ隠れする必要はなくなる。


「そーそー、俺は文樹と揉めたからな~。今はあいつの機嫌とるので頭いっぱいなんだ」

「そうなんですか? もしかして、それも俺のせい……」

「いやいや、そうじゃなくて……俺が悪い。村や力のことも、中途半端に教えちまってたから」


大我の言葉を聞き、白希は思料する。文樹が最後まで警察に頼らず、自分や宗一の意思を尊重してくれたのは、大我の影響が大きかったようだ。

するとやっぱり、この二人は……。


「とにかく怪我治るまでのんびりしてろよ。じゃあな」

「あ……大我さん。ありがとうございます!」


大我は最後に白希の頭に手を乗せ、店内へ戻っていった。



ほんの少しの間に、たくさんのことが起きた。

環境も関係も、目まぐるしい速さで変わっていく。その変化についていけるか不安になるけど、無理に急ぐ必要はないのかもしれない。


歩みを遅めるからこそ気付けることも、きっとあるから。


数ヶ月ぶりに飲んだブラックは、以前ほど苦く感じなかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る